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『中国の民主』白書と「民主主義サミット」(2)【中国問題グローバル研究所】


【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、「『中国の民主』白書と「民主主義サミット」(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。

◆2008年、いち早く北京五輪サポートの声を上げた日本
そのような中、いち早く北京五輪をサポートすべきだという声を上げたのは日本である。

2008年4月2日、当時の日本の福田首相は「人権にかかわるようなことがあるならば、懸念を表明せざるを得ない」と述べる一方で、北京オリンピックの開会式に出席するのかどうかについて聞かれると「中国が努力している最中に参加するとかしないとか言うべきではない」と発言したことで有名である。

そして5月6日~10日、胡錦涛を国賓として日本に招き(※2)、天皇陛下に謁見するところまで持って行った。

天安門事件発生後の対中経済封鎖をいち早く解除させて、その後の中国経済の成長を可能ならしめた日本と同じく、この時もまた日本が中国(=人権弾圧をする中国共産党政権)に救いの手を差し伸べたのだ。

中国はこの味を十分に知っている。

だからこそ今般の北京冬季五輪の外交的ボイコットに関して、12月10日にコラム<中国に最も痛手なのは日本が外交的ボイコットをすること>(※3)に書いたような現象が起きるのである。日本をテコに使うのは中国の常套手段だ。そのために日本国内に多数の親中議員を養成することに中国は(建国以来)余念がない。「侵略戦争への贖罪意識」を利用すれば、日本は中国の思う方向にコントロールできると、中国は高を括(くく)っている。

◆中国が出した『アメリカ民主の状況』白書
しかし、アメリカに対してはそうはいかない。

だから12月6日、中国の外交部は『アメリカ民主の状況』と題した白書を発布した(※4)。アメリカの民主は金権政治であり、一人一票と言いながら実際は少数エリートが統治しているにすぎず、民主は混乱し崩壊していると酷評している。

白書はまた以下のようなことを列挙している。

——たとえばトランプ(元大統領)支持派による議会乱入事件、黒人差別をやめることができない激しく長い人種差別社会の慣行、激しい貧富の格差、コロナ感染をコントロールできない惨劇、有名無実の言論自由、民主を広めるという名目により朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争・・・と数多くの戦争を繰り返してきた。民主を口実にした無用の戦争によりどれだけ多くの無辜の民の命を非人道的手段により奪ってきたか。しかもアフガニスタンにおける戦争と占領により、他の民族国家に対する強硬な民主の押し付けは失敗に終わったことを歴史は証明している。アメリカがなぜ世界に次から次へと戦争を仕掛けるかは、政権は軍事産業を味方につけておかないと成立しないからだ。軍事産業で製造された武器をさばくために戦争を仕掛けている。その時に使うのが「民主主義のため」という虚偽の正義に過ぎない。最近では制裁を乱用して国際ルールを破壊していることも含めて、アメリカの民主の、人類に対する罪は重い。(以上概略と趣旨を紹介。)

このように、白書の口調は激しい。

今年6月に、習近平政権は胡錦涛政権の白書のリニューアル版である『中国新型政党制度白書』(※5)を出しているが、そういったトーンとは異なり、実に攻撃的だ。

この『アメリカ民主の情況』白書は、どこからどう見てもバイデン大統領が提起した「民主主義サミット」に対抗したものであるとみなすことができる。

◆バイデン政権主催の「民主主義サミット」は中国に痛手か?
しかし、その肝心の「民主主義サミット」だが、対中包囲網としての効果があっただろうか?

サミットはおよそ110の国と地域の代表を招いて12月9日から2日間にわたってオンラインで開催された。ということは、おおよそそれと同じ数に相当する国が「非民主主義国家だ」として招かれなかったことになる。

中国やロシアを専制主義国家の代表とするのは分かるにしても、シンガポールといった国まで「非民主主義国家」と区分されており、アフリカ54ヵ国の内、招かれたのはわずか17ヵ国。残りの37ヵ国が「非民主主義国家」に分類されている。

このようなことをしたら、約100近い国を、「さあ、中国側に付きなさい」と追いやったようなもので、習近平やプーチンは、むしろ「ニンマリ」ではないだろうか?

なぜなら招かれた100強の国や地域も、米中覇権競争の中で政治的にはアメリカを向く傾向はあるものの、経済的には中国に頼っているため、「アメリカ側に付きます」とは表明できない。特に力のない国々は、むしろ中国側に「良い顔」をしていないと生存できないので、意思表示はできない。多くの国は米中のはざまで「漁夫の利」を得ながら泳いでいる方が好都合なのだ。

二者択一を迫るようなサミットに積極的に出たいという国の数は圧倒的に少ないだろう。案の定、サミットは盛り上がりに欠け、アメリカの影響力の低下を逆に露呈してしまった。

言論と人権を弾圧する中国共産党の一党支配体制を維持させないようにするのは歓迎するが、その方法は稚拙と言っても過言ではない。「排除の論理」では、国際社会を一つに結び付けるのは困難だ。

おまけに最も強く結ばれているはずの日米が反対方向のベクトルを向いていて、12月9日のコラム<北京五輪ボイコットできない岸田政権の対中友好がクワッドを崩す>(※6)に書いたように、日本は中国に有利な方向にしか動いていない。

バイデンは日米豪印という安全保障上の枠組み「クワッド」の一員に留めておきたいため、インドを「民主主義国家」のリストの中に入れたようだが、そのインドとて、実はスウェーデンのシンクタンクV-DEMが調査データとして出しているように、インドは「選挙による独裁国家」、「専制主義国家」として分類されているのである(※7)。

決定打は台湾に関する扱いだ。

本来ならこのサミットは台湾の代表として「中華民国」蔡英文総統を招き「一つの中国」を崩すのが中国にとって致命的になれるはずだったと思うが、招いたのはデジタル大臣のオードリー・タン(唐)で、しかもオードリーが台湾と大陸を色分けした地図を示しながら講演したのだが、その画面はアメリカ側によって一瞬で遮断され台湾で物議をかもしている(※8)。

バイデンは「北京」に配慮したのだ!

なんという中途半端なサミットだろう。

バイデンの動き方は何とも臆病で「だらしない」。

パフォーマンスに過ぎないことを、ここでも露呈してしまう結果を招いている。

世界戦略にかけては、残念ながら中国は長期的で「戦略」に長けている。

アメリカは、もっと深く鋭い思慮に基づいて世界戦略を練り直さなければならないだろう。

写真: ロイター/アフロ

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)http://www.china.com.cn/zhibo/zhuanti/hjtfr/node_7044169.htm
(※3)https://grici.or.jp/2814
(※4)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202112/t20211205_10462534.shtml
(※5)http://www.scio.gov.cn/zfbps/ndhf/44691/Document/1707421/1707421.htm
(※6)https://grici.or.jp/2810
(※7)https://www.v-dem.net/media/filer_public/74/8c/748c68ad-f224-4cd7-87f9-8794add5c60f/dr_2021_updated.pdf
(※8)https://tw.news.yahoo.com/%E6%B0%91%E4%B8%BB%E5%B3%B0%E6%9C%83%E9%A2%A8%E6%B3%A2-%E5%94%90%E9%B3%B3-%E5%85%A9%E5%B2%B8%E5%9C%B0%E5%9C%96-%E7%82%BA%E4%BD%95%E6%B6%88%E5%A4%B1-%E8%B7%AF%E9%80%8F-091001099.html



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