フォーカス Research Memo(5):2026年3月期は最高業績を更新、「非連続な成長への序章」と位置付け(1)
■フォーカスシステムズ<4662>の業績動向
1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の業績は、売上高で前期比9.7%増の35,698百万円、営業利益で同39.8%増の3,036百万円、経常利益で同41.7%増の3,068百万円、当期純利益で同48.9%増の2,333百万円と、過去最高業績となった。売上高、各利益ともに期初予想を上回る着地となり、営業利益率は同1.8ポイント上昇し8.5%となった。重点施策として掲げた「高収益案件の増加」「プロジェクト管理の徹底」「価格交渉・価格転嫁」が奏功し、全セグメントで増益を達成したことが大きな要因である。価格適正化の浸透に加え、継続性と収益性の高い案件を選別する営業方針への転換が進んだ。また、従来のSES※中心の案件構成から、一次請け案件や上流工程案件の拡大を進めたことも利益率改善に寄与した。公共やインフラを中心とする安定収益基盤を維持しながら、ERP・DX関連を中心とした高付加価値領域の拡大が進み、「安定成長企業」から「収益性を伴う成長企業」へと変化しつつある。2026年3月期は、その構造変化が業績として顕在化した一年であり、同社は「非連続な成長への序章」と位置付けている。
※ SES(System Engineering Service)とは、契約で定めた期間、クライアントに対してエンジニアの技術力や専門スキルを提供するサービスを指す。クライアントから発注されたシステムを開発して納品するのではなく、SESはシステム開発を支援したり、運用・保守などを受け持ったりすることで報酬を受けるという点が特徴。
(1) 公共関連事業
公共関連事業の売上高は前期比9.0%増の10,875百万円、セグメント利益は同20.6%増の1,922百万円となった。社会保障、医療、自動車関連などの大型プロジェクトが好調に推移したほか、電子申告やマイナンバー関連案件の積み上げが増収増益に寄与した。同社は、公共分野は国家予算を背景とした安定市場でありながら、既存案件に毎年新たな機能追加や高度化ニーズが発生しているため、案件規模そのものが拡大する傾向にあると見ている。また、同セグメントはSES案件が比較的多いが、近年は価格交渉や価格転嫁が着実に浸透しており、新人の参画条件見直しや既存案件の単価見直しなど地道な取り組みが利益率改善に大きく寄与した。安定した需要基盤と価格適正化の進展により、収益性の高い成長が実現したセグメントである。
(2) エンタープライズ事業
エンタープライズ事業の売上高は前期比21.6%増の10,899百万円、セグメント利益は同40.0%増の1,433百万円となり、全セグメントの中でも最も高い成長率となった。主力のERPソリューションやインフラ案件が好調に推移したほか、大型案件の安定運営も利益拡大に貢献した。Intra-martやBizインテグラルを活用したERP案件が非常に活況であった。従来のアプリケーション開発に加え、インフラ構築まで一括受託する案件が増加しており、総合的な受託体制が競争優位性につながっている。また、一度導入した案件から追加機能開発の要請が増えており、アップセルやクロスセルによる売上も拡大している。顧客業務を熟知した状態で追加開発を受注できるため、トラブルリスクが低く利益率が高い。同社のDX・ERP戦略の中核を担う成長ドライバーとなっている。
(3) 広域ソリューション事業
広域ソリューション事業の売上高は前期比3.7%増の5,781百万円、セグメント利益は同33.5%増の782百万円となった。増収率の上昇は緩やかなものの、収益性の改善が顕著であり利益成長が大きく加速した。背景には、全社的に推進している高収益案件の選別受注に加え、一次請け案件比率の上昇がある。従来はSES案件が大半を占めていたが、近年は元請案件の獲得を積極化し、一次請け案件の構成比は2〜3割程度まで上昇している。また、一度獲得した案件の設計資産やノウハウを横展開することで再設計工数を削減し、品質向上と収益性向上を両立している。さらに、同社が元請として外注先を統括する体制を構築することで、大型案件への対応力も向上した。売上規模以上に利益体質の改善が進んだ。
(4) イノベーション事業
イノベーション事業の売上高は前期比1.3%増の8,142百万円、セグメント利益は同14.7%増の1,121百万円となった。売上成長は限定的であったものの、利益率重視の案件選別が進み、着実な利益成長を実現した。主力のインフラ事業では、日本IBM(株)やKyndryl〈KD〉向けを中心とした技術支援案件が堅調に推移したほか、一次請け案件の拡大も収益性向上に寄与した。また、自社製品分野では電子透かし、暗号、IoT関連製品のラインナップ拡充を進めた。特に電子透かしは、従来のオンプレミス型に加えて予てよりニーズのあるクラウド版を投入したことで問い合わせが増加した。同社は製品販売そのものよりも、製品を起点とした開発案件獲得や販路拡大を重視しており、自社製品を顧客接点創出のツールとして活用している。ストック型収益の拡大と高付加価値案件の創出を通じ、中長期的な成長が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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