不動産を購入するときのローンには「不動産投資ローン」と「住宅ローン」があります。「住宅ローンから不動産投資ローンに変えて賃貸するケース」や「住宅用と投資用物件のどちらを先に買うか」といった場面で、これらの違いが気になる人も多いと思います。
そこで本コラムでは、不動産投資ローンと住宅ローンの違いについて解説します。また、不動産投資ローンと住宅ローンはどちらを先に利用すべきかについても紹介します。不動産投資を検討中の人はぜひ最後までご覧ください。
不動産投資ローンと住宅ローンの違いは?
不動産投資ローンと住宅ローンは、対象物件が投資用であるか、自己居住用であるかという点で異なります。不動産投資ローンを自宅購入に使うことはできませんし、その逆もしかりです。
2つのローンは上記の借入目的以外にも様々な違いがありますので、詳しく説明します。
不動産投資ローン | 住宅ローン | |
---|---|---|
借入の目的 | 投資用物件の購入 | 自宅の購入や建築、改修 |
返済期間 | 耐用年数や個人属性に応じて決まる | 35年が多い(フラット35など) |
返済原資 | 家賃(+給与など別の収入) | 自身の収入 |
最大融資限度額 | 大きい(年収の7~10倍程度) | 小さい(年収の5~7倍程度) |
金利 | 高い(1.5~3.5%程度) | 低い(0.5~2.0%程度) |
審査基準 | 個人属性+物件 | 個人属性重視 |
契約名義人の制限 | 法人名義で契約できる場合がある | 法人名義で契約できない |
借入の目的
不動産投資ローンは、アパートやマンション投資などの事業に対して金融機関から受ける融資で、賃貸や売却などの経営を目的とした物件の購入費用で利用します。一方で、住宅ローンは本人や家族が生活するための不動産を購入する際に受ける融資で、賃貸経営を目的とした物件の購入費用には使えません。
もし住宅ローンを組んで投資用物件の購入費用にした場合、詳しくはこの後で説明しますが、重大な契約違反とみなされて一括返済を求められることがあります。
返済期間
返済期間は、不動産投資ローンは物件の法定耐用年数や個人の属性に従って金融機関が判断しますが、住宅ローンは「フラット35」など35年で返済する場合が多いです。
返済原資
返済原資は借入金を返済していく資金を指します。不動産投資ローンの返済原資は毎月の家賃収入、住宅ローンの返済原資は一般的には毎月の給与収入となります。
なお、不動産投資ローンでも入居者がいない場合などは、過去の家賃収入で得た預貯金や給与収入などから捻出することとなります。
最大融資限度額
最大融資限度額とは、最大で借りられる融資の金額です。不動産投資ローンの方が、住宅ローンよりも最大融資限度額は高くなっています。不動産投資ローンは事業をする投資家に対する融資ですが、住宅ローンは個人に対する融資となり、返済原資も家賃収入があるので不動産投資の方が高いと考えられます。
最大融資限度額は一般的には不動産投資ローンでは年収の7~10倍、住宅ローンでは5~7倍程度ですが、金融機関によって異なります。
金利
不動産投資ローンの方が住宅ローンよりも金利は高くなるのが一般的です。金融機関から見ると、不動産投資ローンは事業に対して大きな融資限度額を設定し貸し出すため、貸倒リスクが高くなるためです。
また、不動産投資ローンの金利は年利1.5%~3.5%程度とされ、住宅ローンの金利は年利0.5%~2.0%程度といわれています。
審査基準
不動産投資ローンの審査では個人の信用度と物件の収益性を見ますが、住宅ローンは返済原資が給与収入となるため個人の信用度がより重視されます。
<不動産投資ローン審査基準>
・年収、勤務先、勤務年数、個人信用情報(ローンやクレジット返済の遅延情報など)
・物件の担保評価(立地や築年数などを踏まえた収益性)
・具体的な収益計画(家賃収入の収益状況や修繕費などの損益)
<住宅ローンの審査基準>
・年収、勤務先、勤務年数、個人信用情報(ローンやクレジット返済の遅延情報など)
・物件の担保評価(土地と建物それぞれの評価金額)
・簡易的な月々の家計状況
なお、金融機関によって融資審査の基準は異なります。
契約名義人の制限
不動産投資ローンでは金融機関によっては法人名義で契約できることがありますが、住宅ローンは法人名義で契約できません。住宅ローンは個人が居住する住宅の購入を目的としたローンであるためです。その法人の経営者が購入物件に住んだ場合でも住宅ローンを法人名義で組むことはできず、不動産担保融資や不動産投資ローンなどを利用することになります。
不動産投資ローンと住宅ローンはどちらを先に利用すべき?
不動産投資ローンと住宅ローンは個人の借入状況等を金融機関が確認するため、お互いのローンが影響を与え合うことになります。
結論として、どちらを先に購入すべきかについてはその人自身の属性や購入価格規模によって異なりますが、ここでは先に不動産投資ローンで投資用物件を購入してから、住宅ローンでマイホームの購入をする場合のおすすめポイントを紹介します。理由は以下2点です。
1点目は、住宅ローンを組んだ後に不動産投資ローンに申し込む場合、既に住宅ローンの高額な借り入れがあると見なされて審査に悪影響を与えることがあるためです。不動産投資ローンでは空室など家賃収入が入らない場合に給与収入や預貯金などから返済する必要があるため、その負担に耐えられるかという点も審査上のポイントの一つです。そのため、すでに高額なローンの支払いがある場合はマイナスに働くことがあります。
2点目は、不動産投資ローンを組んで収益用不動産を購入すると家賃収入が発生するため、この収入を年収とみなす金融機関は少なくありません。そのため、先に不動産投資をすることでローン借入は発生するものの、審査上の収入も増えるケースもあります。しかし、空室が発生していたり、返済比率が高く毎月のキャッシュフローが悪かったりする場合はマイナス要素にもなります。
金融機関によって審査に対する考え方の違いがあるほか、世の中の情勢、個々人の経済的な状況によっても異なるため、まずは借入をされる前に金融機関に相談してみることをおすすめします。
不動産投資ローンを組む人
不動産投資ローンは「不動産投資の目的で物件を購入する人」、「法人名義でローンを組みたい人」のローンです。
そもそも住宅ローンは賃貸経営等を目的とした投資用物件の購入費用には使えないため、不動産投資として利用するためには不動産投資ローンを選ぶしかありません。
また、住宅ローンは法人名義での購入はできないため、法人名義で物件を購入して社宅として利用したい場合は、住宅ローン以外の方法で融資を受ける必要があります。
住宅ローンを組む人
住宅ローンは「物件を自宅として利用し、低い金利でローンを組みたい人」のローンです。住宅ローンは不動産投資ローンよりも金利が低く、所得税から控除される「住宅ローン減税」に代表されるように住宅を取得するための税制支援があります。
不動産投資ローンと住宅ローンの借り換えはできる?
不動産投資ローンから住宅ローンに、逆に住宅ローンから不動産投資ローンに借り換えをしたい人もいるかもしれません。
ここでは、住宅ローンと不動産投資ローンの借り換えができるかどうかについて解説します。
不動産投資ローンから住宅ローンへの借り換えの場合
投資用物件として購入した家に自分自身が住むことになった場合、金利の安い住宅ローンに借り換えたいと思われるかもしれません。
しかし、不動産投資ローンから住宅ローンへの借り換えは難しいことが多いです。
住宅ローンはマイホームの購入を後押しする融資で金利や審査基準を優遇しています。投資ローンから住宅ローンへの借り換え対応してくれる金融機関はほとんど無いのが実情です。
住宅ローンから不動産投資ローンへの借り換えの場合
住宅ローンを組んで自宅を購入後、急な転勤などで住み替えが必要になった場合に、自宅を賃貸に出せないか検討することもあるかもしれません。しかし、住宅ローンを借りたまま自宅を賃貸として貸し出すことは原則できません。
ただし、転勤などで金融機関がやむを得ないと判断した場合には、一時的にそのまま自宅を貸し出すことを許可してくれたり、不動産投資ローンへの借り換えたりすることが可能なケースもあります。
住宅ローンから不動産投資ローンに借り換えると、金利の上昇や事務手数料などの諸手数料が発生することには注意が必要です。借り換えで発生する諸手数料などについては以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】住宅・不動産投資ローンの借り換え費用はいくら?相場や手順を紹介】
なお、金融機関に報告せずに住宅ローンのまま賃貸をすることは重大な契約違反となるため、必ず事前に金融機関に相談しましょう。
住宅ローンで不動産投資を利用した場合どうなる?
住宅ローンを借りたまま自宅を貸し出すことは原則できないと解説しました。
しかし、実際に不動産投資用物件を住宅ローンで購入していることが金融機関に発覚すると、どうなってしまうか気になる人も多いのではないでしょうか。ここでは住宅ローンの不動産投資利用が発覚するとどうなってしまうかについて紹介します。
一括返済を求められる
投資用物件に住宅ローンを不正利用した場合は契約違反とみなされ、金融機関から一括返済を求められます。
なお、住宅ローンで投資用物件を不正に購入した場合は以下のような場合で不正利用が発覚することが多く、リスクが非常に高いです。
不正に購入したことが発覚するケース | |
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金融機関からの郵便物が届かない | 住宅ローンで購入した物件は、住民票は新しい住所になるのが一般的ですが、賃貸している場合は他の人が住んでいます。そのため、金融機関からの郵便物が不着として返却されることから調査が入るケースがあります。 |
全件調査の実施 | 不動産販売事業者による住宅ローンの不正利用が発覚した場合や世間で大きな不正利用が問題となった場合などに、全件調査が実施されることがあります。 |
金融機関からの融資が厳しくなる
金融機関に対して不正利用や虚偽申告をすると、その後の金融機関との取引が難しくなる場合があります。
融資は信頼関係で成り立っており、不動産への融資は金融機関が数千万円という大金を貸すために大きなリスクを負っています。そのようなリスクを負った金融機関に対して不正利用をしたとなれば、毅然とした態度をとられるのは当然といえます。
万が一不正利用が発覚して一括返済を求められた場合には自己破産の可能性もあるため、投資用物件を住宅ローンで購入することはやめましょう。
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