社会保険料制度には、出産・育児により働くことができない期間に対する免除制度が設けられています。
同制度を活用しても年金額の減額はなく、免除期間中も保険証は通常通り使うことができるため、非常に大きなメリットと言えます。
他方、出産・育児と同様に働くことができないものの、免除制度がない期間があります。
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1. 介護休業期間中
育児介護休業法には、育児休業だけでなく、介護休業も規定されています。
わが国は少子高齢化社会が到来しており、現役世代に比して高齢者の数が増えています。
家族の介護のために取得することができる介護休業は、93日の範囲内で最大3分割して取得することができます。
一般的には介護休業は育児休業よりも短期間となり、かつ、妊娠を経て出産を迎える育児休業と比べて前触れなく取得の必要性が生じることが珍しくありません。
育児休業期間同様に給与の支払い義務はないため、育児休業期間と同様にハローワークから給付される介護休業給付金の制度はありますが、現行の法律では介護休業期間中の社会保険料免除制度はありません。
育児休業期間の場合、性別を問わず、原則として子の1歳の誕生日の前日まで取得できるのに対して、介護休業は介護対象者(例えば親)の年齢に制限はなく、対象となり得る期間は長期間に及びますし、介護休業の対象家族は実父母だけでなく、祖父母や配偶者の父母も対象となります。
他方、育児休業の場合、1回あたりの休業対象者は「子供」は1人(多くても双子)ですが、介護休業の場合の対象者は育児休業よりも多いことから、介護休業期間中についても育児休業期間と同様に免除制度の創設を求める声が少なくありません。
また、男性の育児休業の場合も女性と同様に免除制度はあります。
男性の育児休業は介護休業の93日どころか、5日未満程度の短期間で取得が終了することが多く、制度の整合性に疑問符が持たれていることもあります。
2. 休職期間中
休職とは、私傷病や業務上の事由によって働くことができない状態を指します。
一般的には休職がないと、働くことができなくなった場合に解雇の選択肢が出てきてしまうため、多くの企業で、「解雇猶予措置」として休職の制度が設けられています。
もちろん、業務災害によって働くことができなくなった場合は、労災保険にて必要な範囲内で給付の対象となりますが、私傷病であっても健康保険に加入していれば傷病手当金の対象になります(医師の診断は必要)。
休職期間についても、介護休業期間と同様に社会保険料の免除制度はありません。
そして、育児休業や介護休業と決定的に異なる部分として、「休職」という法律上の制度はなく、休職は、会社が独自のルールを創設し、運用されているのが実態です。
具体的な休職することができる期間は、就業規則等に規定されています。
もちろん雇用契約の内容自体が変わっていないにも関わらず、社会保険を一方的に資格喪失させることは認められませんので、休職期間中であっても、会社と休職者の両方に社会保険料の負担義務が生じます。
今後の法律改正や現行の給付金に注目
社会保険料は公的保険制度の中でも最も高額な保険料であり、かつ、会社にも負担義務があります。
現時点で両期間に対して法律の改正は行われていませんが、介護休業期間、休職期間については他の公的給付(介護休業であれば介護休業給付金、休職であれば傷病手当金)を活用し、当該期間中の生計を立てていくことが望まれます。
また、どちらの給付金も一定の加入期間が求められることと、介護休業給付金はあくまで雇用の継続が前提となる給付金となりますが、傷病手当金は退職後であっても継続給付として1年6か月間受給することができます。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)
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