明豊ファシリ Research Memo(7):2026年3月期はオフィス事業が大幅増収増益
■明豊ファシリティワークス<1717>の業績動向
2. セグメント別の動向
(1) オフィス事業
オフィス事業では、売上高が前期比37.7%増の1,562百万円、営業利益が同180.1%増の319百万円と大幅増収増益となった。都心部で大規模開発によるオフィスビルの新築が相次ぐなか、同社の専門性が求められる案件が目立っている。具体的には、工事費の高騰を伴う難度の高い新築ビル竣工時同時入居型の本社移転や、研究施設を併設するような高度な設備要件を伴うプロジェクトなど、同社のプロジェクトマネジメント力や技術力が不可欠な案件が増加した。公共分野においても、「外務省のオフィス改革に関するコンサルティング業務(2025年度分)」が売上に貢献した。さらに、(独)エネルギー・金属鉱物資源機構や(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構といった外郭団体からも執務環境整備プロジェクトを受注し、収益の押し上げに寄与した。利益面では、増収効果に加えて顧客からのインセンティブ収入※が増加したほか、生産性の向上が増益の主因となり、営業利益率は前期の10.0%から20.4%へと飛躍的に上昇した。都心部では2030年に向けて大型ビルの竣工ラッシュが続く見通しである。これにより、新築ビルへの大規模な移転プロジェクトのみならず、移転によって生じた既存ビルの空室への新たな入居需要も発生する。こうした背景から、2027年3月期においても同社を取り巻く良好なビジネス環境は継続するものと予想される。
※ オフィス移転の際に、顧客企業は旧オフィスの原状回復に要する費用を見積り、あらかじめ引当金として計上している。同社は、顧客企業と工事事業者の間に立って専門的な見地から適正なコストを算出する役割を担う。その結果、工事費用を見積額よりも低く抑えることができた場合に、その差額の一部をインセンティブ収入として受領する仕組みとなっている。2026年3月期は、好調なオフィス移転案件の増加を背景に、このインセンティブ収入が前期比で2倍へと急増した。本業務は多大な工数を必要としない性質を持つため、同社にとって収益性の高い事業となっている。
(2) CM事業
CM事業では、売上高が前期比5.3%減の3,077百万円、営業利益が同20.9%減の663百万円と6期ぶりの減収、7期ぶりの減益となった。庁舎の新設や公立学校の改築・長寿命化計画、さらには公共施設の改修といった公共案件は増加傾向にある。しかしその一方で、建設コストの高騰を背景に、建設投資の意思決定を一時的に見合わせる民間企業が増えたため、全体としてはわずかな減収となった。もっとも、電機メーカーや製薬企業の工場、データセンター、あるいは私立大学が保有する施設の新設や更新をめぐり、多様な引き合いや相談が寄せられている。こうした状況から、同社が提供するCMサービスに対する需要は、依然として根強いと言える。
第三者機関からの評価として、(一社)日本コンストラクション・マネジメント協会が主催する「CM選奨2026」において、同社がCM業務を行った「みのわサスティナブルエネルギーPGプロジェクト※」が特別賞を、「大阪大学(吹田)感染症総合教育研究拠点整備事業」と、「武田薬品工業無菌充填ライン実装プロジェクト」がCM選奨を受賞した。
※ 発注者である長野県箕輪町は、2022年に「ゼロカーボンシティ宣言」を表明し、環境省の地域脱炭素移行・再エネ推進交付金事業として本プロジェクトを推進した。この事業は役場庁舎周辺における再生可能エネルギーの整備を目的としたものであり、ソーラーカーポートやV2Xシステム(EV充電設備)、周辺の5施設を接続する自営線などによって構成されている。これにより、地域の脱炭素化と災害時におけるレジリエンスの強化を同時に実現することを目指した。年間の再エネ自給率目標として43%を掲げているが、2025年4月から9月の運用実績は50%に達し、目標を上回る成果を上げている。
(3) CREM事業
CREM事業では、売上高が前期比10.6%増の1,022百万円、営業利益で同9.6%増の221百万円と3期連続の増収増益となった。地方自治体や金融機関、そして大企業から受注した多拠点の施設を同時進行で管理するプロジェクトの業務量が拡大し、増収増益の主な要因となった。公共事業においては、複数の自治体から、公共施設や公立学校の将来を見据えた改築計画や複合化計画の検討といった案件を相次いで受注した。これらは施設整備事業の上流工程にあたる、既存保有施設の検証業務や長寿命化計画の策定支援業務、さらには小中学校などの空調設備を一斉に更新するプロジェクトなど、多岐にわたる。これらの業務を遂行するにあたり、同社は独自のシステム「MPS」を用いて資産情報を一元管理し、プロジェクトの効率化を推進した。なお、「MPS」の利用料については、原則としてDX支援事業の売上として計上している。
(4) DX支援事業
DX支援事業では、売上高が前期比11.3%増の452百万円を記録した一方、営業利益は同8.5%減の65百万円にとどまった。この減益はシステム開発費に伴う減価償却費の増加が主な要因であり、償却前営業利益ベースでは実質的な増益であったと推察される。売上面では、CREM事業において管理システム「MPS」の活用が浸透したことが増収に寄与した。現在、DX支援事業の売上の5割弱がCREM事業に関連するものとなっている。システム開発費が膨らんだ背景には「MPS」の機能拡充がある。同社では今後システム開発は内製化し、減価償却費負担は長期的に減少することから、CREM事業の受注増加等に伴い増益に転じることが見込まれる。
無借金経営で財務内容は良好
3. 財務状況と経営指標
2026年3月期末の資産合計は、前期末比511百万円増加の8,539百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では契約資産が546百万円減少した一方で、現金及び預金が697百万円、売掛金が208百万円増加した。固定資産では、大阪支店の移転増床を実施したことにより有形固定資産が44百万円増加したほか、ソフトウェア資産を中心に無形固定資産が49百万円増加した。
負債合計は、前期末比17百万円増加の2,447百万円となった。未払法人税等が62百万円、賞与引当金が70百万円それぞれ減少した一方で、退職給付引当金が121百万円増加した。純資産は同494百万円増加の6,091百万円となった。当期純利益の計上と配当金支出により利益剰余金が421百万円増加したほか、株式給付信託等による株式交付に伴い自己株式が49百万円減少(純資産の増加要因)した。
経営指標に目を向けると、経営の安全性を示す自己資本比率は71.0%と高い水準を維持している。有利子負債もないことから、財務内容は健全な状態にあると判断できる。今後の財務戦略については、この健全な財務基盤を堅持した上で、さらなる成長に向けた投資を進める方針である。あわせて、収益水準に応じた社員や株主への還元を実施していく方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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