ミラタップ Research Memo(5):収益基盤強化、商品開発力向上、住まいづくり支援拡充等により成長加速を目指す
■中長期の成長戦略
ミラタップ<3187>は2025年9月期以降を「飛躍期」と位置付け、国内事業の収益基盤強化、海外事業の成長拡大、新事業の創造、経営基盤の強化を重点テーマとして掲げている。これまで同社は住設・建材ECを中心に市場成長率を上回る成長を実現してきた。今後は社名変更を契機とした認知拡大、商品開発力の強化、住宅関連サービスの拡充、海外展開及びM&Aの活用により、売上高の成長を維持しながら利益率の改善を目指す方針である。
第1のポイントは国内EC事業の成長力を高めることである。同社は売上高を「顧客数×購入回数×購入単価」で捉え、マーケティング力、商品開発力、受け入れ体制の強化により各要素の引き上げを図る。広告・PR、SEO対策、ECサイトのUI・UX改善、CDP(Customer Data Platform)を活用した顧客データ分析、ショールームの拡充などを進める。社名変更後は認知獲得から購買行動までに一定の期間を要したが、新社名の認知度は旧社名の水準程度まで回復している。今後は認知した顧客の採用意向を高め、会員登録、カタログ請求、ショールーム来場、商談、購入へとつなげることが重要となる。
第2のポイントは商品力の強化である。同社はミニマルなデザイン性と「ワンプライス」の価格体系を強みとして、住宅設備・建築資材を幅広く展開している。中長期では非住宅、リフォーム・リノベーション領域に対応した商品の投入、クロスセルをねらえる新規カテゴリ商品の開発、ミリオーダーシリーズなど同社の強みを生かした商品開発を進める方針である。2026年9月期中間期には、オリジナル照明、ビルトイン冷蔵庫、フルセラミックキッチン、スラブタイルなどの商品展開を進めている。建材と家電の境界をなくす商品提案は、空間全体をコーディネートする同社の価値提案を拡げる施策と位置付けられる。
商品開発力を支える要素として、デザイン面での評価も重要である。同社は2026年3月に世界3大デザイン賞の1つである「iFデザイン賞2026」を3商品で受賞し、同賞の受賞は12年連続、累計受賞商品数は46商品となった。また「ワールドデザインインデックス」でも日本ランキングで19位(855社中)、アジアランキングで95位(7,899社中)に入っており、デザイン性は同社の商品競争力を支える「資産」となっている。今後もデザイン性の高い商品を継続的に投入することで価格だけに依存しない差別化を進め、住宅、非住宅、リフォーム・リノベーションの各領域で採用機会を拡げることが期待される。
第3のポイントは住まいづくり支援領域の拡大である。同社は住設・建材ECに加え、「ASOLIE」や「SUVACO」を活用して家づくりの検討段階から専門家探し、設計・施工、商品購入までを支援する体制を整えている。「ASOLIE」は加盟工務店と一体で運営する住宅のボランタリーチェーンであり、デザインコードを共有することで、デザイン性の高い住宅を全国で展開する取り組みである。「SUVACO」は家づくりを検討するユーザーと専門家をつなぐプラットフォームであり、EC事業との送客やマーケティング面での連携が見込まれる。今後は「ASOLIE」ネットワークの拡大、加盟店向けサービスの拡充、「SUVACO」を活用したマーケティング強化により、住宅領域単独での収益化とEC事業との相乗効果を高める方針である。
第4のポイントは、海外展開とM&Aによる成長機会の拡大である。海外では各国の市場環境に応じて現地法人や代理店を活用し、販売基盤の構築を進める。フィリピンでは新規販売代理店契約の締結やマニラ首都圏でのショールーム開設、台湾では新規ショールームの開設を行っており、既進出国を中心にブランド浸透を図る段階にある。国内事業だけでなく、海外で得た知見や事例を他国へ展開することができれば、同社のデザイン性や「ワンプライス」の価値提案をより広い市場で展開できる可能性がある。
M&Aについては、非連続の成長を実現する手段として案件探索を進める方針である。重視する領域は既存事業との相乗効果であり、シェア拡大、知財・ノウハウの獲得、人材獲得、IT・AI分野の構築スピード向上、顧客データや市場データの取得などをねらう。既存のEC基盤、商品開発力、デザイン性に外部の技術や顧客接点を組み合わせることで、バリューチェーン、製品群、ポートフォリオの拡充につなげる考えである。
また、経営基盤の強化も中長期成長を支える重要なテーマである。同社はリスク・コンプライアンス管理体制の整備、組織変更による適材適所の人員配置、人的資本戦略の推進を進めている。人的資本面では理念浸透、風土文化、採用、配置・異動、育成、報酬などにテーマを設定し、労働生産性、1人当たり売上高、女性管理職比率、研修費・時間などをKPIとしている。成長率を高める局面では、商品、販売、物流、システム、管理の各機能をつなぐ組織力が重要になるため、人材育成と組織運営の高度化は成長戦略の実行力を左右する要素となる。
加えて、AI活用も今後の生産性向上に向けた取り組みとして注目される。同社は全社員のAI活用レベルを可視化する共通指標であるmiratap AI score「mirAIs(ミライズ)」を導入し、AIネイティブな組織を目指している。AI社員による接客業務や、AIアバターを活用した決算説明動画の制作も始めており、顧客接点、業務効率化、情報開示の各領域で活用余地がある。AIを特定部門の効率化にとどめず、全社的な業務変革の手段として位置付けており、今後の販管費コントロールやサービス品質向上に寄与すると考えられる。
以上を踏まえると、同社の中長期成長戦略は国内EC事業の拡大を基盤として、商品カテゴリの拡充、住まいづくり支援領域の強化、海外展開、M&A、人的資本・AI活用などを組み合わせ、単品販売にとどまらない空間全体の提案力を高め、成長領域を段階的に拡げていく方針である。短期的には社名変更後に高まった認知を実購買へつなげる施策の精度が焦点となる。中長期ではデザイン性の高い商品を起点に住宅、非住宅、リフォーム・リノベーション、海外市場へと顧客接点を広げられるかが成長のカギとなろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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