フジ日本 Research Memo(8):CHANGE 2028で攻めへ転換、2040年度経常益目標100億円への布石
■中長期の成長戦略
1. 長期ビジョン
フジ日本<2114>が掲げる長期ビジョン「NEXT VISION 2040」は、「世界で闘う企業へ ~海外市場と新たな領域の確立~」をスローガンに、精糖メーカーとしての長い歴史を礎としながら、世界的なフードサイエンスカンパニーへと飛躍することを目指す中長期的なグランドデザインである。持続可能な生物資源を活用した独自のフードサイエンス技術により新たな価値を創造し、「世界をパワフルにする企業」を目指している。
定量目標としては、2038年度において連結経常利益10,000百万円、ROE12%以上、海外比率40%以上、DOE4.0%の達成を掲げる。2025年度(2026年3月期)の経常利益が3,773百万円だったことを踏まえると、利益規模をおよそ2.7倍に拡大する高い目標設定となっており、非砂糖分野、とりわけ機能性素材事業の海外展開と新規事業の収益化が達成の主要ドライバーとなる。
目標最終年度に向けては、3つのフェーズで成長戦略を推進していく。第1次は2024年4月からの5ヶ年の現中期経営計画で「攻めへの転換」をテーマとし、後述する5つの重点テーマに取り組んでいる。2029年4月からの第2次は「多角化と成長」、2034年4月からの第3次では「世界市場への浸透」をテーマとし、スローガンの実現を目指していく。
2. 中期経営計画
現中期経営計画「CHANGE 2028」では、最終年度となる2028年度(2029年3月期)に売上高36,000百万円、経常利益3,600百万円以上、ROE9.0%以上、DOE3.5%以上、海外比率20%程度を目標としている。2026年3月期の利益水準は既に目標を達成しており、2027年3月期も近い水準を見込む。現時点では目標数値を据え置きつつ、経常利益3,600百万円を「ミニマム目標」として超過達成を目指す姿勢を示している。
3. 5つの重点テーマ
現中期経営計画では、「CHANGE」をコンセプトに、3つのI(International, Innovation, Investment)を推進軸として5つの重点テーマを掲げている。第1に、東南アジアでの事業拡大(International)として、タイ子会社をハブ拠点として位置付け、ASEAN市場における販売網の拡充と安定的な供給体制の整備を推進する。第2に、フードサイエンス領域での事業創出(Innovation)として、独自の酵素技術を中核に据え、健康機能性を付加した新素材の開発やBtoC商品の展開を加速させる。第3に、M&Aを軸とした成長投資(Investment)として、機動的に資本を配分することで事業拡大を図る。第4に、ビジョン実現に向けた強い組織づくりとして、組織改革及び人事制度の改定を断行するとともに、給与総額の4%を研修・福利厚生に充てる人的資本投資を推進し、組織能力の底上げを図る。第5に、IRの強化と株主還元として、DOE3.5%以上の維持を基本方針としつつ、株式分割による流動性向上と統合報告書の発行を通じた投資家との対話強化を実行する。
4. 成長戦略
同社は事業ポートフォリオを3層に整理したうえで成長戦略を展開している。国内精糖・不動産・フラワー事業を「基盤事業」として安定収益の創出を継続しつつ、糖類事業・イヌリンの海外販売強化及びキャッサバでん粉製造販売事業などへの投資を「次世代事業」として推進する。また、国内イヌリンの商品開発・多角化を「成長牽引事業」として育成する方針である。これら3つのI(International・Innovation・Investment)を推進軸として具体化しており、以下にその取り組みを示す。
(1) 東南アジアでの事業拡大(International)
成長戦略の第1の柱として位置付けているのが、東南アジアを中心とした海外市場の開拓である。連結子会社であるFuji Nihon (Thailand)を地域統括会社として機能強化し、財務・地域統括・事業開発の各機能を同拠点に集約することで、グループ全体の経営効率を高める。また、イヌリンの世界的な需要拡大に対応するため、タイ工場において2027年下期の本格稼働開始を目指し、製造能力を約1.5倍に拡大する設備投資を進めている。これらの取り組みにより、ASEAN市場における販売網の拡充と安定的な供給体制の整備を推進する。
(2) フードサイエンス領域での事業創出(Innovation)
第2の柱は、フードサイエンス領域における新規事業の創出である。従来の受託加工(OEM)中心のビジネスモデルからの転換を図るべく、キャッサバでん粉の製造販売事業に参入した。独自の酵素技術をでん粉分野に応用することで、コモディティ化を回避した高付加価値商品の開発を目指す。また、digzyme及びサイキンソーへの資本参画を通じ、バイオインフォマティクス(生命情報科学)を活用した新たな健康ソリューションの創出にも取り組む。イヌリンは一般食品に加えペットフードなど周辺分野への展開余地もあり、B to C事業の多角化を通じてブランドの確立を図る。加えて、塩水港精糖とのアライアンスでは、事業基盤の強化に加え、中長期的には機能性素材・フードサイエンス領域でのシナジー創出を通じた競争力強化を目指す。
(3) M&Aを軸とした成長投資(Investment)
第3の柱は、M&Aを軸とした成長投資である。現中期経営計画の5ヶ年において合計180億円の投融資枠を設定しており、2026年3月時点で約6割まで資本投下の決定並びに実行をしている。今後も機能性素材事業の海外展開及びフラワー事業の周辺分野を中心に、投資案件の発掘を進める。
(4) 組織基盤の整備
これらの成長戦略を支える組織基盤の整備も並行して進めている。静岡県島田市において、次世代のマザー工場及び研究開発拠点として「島田事業所」の新設を予定している。また、給与総額の4%を研修・福利厚生に投資する人的資本経営を推進し、競争力強化を図っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉俊輔)
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