澁澤倉庫 Research Memo(6):効率追求から価値創造へ転換し、Value Partnerへ
■澁澤倉庫<9304>の中期経営計画
1. 「Shibusawa 2030 ビジョン」
創業者・渋沢栄一の「正しい道理で追求した利益だけが永続し、社会を豊かにできる」という精神は、現在のサステナビリティに通じる考え方である。渋沢栄一の精神を受け継ぐ同社は、コーポレートスローガンを「永続する使命。」と掲げ、道徳と経済を両立することで社会の持続的成長に貢献し、あらゆるステークホルダーの未来を豊かにし、企業として成長することを目指している。また、「正しい道理で追求した利益だけが永続し、社会を豊かにできる」という精神を共有すべき価値観(Value)と位置付けるとともに、物流を超えた新たな価値創造により持続可能で豊かな社会の実現を支えることを果たすべき社会的使命(Mission)とした。そのうえで、目標とする姿(Vision)として、効率追求から価値創造へと転換することで、顧客の事業活動に新たな価値を生み出すValue Partnerとなることを目指している。同社はVision達成に向け、2021年に「Shibusawa 2030 ビジョン」を策定し、競争力の強化、サービス領域の拡大、持続的な企業価値向上のためのESG経営を進めることで、2031年3月期に営業収益100,000百万円、営業利益6,500百万円、経常利益7,000百万円、ROE10.0%以上を目指している。
強みを生かし、収益力の強化など成長戦略を実行
2. 「中期経営計画2026」と成長戦略
同社は、「Shibusawa 2030 ビジョン」実現に向けたセカンドステージとして、2024年5月に「中期経営計画2026」(2025年3月期~2027年3月期)を策定した。そのなかで、物流事業で(1)強みを生かした収益力の強化、(2)国内外物流ネットワークの拡充、(3)物流を越えた業域の拡大、(4)不動産事業では既存事業の収益性向上および物流事業とのシナジーによる物流不動産事業や不動産開発など新たな価値創造、(5)ESG(環境・社会・ガバナンス)における取り組み強化という5つの成長戦略を掲げた。そして成長戦略を着実に実行することで、2027年3月期に営業収益850億円、営業利益53億円、経常利益60億円、ROE7.0%以上を目指している。こうした成長戦略を着実に実行して企業価値を向上するには、財務戦略が不可欠である。キャッシュアロケーションでは、営業キャッシュフローの堅調な積み上げや政策保有株式の売却加速により、十分な成長原資を確保している。投資面では、必要な更新投資を進めつつ、横浜本牧倉庫の新設や危険物倉庫の国内3拠点への展開、DXやシステム開発投資、不動産におけるファンド活用投資など、将来に向けた成長投資を着実に実行してきた。M&Aによるキャッシュアウトが当初計画から減少したことで負債調達余力を残すなか、最終年度は成長投資への積極的な取り組みを継続した上で、創出されるキャッシュを株主還元へ手厚く配分し、さらなる還元強化へ繋げる方針である。
中期経営計画の目標が射程圏へ
3. 「中期経営計画2026」の進捗
中期経営計画2年目にあたる2026年3月期までに、成長戦略は着実に進捗したといえる。物流事業では、収益力の強化において、DX推進やロボティクスの積極導入、アパレルや雑貨のDC運営モデルの確立を進めることができた。ネットワークの拡充では、国内は千葉北飲料向けDCや危険物倉庫、横浜本牧定温倉庫の新設、松戸倉庫の拡張など、海外は上海で外高橋保税地区倉庫の拡張やバンコク拠点の新規開設、香港定温倉庫の増設によるコールドチェーン物流の確立など順調に進捗した。業域の拡大では、商社機能と複合一貫輸送サービスを併せ持つ日本食材の輸出業務や、リチウムイオンバッテリーフォークリフトの販売を開始した。
不動産事業では、バリューアップや私募ファンド投資による所有資産の収益基盤多様化、プロパティマネジメント業務の強化や物流不動産領域の拡大など物流事業とのシナジー、不動産専業業者との連携強化や売却を想定した開発の検討など、成長に向けた取り組みを順調に推進した。
ESGへの取り組みにおいては、環境配慮型拠点の新設や不動産事業における再生可能エネルギー導入率100%の達成、「DX認定」の取得、監査等委員会設置会社への移行などの多くの実績があった。
財務戦略では、収益機会の創出と新規案件の獲得に向けて、2年間で110億円ほどの成長投資を行った。M&Aは大きなシナジーが期待できる澁澤ワールドトランスポートの子会社化を実現した。また、早期にROE10%以上の目標を実現するための資本効率向上策を推進しており、政策保有株式の縮減についても2029年3月期までに対純資産比率20%以下にする目標の早期達成を目指し、取り組みを加速した。さらに、配当性向50%以上の累進配当と機動的な自己株式の取得を実施するなど株主還元の強化も進めた。
中期経営計画最終年度の2027年3月期には、物流事業において、収益力強化ではAIとロボティクスの融合、ネットワーク拡充では飲料向け習志野DCの本格稼働や海外でのフォワーディング事業強化、M&Aによる海外新拠点の確保、業域の拡大では外国人ドライバーや庫内作業員の活用支援などを進める計画である。不動産事業においては、既存事業の収益性向上、物流不動産の拡充、開発プロジェクトの強化を継続する予定である。財務戦略においては、物流事業と不動産事業に40億円~80億円の投資を実行する一方、政策保有株式の解消と株主還元の強化を加速する計画である。これらに加え、予想に織り込まれていない澁澤ワールドトランスポートの業績を加味すれば、中期経営計画の目標達成は十分射程圏にあると考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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