クロスキャット Research Memo(5):2026年3月期は過去最高業績を更新、SI・DX両分野ともに成長続く
■業績動向
1. 2026年3月期の業績概要
クロスキャット<2307>の2026年3月期の連結業績は、売上高が前期比6.9%増の17,314百万円、営業利益が同9.7%増の2,014百万円、経常利益が同7.6%増の2,043百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同14.8%増の1,511百万円となった。売上高・各利益ともに過去最高を更新し、中期経営計画「Growing Value 2026」の最終年度の目標(売上高173億円、営業利益20億円、営業利益率11.5%)を1年前倒しで達成した。
好業績の背景には、同社が推進する「両利きの経営」の成果がある。既存事業であるSI分野において金融・公共分野を中心としたミッションクリティカル領域での受注拡大に加え、新たな成長領域であるDX分野においてクラウド案件やデータ活用基盤構築案件が伸長した。さらに、PMOによる品質管理体制の強化や、低い離職率を背景とした人材・ノウハウの蓄積が収益性向上に寄与し、増収率を上回る利益成長を実現した。
2. 事業領域別動向
(1) SI分野
SI分野の売上高は前期比6.2%増の14,852百万円、売上総利益は同6.7%増の3,535百万円となった。金融分野では大型案件が売上成長をけん引したほか、公営競技・スポーツ振興くじ向け案件も好調に推移した。同社は公営競技システム分野で40年以上の開発実績を有し、発券から払戻しまでのコアシステムを担っている。スポーツ振興くじ市場の拡大を背景に受注環境は良好であり、2026年3月期の成長ドライバーの一つとなった。
また、金融・公共分野における長年の業務知識や開発実績を背景に、高度なミッションクリティカル案件を安定的に獲得している点も同社の強みである。加えて、PMOやシステムマネジメント部による全社横断的なプロジェクト管理体制が定着しており、大規模な不採算案件の発生を抑制している。こうした高品質な開発体制が収益性向上を支え、同社の安定成長の基盤となっている。
(2) DX分野
DX分野の売上高は前期比11.6%増の2,461百万円となり、SI分野を上回る成長率を実現した。売上総利益は同1.7%増の542百万円となった。成長をけん引したのはBIビジネスを中心とするデータ活用基盤構築案件であり、DX分野のうち、データ活用に関連するBIビジネスの売上高は前期比19.9%増と高い伸びを示した。企業のデータ活用需要やクラウド移行需要の拡大を背景に、DX分野は同社の成長エンジンとして存在感を高めている。
同社の強みは、単なるデータ基盤構築ではなく、金融・公共分野で長年培ってきた業務ノウハウを活用し、データを生み出す業務プロセスそのものを理解したうえでシステム構築を行える点にある。数10億件規模のデータ移行案件を無障害で完遂した実績を有するほか、OCI関連技術の強化にも取り組んでいる。さらに、DX分野で培ったクラウドやデータ活用の知見はSI分野にも展開されており、両事業が相互に成長を促進する好循環を形成している。
3. 財務状況と経営指標
2026年3月期末の資産合計は前期末比319百万円増の10,846百万円となった。流動資産は同150百万円増の8,311百万円となり、営業活動によるキャッシュ創出を背景に現金及び預金が621百万円増加した。一方で、売掛金及び契約資産は大型案件の進捗や回収の進展により485百万円減少した。固定資産は同168百万円増の2,534百万円となった。のれんの償却が進んだ一方、投資有価証券を中心とする投資その他の資産が増加した。負債合計は同482百万円減の4,190百万円となった。短期借入金を800百万円圧縮したことに加え、固定負債も188百万円減少した。この結果、有利子負債は1,500百万円から700百万円へ大幅に減少した。一方、純資産合計は親会社株主に帰属する当期純利益の計上を主因として同802百万円増の6,656百万円となった。
財務指標を見ると、自己資本比率は前期末比5.8ポイント上昇の61.4%となり、財務基盤は一段と強化された。有利子負債比率は前期末の25.6%から10.5%へ低下しており、借入金依存度は大幅に改善している。また、現金及び預金の増加と有利子負債の削減により、ネットキャッシュは同1,421百万円増の2,604百万円となった。
同社は大規模な設備投資を必要としない事業モデルであり、安定したキャッシュ・フロー創出力を有している。2026年3月期末時点では総資産の約2割強に相当するネットキャッシュを保有するなど、財務安全性は極めて高い水準にある。加えて、有利子負債の圧縮と自己資本の積み上げが同時に進んでおり、今後の人的資本投資やDX関連投資、M&Aなどの成長投資を実施するうえでも十分な財務余力を確保していると評価できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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