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セットバックとは?発生する理由や必要費用・購入してよいケースを解説


セットバックとは、新たに建物を建築する際、道路の幅を4メートル(または6メートル)に確保するために、土地を道路側から後退させる必要がある法的措置です。セットバック物件を購入する際は、購入費用を抑えたい、不動産を建て直す予定がない、セットバック後も十分な敷地面積があるなどの条件が適している場合があります。セットバックには土地所有者が負担する費用がかかり、自治体によっては助成があることも。一方、セットバックした土地には固定資産税がかからず、道路拡張や防災上の目的で法令によって定められた規定です。土地価格が比較的安価になることが多いものの、購入前には詳細な調査が必要です。

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セットバックとは?発生する理由や必要費用・購入してよいケースを解説

セットバックとは、隣接する道路を増幅するために敷地面積を一部後退させることをいい、不動産投資の観点からはリスクの高い物件と評価されることがあります。本コラムでは、セットバックの意義や注意点、必要な費用を分かりやすく解説し、セットバック物件を購入してもよいケースを具体的に紹介します。

セットバックとは?

セットバックとは?発生する理由や必要費用・購入してよいケースを解説
(画像:PIXTA)

セットバックとは、道路の幅員4メートル以下の道路に接する土地に建物を建築するとき、その土地を建物側に後退(セットバック)させ、幅員4メートルを確保するという法的措置のことをいいます。

以下1~3の条件に該当する道路に面した土地において、建物を建設する場合にはセットバックが必要になります。

  1. 幅員が4メートル未満の道路
  2. 建築基準法の施行以前から建築物が存在した幅員4メートル未満の道路
  3. 特定行政庁(知事や市長)の指定を受けている幅員4メートル未満の道路

前提として、建築基準法では新たに住宅を建築する際、幅員4メートル以上(地域によっては6メートル以上)の道路に2メートル以上接するように定められています。

これは、緊急時における緊急車両経路の確保や、避難経路の確保、日照りや風通しの確保といった目的から設けられた規定です。

(道路の定義)
第四十二条 この章の規定において「道路」とは、次の各号のいずれかに該当する幅員四メートル(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、六メートル。次項及び第三項において同じ。)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。
二 都市計画法、土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)、旧住宅地造成事業に関する法律(昭和三十九年法律第百六十号)、都市再開発法(昭和四十四年法律第三十八号)、新都市基盤整備法(昭和四十七年法律第八十六号)、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和五十年法律第六十七号)又は密集市街地整備法(第六章に限る。以下この項において同じ。)による道路

(敷地等と道路との関係)
第四十三条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。
一 自動車のみの交通の用に供する道路
二 地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域のうち都市計画法第十二条の十一の規定により建築物その他の工作物の敷地として併せて利用すべき区域として定められている区域に限る。)内の道路

出典:e-Govポータル(https://www.e-gov.go.jp

しかし、建築基準法の制定以前から建っている住宅には、この基準を満たしていないものもあります。しかし、住居として利用しているため、直ちに建物を収去するわけにもいかず、「いずれこの建物を建て直す際には、土地を後退させて道路の幅員を確保する」という暫定措置が講じられることがあります。

このように、現状は建築基準法の条件を満たしていないものの、今後は近接する土地でセットバックが行われる道路のことを、「2項道路」または「みなし道路」と呼びます。また、2項道路に接する土地のことを「要セットバック」と呼びます。

セットバックとは?発生する理由や必要費用・購入してよいケースを解説

端的に「道路」といっても、「広義の道路」や「建築基準法上の道路」など複数の概念があるため、不動産を購入する場合には、それぞれの定義や制限についてしっかりと理解しておく必要があります。

道路に関する詳しい解説や調べ方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

【関連記事】【第13話】事例から見るシリーズ|建築確認のことと権利の話は、別の問題

セットバックと私道負担の違い

セットバックと似た概念に、私道負担があります。私道負担とは、自己所有の土地に私道が含まれていることで生じる、「通行のための利用義務」や「建物の建設不可」「門扉や駐車場の設置制限」などの負担・制約を指します。

一方でセットバックは、建築基準法に定められた「道路(公道・私道を問わない)」の幅員を確保するために、敷地の一部を後退させるルールのことです。すなわち、敷地の一部を道路に供し、その部分については建築が制限されることとなります。

セットバックにより新たに生じた道路部分が私道となる場合、その部分の管理や通行に関する負担が生じることがあります。つまり私道負担とは、セットバックによって生じた私道を含め、私道に関連する維持管理や権利関係に関する負担全般を指すものです。

私道負担の概要や、メリット・デメリット、私道負担に関するよくある疑問についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

【関連記事】私道負担とは?「やめとけ」と言われるデメリットやセットバックとの違い

セットバックの注意点

セットバックとは?発生する理由や必要費用・購入してよいケースを解説
(画像:PIXTA)

ここでは、セットバックに関する注意点を3つ解説します。要セットバックの土地を購入する場合には、セットバックにより予期せぬ負担が生じたり、土地の評価額に影響を及ぼしたりすることがあるため、しっかりと基本的な知識を確認しておきましょう。

道路向かいの状況次第でセットバック幅が異なる

要セットバックの土地において、どれくらいのセットバックが必要となるのかは、道路向かいの状況によって異なります。

例えば道路向かいの土地も要セットバックであり、道路を1メートル拡張する必要があるときは、セットバック幅は互いに道路の中心から0.5メートルずつとなります。

一方で、道路向かいが線路・崖・壁・河川であるときのように、セットバックできない事情があるときには、こちらの土地だけで1メートルのセットバックが必要となります。この場合には自身が負担するセットバック幅が大きいため、道路工事に必要なコストがかさむほか、建物を建てられる面積も小さくなってしまいます。

また、一般的に、建物を建てられる面積が小さくなれば、その土地の市場価値も小さくなります。

セットバックとは?発生する理由や必要費用・購入してよいケースを解説

このように、セットバックが必要な幅(および費用等)は、道路向かいの土地の状況に応じて大きく変わるため、あらかじめセットバックの範囲やセットバック後の敷地面積をしっかりと確認しておきましょう。

隣接しているのが私道でもセットバックが必要なこともある

土地と隣接する道路が私道であっても、セットバックが必要となることがあります。

そもそもセットバックは建築基準法により定められたルールであり、建築基準法42条2項では公道と私道を区別していません。そのため要セットバックかどうかは、あくまで「2項道路に該当するかどうか」で判断される点に注意が必要です。

2項道路とは、先ほど解説したように「1950年(昭和25年)の建築基準法制定以前からある道路であって、幅員が4メートル(または6メートル)以下の道路」のことをいいます。道路が2項道路に該当するかどうかは、自治体ごとにWEB上で開示しているケースもあるため、まずはWEBで検索してみましょう。

また、2項道路に該当することを確認した上で、さらにどれくらいセットバックする必要があるのかの詳細を確認するためには、その地域を管轄する自治体の建築指導課などの窓口に問い合わせることで判断することが可能です。不動産会社に問い合わせることでも回答は得られると思いますが、後悔しない不動産投資を行うためにも、自分自身で自治体に問い合わせ慎重に調査を行うことをおすすめします。

セットバックした土地の所有者は自治体によって異なる

セットバックにより道路に供した土地の扱いについては、土地所有者がそのまま所有権をもつ(私道となる)パターンのほか、所有権をもつ(公道となる)パターンがあり、自治体によって対応が異なります。

自治体に所有権が移転するパターンでも無償譲与とすることが一般的ですが、セットバックに積極的な自治体のなかには有償での譲渡を行っていることもあります。自治体によってセットバック関与の積極性は大きく異なるため、まずは管轄自治体の担当部署に問い合わせてみましょう。

セットバックした土地の所有者が誰になるかは、今後の管理負担の担い手が誰になるのかという問題と直結するため、あらかじめしっかりと確認しておくことをおすすめします。

セットバックにかかる費用

ここでは、セットバックにかかる費用の目安や、実際に誰が費用を負担するのかという点について解説します。セットバック費用の取り扱いについては自治体によって運用が異なるため、本コラムでの数値は参考とし、土地を購入する前に必ず自治体に確認するようにしましょう。

セットバック費用は原則自己負担だが補助金があることも

セットバックに必要な費用は、一般的に30万円〜130万円程度です。このように大きな幅があるのは、セットバックに際してどのような措置が必要となるのか、状況によって異なるためです。具体的には、次のような費用項目が挙げられます。

セットバックに必要な費用の例
・境界確定・土地の測量費用:30万円〜50万円
・既存設備(擁壁など)の撤去費用:10万円〜
・敷地と道路値の分筆登記費用:5万円〜10万円
・道路仮整備費用:20万円〜60万円
・重機利用費用:5万円〜
など

特に、土地の境界線が不明確で境界確定測量が必要となる場合や、大規模な擁壁工事が必要となる場合では、セットバック費用だけで数十万円以上となってしまう場合もあります。

セットバック費用は、基本的には土地の所有者が負担しますが、自治体によってはセットバックに関する助成制度が実施されていたり、費用を一部負担してくれていたりします。例えば東京都新宿区の場合、測量費用として最大10万円、整地費用に最大10万円などの助成を受けられます。また、河川と隣接しているような場合には、別途で擁壁工事などの助成を受けられることもあります。

このように、セットバックに必要な費用や助成金の扱いについては、土地の状況や自治体によって大きく異なります。そのため要セットバックの土地を購入する際には、あらかじめセットバック費用を見積もり、自治体にも相談するようにしましょう。

セットバックした土地に固定資産税はかからない

セットバックした土地が公道になる場合はもちろんのこと、私道となる場合であっても、その土地の固定資産税を支払う必要はありません。セットバックした土地は所有者であっても自由に利用することができなくなる以上、税金の負担だけを課すのは酷だと考えられているためです。

ただし、非課税とするためには自治体への申告が必要になるので、忘れないようにしましょう。

また、セットバックした土地を道路として公共の用に供していないと判断される場合(例えば、勝手に夜間通行止めとする場合や、私物を置いて占有している場合など)には、固定資産税の免除措置は受けられません。

セットバック物件の購入には入念な調査が必要

セットバックとは?発生する理由や必要費用・購入してよいケースを解説
(画像:PIXTA)

要セットバック物件には、ここまで解説したように、セットバックに多額の費用が必要となる場合や、防災上のリスクを抱えている可能性があったり、建て替えの際に制限を受ける可能性があったりします。そのため、不動産投資の観点からみると、将来的に買い手が見つかりにくいというデメリットがあります。

要セットバック物件を購入する際には、セットバックに必要な費用や、セットバックによって物件の価値がどのように変化するかを事前にしっかりと計算し、慎重に投資判断を行うことが重要です。

セットバック物件を購入してもよいケース

要セットバック物件について比較的ネガティブな点を強調して解説してきました。以下からは、要セットバック物件を購入してもいいケースについて具体例を挙げて解説します。

物件の購入費用を抑えたいとき

要セットバックの土地は、ここまでに紹介したデメリットやリスクがあるため、同様の条件の土地と比較して価格が安くなる傾向にあります。そのため、将来的なセットバック費用を考慮しても、なお土地の取得価格が安いと判断できる場合には、積極的に購入を検討してみましょう。

特に、しばらく建て替えの予定がない場合や、自宅として長期間利用することを目的としている場合には、要セットバックの土地はむしろ魅力的な選択となる可能性があります。

物件の購入後に建て替えの予定がないとき

物件の購入後に建物を建て替える予定がない場合にも、要セットバック物件はおすすめです。

セットバックの義務が生じるのは、建物を建て替えたとき、もしくは新築で建てるときになります。現状の建物をこのまま使い続ける場合には、セットバックを行う必要はありません。

ただし要セットバック物件は、「狭い道沿いに建っている建物であって、緊急車両等が通りづらい」「日当たりや風通しに問題がある」という物件でもあるため、これらの観点も加味したうえで総合的な判断が求められます。

セットバックした後でも十分に敷地面積があるとき

セットバックによって敷地面積が減少しても、十分に建物を建てられるだけの広さが残る場合にも、購入を検討してみましょう。希望する建物の規模に対して十分な余裕がある場合のほか、物件の立地自体に非常に魅力がある場合にもおすすめです。

セットバック後の敷地面積でも希望する建物が建築可能か、また、セットバックによって失われる面積以上の価値が立地にあるかなどを総合的に判断し、購入を検討することが重要です。

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本コラムは一般的な情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的とするものではありません。
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外部執筆者の方に本コラムを執筆いただいていますが、その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当社の見解等を示すものではありません。
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