多くの企業で10月の給与では年に一度実施される算定基礎届の反映が行われます。
算定基礎届とは4月から6月に支払われた給与を元に社会保険料と勤務実態とを合致させる重要な手続きです。
今回は算定基礎届について解説します。
対象者
事業所単位としては、一部の個人事業所等の社会保険未適用の事業所を除き社会保険適用事業所は全て対象となり、原則として、7月1日時点において在籍する社会保険加入者が対象となります。
給与への反映時期
算定基礎届の届出によって9月から新たな標準報酬月額となり(結果的に変動がないこともある)、社会保険料は原則として翌月徴収となるため、10月に支給される給与から改定後の標準報酬月額が反映されることとなります。
よって、上昇改定となる場合は、給与額自体は変動がないにも関わらず手取り額が減ってしまうケースも考えられます。
算定基礎以外で改定されるケースとは?
基本給や残業代を除く固定的な手当が変動し、標準報酬月額に換算して、2等級以上の変動があった場合には、月額改定要件の対象になるので、算定基礎届を待たずに、社会保険料が変動するケースがあります。
月額改定届は、固定的な賃金が変動となった4ヶ月目から改定されますので、一定のタイムラグが発生しますが、改定にあたっての要件を満たした場合には選択の余地がありません。
算定基礎届のよくある誤解とは?
休職中や育児休業中は全く勤務がないといったケースも少なくありません。その場合、4月から6月には全く給与が支払われていないと言うことも考えられます。
そもそもこのような場合は7月1日時点で在籍はしていたとしても、算定基礎届によって標準報酬月額が改定される事はありません。
なお、育児休業中の場合は、育児休業復帰後に仮に1等級の変動であったとしても、育児休業終了後の月額改定届と言う選択肢があります。
算定基礎届の報告に当たって使用する4月から6月の給与は、実際に4月から6月に支払われている給与を用いることとなります。
例えば末日締め翌月25日払いの会社を例に上げると、3月から5月の労働分にあたる給与を記載することとなるでしょう。
この点、労働ベースとなる労働保険と支給日ベースとなる社会保険とでは考え方が異なりますので、注意が必要です。
算定基礎の対象となる月は、あくまで給与の支払い基礎日数が17日以上(特的適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上)ある月となります。
すなわち、給与の支払い基礎日数が17日未満の月については、支払った金額自体は記載はするものの、平均額の計算には含めないこととなります。
そうしなければ、標準報酬月額が著しく低くなってしまう恐れがあるからです。
なお、特的適用事業所とは、1年のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金の被保険者(短時間労働者は含まず、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業等のことです(2024年10月からは旧来の101人以上の企業等が51人以上の企業等へ改正されています)。
一定額までは税法上非課税となる通勤手当について、社会保険上は報酬に含まれることから、当然、通勤手当も含めて報告しなければなりません。
他方、経費精算を給与と同時に支払っている場合は、当然、当該経費については、社会保険上の報酬の中に含めてはなりません。
他の事例として、4月に昇給があり、7月に月額改定の対象者となった被保険者がいる場合には、算定基礎届ではなく、月額改定届が優先されます。
最後に
算定基礎届は年に1度しかないため、基本的な論点であっても抜け落ちてしまうことが起こりえますので、自身としても、ある程度の基礎知識を備えておく事は重要です。
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