「確定申告の無料相談会」に相談員として参加してきました
今、旬の話題であるので、確定申告の注意点というテーマでコラムを書きます。
毎年、この時期、2月から3月中旬になると確定申告の話題で持ち切りです。
この時期の確定申告というのは、一般的には所得税の確定申告を指し、個人が申告をするものです。
そして、この時期には税務署と税理士が協力して各地で確定申告の無料相談会というものをやっています。
ついこの間、私も新宿区内の地域センターで無料相談会に相談を受ける側の相談員として参加しました。
無料相談会場には個人事業主の方、年金受給者及びサラリーマンの方が特に多くいらっしゃいました。
確定申告の必要性の有無について
それぞれの場合で確定申告の必要性の有無について、簡単に場合分けしてみますと以下のようになります。
個人事業主
・ 個人で事業を経営し、毎年確定申告をしている。
・ 土地や不動産を持っていて賃貸料収入がある。
年金受給者
・ 年金の収入が400万円以下だが、年金の他に20万円超の所得がある。例えば、パート収入が年間85万円以上ある場合など。
・ 年金の受給先が複数ある。例えば、厚生年金の他に、企業年金をもらっている場合など。
サラリーマン
・ 医療費がたくさんかかったので医療費控除をする。
・ 寄付をしたので、寄付金控除を受ける。
例えば、ふるさと納税を6か所以上の自治体にしたため、ワンストップ納税(ワンストップ納税の場合は年末調整で済む。)で対応しきれない場合など。
・ 保険金の収入があり、一時所得や雑所得の申告の必要がある。
・ 先日の無料相談会場にいらっしゃった相談者の多くが上記の場合に該当する方々でした。
相談者が注意すべき12のポイント
また、相談を受ける側の相談員として、相談をする側が誤解しがち、注意すべきと思われる点を、以下に列挙します。
1. 年金振込通知書を控除証明書と勘違いしない
国民年金は控除証明書を申告書に添付する必要があり、証明書はハガキで発送されるのだが、年金振込通知書を控除証明書と勘違いしてしまう。
2. 納入通知書では支払った金額を確認できない
国民健康保険は納付額の証明書や支払時の領収書や口座振替の明細で支払った金額を確認するのだが、納入通知書が支払った金額を確認できると勘違いしてしまう。
納入通知書は支払う金額をお知らせするものなので、実際に支払った金額は領収書や口座振替の明細がないと確認ができないため。
3. 各種控除がある際は税金の還付を受けられる場合がある
退職所得で退職金をもらったケースで源泉徴収が正確にされている場合は原則、申告不要であるが、医療費控除や、社会保険料控除、生命保険料控除など、各種控除がある際は、税金の還付を受けられる場合がある。
実際、私が相談を受けた方は、休職中で給与所得が0であるが、社会保険料控除や生命保険料控除等があり、数万円の税金が還付となる申告になりました。
4. 所得税は申告不要であっても、住民税の申告が必要な場合がある
年金受給者で年金の収入金額が400万円以下で、他の所得が20万円以下のため、確定申告不要の場合に該当するが、所得税は申告不要であっても、住民税の申告が必要な場合がある。
5. 特定口座で株式を管理していても申告した方がよい場合がある
特定口座で株式を管理している場合、原則的には申告不要である。(ただし。譲渡損失の繰り越し、あるいは、譲渡益と過去の譲渡損を相殺する際は、申告が必要となる。)
しかし、特定口座で配当がある場合は、配当のみ総合課税の申告をすることが可能であり、そのようにした方が分離課税を選択し申告不要とするよりも、税額が低くなったり、税金の還付を受けられたりして、税務上有利に働くことがある。
6. 一般口座での配当があった場合
一般口座での配当がある場合も同様である。(おおよその目安は所得が695万円以下なら総合課税を選択し、申告をしたほうが有利。)
ただし、翌期の国民健康保険の金額が増える場合があり、一概に税金の金額のみで損得を判断することができないので注意が必要。(社会保険の場合は特に影響はしないので、税金の金額のみで判断が可能。)
7. 所得0で源泉徴収もなければ医療費がいくらであっても還付はない
医療費控除等の還付の確定申告は、納めている税金が戻るので、もともと所得が0で源泉徴収税額もなければ、そもそも前払いの税金も0なので、医療費がいくらあっても税金の還付はない。
所得税は累進課税であるので、収入が高ければ高いほど、税率は上がり、納める税金も増える。
なので、社会保険料控除、医療費控除や生命保険料控除は生計を一にする家族の中で所得が一番高い人が支払い負担をするほうが、所得控除の効果が大きくなり、節税効果が高くなり、税務上は有利となる。(ただし、生命保険料控除は上限があるので、上限に達したら、それ以上支払い負担したとしても、効果はない。医療費控除の上限は高く200万円であるので、領収書ベースにすると、210万円までの領収書は節税効果がある。)
また、扶養控除などの人的控除も同様に高所得者につけるほうが、節税効果は高い。
8. ひとり親家庭・勤労学生控除などは聞き取り調査が必要となる
寡婦控除(ひとり親家庭の控除)や勤労学生控除(大学や専門学校などの学生が受けられる控除)は適用初年度は相談員が本人に聞き取りをしてみないとわからないことが多いので、もれやすいので注意が必要。
9. 配偶者特別控除の適用の有無は配偶者の収入証明が必要
配偶者控除、配偶者特別控除の適用の有無を正確に判断するには、配偶者の収入証明が必要となる。
10. 一時所得は申告漏れが起こりやすい
毎年の申告が必要とは限らない、満期保険金の一括受け取りによる一時所得などは、納税者本人に申告が必要であるという認識がないことも多く、申告もれが起こりやすいので注意。
11. 訂正申告となる場合
確定申告の期限の前に申告書を期限内に修正する場合は、取り扱いは訂正申告となる。
その際は、訂正申告書を紙面で提出する場合は、申告書の一枚目の上部に赤で訂正申告と記載し、余白欄に訂正前の申告年月日と訂正前の税額を記載する。
12. 電子申告の場合
電子申告の場合は、e-taxのデータ送信直前の画面に登記関係などの情報を入力する箇所があるので、その箇所に、同様の旨を記載した後に、データ送信する。
以上。
最後に
無料相談会場で実際に相談を受けた事例や、気づいた注意点などを列挙してみました。
今後、確定申告をする際には、上記の点を意識していただきながら、申告作業を進めてみて下さい。(執筆者:小坂 亮太)