2022年5月16日、自民党の金融調査会が岸田文雄首相にNISA(少額投資非課税制度)の恒久化を提言しました。
NISAは2014年に期限付きで始まった非課税制度ですが、多くの投資家が利用しており「貯蓄から投資へ」の流れを加速させるためには改良必須の制度といっても過言ではないでしょう。
これまでも投資可能額の増加、つみたてNISAやジュニアNISAの新設など改正を重ねてきましたが、今回ほど注目を集めるタイミングはなかったのではないでしょうか。
昨年までの株高もあり多くの一般投資家がNISAを始めています。
初心者から上級者まで実践する非課税制度だからこそ、全投資家が注目するべきニュースといえます。
NISAとは
通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかります。
例えばAという会社の株式を100万円で購入とします。
その後A社株が値上がりし、120万円で売却できた場合、差し引き20万円が売却益となります。
本来であればこの売却益20万円の20%、つまり4万円が税金として差し引かれることになり、手残りの利益は16万円となります。
ですがNISA口座でこのA社株を購入していた場合は非課税となり、売却益である20万円をそのまま利益として受け取ることができます。
また、株式を売買して得られる譲渡益のみでなく、株式を保有しておくことによって得られる配当金も非課税となりますので、制度開始から多くの投資家の注目を集めました。
ということです。
「一般NISA」と「つみたてNISA」違いとそれぞれの特徴
2022年5月現在、NISAには3つの種類があり、それぞれ投資可能額、投資可能期間などに違いがあります。
多くの投資家に親しまれているのが「一般NISA」と「つみたてNISA」です。
簡単にそれぞれの特徴をまとめると以下の表のようになります。
一般NISA | つみたてNISA | |
年間投資可能上限額 | 120万円 | 40万円 |
非課税期間 | 5年間 | 20年間 |
投資可能商品 | 投資信託、株式、ETFなど | 金融庁が認めた投資信託 |
多くの書籍やインフルエンサーの影響もあり、コツコツ積立が実践できる「つみたてNISA」を活用して投資デビューした方も多いのではないでしょうか。
NISA恒久化の2つのポイント
NISA恒久化には2つの大きなポイントがあります。
ポイント1:投資可能期間の恒久化
現状、NISAはいつからでも始めることができるわけではありません。
あくまでも時限措置として定められた制度ですので、終了時期も決まっています。
2022年5月時点で決まっている制度改正により、制度開始直後と比べると投資可能期間が長くなっておりますが以下の通りです。
つみたてNISA:2042年まで
この期間までに購入された資産が非課税運用されるということになります。
例えば非課税期間の長いつみたてNISAで20年間の非課税投資をフル活用するためには、「2023年までに口座を開設して、積立投資を開始する必要がある」ということです。
2042年につみたてNISAを始めた場合はその年は40万円の投資信託を購入できますが、2043年には購入できません。
最大投資額が40万円になってしまうのは大きな注意点です。
この投資可能期間の恒久化がポイントの1つになりますが、いつ開始しても最大期間非課税投資ができるとなるとこれからの世代にとっても大きなメリットがありそうです。
ポイント2:非課税期間の恒久化
NISAの恒久化と聞くと多くの方がこちらを想像、望まれるのではないでしょうか。
文字通り、ずっと非課税期間が続くということになります。
一般NISAの5年間、つみたてNISAの20年間といった期間が撤廃されるのはうれしいことです。
アセットマネジメントOneという会社が2020年1月に行った「NISA制度への要望アンケート」においても、1番要望が多かったのがこの意味での「NISA制度の恒久化」です。
次いで多かったのは「投資枠の拡大」とのことです。
人気の制度だからこそその期間、金額の制限に多くの方が疑問を持っているようです。
期間限定となると、どうしてもそのタイミングでの投資可能金額となってしまいます。
世代によっては「入り用」の時期と重なることもあるでしょう。
政府が求める「貯蓄から投資へ」を実現するためには、非課税期間の恒久化は必須ではないでしょうか。
NISA制度のモデルとなったイギリスのISA制度は恒久化されています。
多くの人が安心した老後を迎えるためにも、政府には英断を求めたいところです。
非課税投資を始めつつ議論の進展を見守りましょう
NISAの恒久化が進展すれば全国民にとって朗報です。
ですが本当に実現するかはまだわかりません。
私たちにできることはなるべく早く非課税投資を開始し、議論の進展を見守ることです。
現状のNISA口座をフル活用しつつ、恒久化に期待しましょう。
「いつ始めてもいつまでも非課税」
そんな制度ができることを切望しております。(執筆者:FP技能士2級、証券外務員1種 冨岡 光)
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