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自宅介護は施設と違い、介護に適した環境になっていない為、ベッドから車いすへの移乗介助、ベッド上でのおむつ交換や着替えなどの時に必要になるベッド上の移動動作などで、腰に負担がかかります。
介護される側と介護する側の体格差が大きかったり老々介護だった場合、介助動作の負担が大きい為、自己流の介助方法をされる方もいます。
自己流の介助方法や負担の大きい介助動作は、介護する側介護される側、両方のケガにつながります。
おむつ交換や車いすなどへの移動介助は、介護を行う上で、必要な介助動作です。
そのような動作で負担がかかる場合は、スライディングシートなどの様々な福祉用具を使用すると、身体への負担が軽くなります。
今回は、負担が軽くなる福祉用具やその福祉用具の活用方法などをお伝えします。
ベッド上の移動をスムーズにする「スライディングシート」
ベッド上でおむつ交換や着替えをおこなうと身体がベッドの下方にずれたり、斜めになってしまうことがあります。
ベッド上で正しい位置に寝ていないと、ギャッチアップ時に息苦しくなったり、痛みが出たり、ベッドとベッド柵の間に腕や足が挟まる事故が起きやすくなります。
体格差のある場合や身体が大きい人の場合、斜めや下方へずれてしまった身体を正しい位置に戻すのは大変で、腰に痛みが出る可能性もあります。
そのような時に利用したいのが、スライディングシートです。
1枚になっているタイプと筒状タイプがあります。
スライディングシートは、つるつるとしたシートでベッドと身体の間に入れて使います。
スライディングシートにより、身体がするすると滑る形で動くので、小さな力で身体の位置を直すことができます。
介護保険の福祉用具貸与でレンタルできます。
【価格例】
トレイージースライドシート 1ヶ月 1割負担の方で134円
1ヶ月あたり、100円台と手軽にレンタルできます。
おむつ交換は1日に何回も行わなければなりません。そのたびに、ずれた体を正しい位置に戻す手間が生じます。
体格差が大きい、腰を痛めているなど、おむつ交換や着替え等の介助動作で、負担が生じている方には、ぜひ使って頂きたい福祉用具です。
介護される側も、自己流で事故につながりやすい介助よりも、スライディングシートを使っての介助の方が安心できます。
体位変換がラクにできる「体位変換器」
寝たきりの人にとって体位変換は、褥瘡(じょくそう)予防に重要なケアになります。
褥瘡(じょくそう)は「床ずれ」とも言われ、体重で圧迫された部分の血行が悪くなり、皮膚が赤くなったり傷ついたりする状態のことです。
身体の向きをかえるだけではなく、シーツや服のしわをのばしたり、体圧を変える為のクッションなどを身体の下に敷いたりなども必要になります。
褥瘡予防のためには2~3時間おきに体位変換を行いますが、一連のケアを家で1人で行うとなると大変です。
腰をかがめての作業ですので、腰痛の原因にもなります。
負担も多い体位変換を楽にする福祉用具として、体位変換器があります。
介護保険の福祉用具貸与で、1割負担の方は、月額100円台で借りられる物があります。
【価格例】
ペンギンサポート 月額152円
身体の下に敷き込み取っ手穴を引くことで簡単に、身体の向きをあおむけから横向きにすることができます。
面ファスナーでベッドサイドレールなどの固定でき、介助者が身体をささえることなく、身体を横向きで保持することができます。
その間に、服やシーツのしわを伸ばしたり、クッションなどの位置調整ができます。
横向きを保持している時に着替えやシーツ交換、おむつ交換なども一人で行うことができます。
お尻の下に敷いて身体を移動させることで、寝ている位置の調整にも使えます。
ペンギンサポートは、身体を自力で動かすことが難しい方のベッド上でのケアをラクにすることができます。
体位変換や着替え、おむつやシーツの交換など、寝たきりの方のベッド上のケアは、毎日欠かすことができません。
そのケアを自宅で、介助者が一手に担うとなると負担が大きいです。
体位変換器を利用することで、その負担を軽減することができます。
自己負担額も安価ですので、介護保険でデイケアやショートステイなど他のサービスを使っていたとしても、導入しやすい一品といえます。
介護者の負担になっていても今はなんとかなっているからと思うのではなく、腰痛や介護負担をさらに感じるようになる前に、体位変換器を使ってみることをおすすめします。
体位変換器にも種類がありますので、気になられた方はケアマネージャーや福祉用具専門相談員に相談してみましょう。
ベッドと車いすの間の移乗をラクにできる「スライディングボート」
立ち上がりや立位保持が1人で行えない方のベッドと車いす間の移乗は、介助で行います。
体格差が大きかったり、自己流で移乗を行っている場合、転倒したり、介助者の身体に負担がかかったりします。
ラクに移乗を行えるようになる福祉用具は、介護保険の福祉用具貸与で、レンタルできるものがあります。
ベッドと車いすをつなぐように渡し、座位でおしりを滑らせて使います。
【価格例】
イージーグライドM 1割負担の方 月額136円
SSからLまでサイズがあります。
スライディングボードを使うと立ち上がりをせず、介助者が抱えることなくもなく、移乗ができます。
おしりを滑らせるだけで、移ることができるので、立ち上がりに不安のある方でも、自力で車いすやベッドに移動できます。
立ち上がり動作の介助で、体格差があると、介護する側、介護される側どちらにも負担が生じますが、イージーグライドなどのスライディングボードを使うと、負担なく移乗ができます。
ベッドから車いすへの移乗が簡単にできたり、自分でできると、食卓に出て食事を家族と食べることができたり、トイレに移動できたり、活動範囲が広がります。
スライディングボードは、安価で、安全に活動範囲を広げることができますので、自宅介護をされている方には、利用を検討して頂ければと思います。
福祉用具で身体・心理・家計の負担軽減
移乗や移動、体位変換などは、介護上で必要不可欠なケアです。
毎日行うケアですので、介護される側介護する側のどちらにも、危険や負担がないのが理想的です。
安全にケアを行うことができれば、身体的な負担軽減だけではなく、安心感から、お互いに心理的な余裕が生まれます。
介護度が高い方の自宅介護は、身体的、心理的に余裕がない状態になりがちです。
今回ご紹介した、スライディングシートや体位変換器、スライディングボードなど、安価で簡単にケアをラクにしてくれる便利な福祉用具はまだまだあります。
毎日のケアを楽に行うことは、介護を長く続けていくコツのひとつです。
ここが楽になればなと思っている介助動作がある方は、是非、ケアマネージャーや福祉用具専門相談員に、相談してみましょう。