
「誰が相続人となるのか?」
「前の配偶者との子どもは?」
「認知された子は?」
相続人を確定するには、故人の「出生から死亡までの戸籍」をすべてたどる必要があります。さらに、直系尊属や兄弟姉妹、甥・姪が関係してくるケースでは、戸籍の収集や相続分の調整がより煩雑になります。2024年から始まった「戸籍の広域交付制度」の活用方法や、認知症の相続人がいる場合の対処法も含めて、子どものいない方の相続の基本と注意点を解説します。

亡くなった方に、子どもがいない確認
子供がいない夫婦で、配偶者が亡くなり相続が発生した場合、相続人は誰になるのでしょうか。残された配偶者は、相続人となります。再婚で亡くなられた方との婚姻期間が短くても、あくまで相続が発生した時点での配偶者が相続人となります。言い換えれば、前の配偶者には相続権はありません。ところが、亡くなられた方と、前の配偶者との間に子供がいれば、その子は、相続人となります。
配偶者に、子がいないことを確認するには、市区町村で出生から死亡までの戸籍を取得しなければ確認できません。現在の戸籍謄本だけでは確認できません。そのため、法改正や、転籍による従前戸籍の確認は必要になります。認知した子も相続人となり、故人が認知した子は、現在戸籍を見ただけでは確認できません。
一人でも子がいれば、または子が先に亡くなっていても孫等直系卑属がいれば、やはり相続人となります。
第二順位の相続人は、直系尊属

故人の出生からの戸籍を取得して「子等はいない」ことが確定したら、次に、第二順位に相続人となる直系尊属の確認です。残された配偶者にしてみれば、配偶者の父母の生存は知っていても、父方および、母方の祖父母等の生存まではご存じないことが多いかと思います。これも戸籍で、対象の祖父母が、生きていれば、120歳(おおむね)までの方は生存を戸籍にて確認する必要があるでしょう。
一般に父方の直系尊属は辿りやすいが、母方は結婚前の母の親の戸籍を辿ることになるため、手続きが多岐にわたります。
第二順位の相続人が認知症の場合
遺産分割をする相続人には判断能力が必要になります。せっかく探した相続人が、認知症等で判断能力が不十分な場合、成年後見人が、代理で参加することになりますが、そのための手続きが煩雑なうえ、成年被後見人には原則、法定割合で取得する内容となるため、配偶者は2/3の割合でしか相続できません。
配偶者が全て取得する内容で遺言書を生前に作成している場合でも、直系尊属には遺留分(1/2×1/3=1/6)を請求する権利があるため、「遺言書さえあれば・・・」とはならないのです。
第三順位のきょうだい・おい・めいが相続人の場合
故人の直系尊属がすべてなくなっている場合、第三順位のきょうだいが相続人となります。きょうだいが故人より先に亡くなっている場合、おい・めいまでが相続人となります。故人のきょうだいが多いとその調査も大変なことになります。
筆者も以前、子供のいないお客様で「私のきょうだいは、遺産分割時にもめることはないため、遺言書は不要」といわれたため、遺言書の作成を見送ったことがあります。事実、きょうだいとは、放棄することで話がまとまりました。ところが、先に亡くなったきょうだいに子(めい)がいることが判明し、その相続人(めい)に確認したところ、法定相続分を請求されました。
この場合、もし遺言書を作成していたら、きょうだい・甥・姪には遺留分がないため、請求されることはなかったのです。
広域交付制度が始まりましたが
令和6年3月より、本籍のある市区町村でしか取得できなかった戸籍謄本が、最寄りの一か所の市区町村にて取得ができるようになりました。そのため、子どもや親が相続人の場合、広域交付を活用し最寄りの市区町村一か所にて相続手続きに必要な戸籍集めができるようになりました。
ただし、直系尊属や直系卑属以外の、きょうだいの戸籍証明書等は広域交付(最寄りの市区町村)で取得できないようです。もっとも、配偶者が相続手続きをするために故人の相続人確定のため戸籍を取得すること自体は可能です。本籍のある市区町村に直接出向くか、郵送での請求も可能です。
子供のいない方の相続人の確定(戸籍取得)作業は大変です。司法書士等の専門家に依頼した方が間違いないかと思います。
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