ネットイヤー Research Memo(3):収益構造改革により、2026年3月期は3期ぶりの増収増益
■ネットイヤーグループ<3622>の業績動向
1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の業績は、売上高で前期比8.7%増の3,672百万円、営業利益で同301.6%増の331百万円、経常利益で同306.2%増の337百万円、当期純利益で173百万円(前期は33百万円の損失)と3期ぶりの増収増益に転じた。新しい経営体制下で2024年夏以降に取り組んできた収益構造改革の成果が顕在化したこと、また2025年春に社内外で「生成AI全振り宣言」を発表し、これまでのUX/CXの向上を基軸としたデジタルマーケティング支援サービスだけでなく、生成AI技術の活用提案を行うなど、顧客ニーズに沿った営業活動を推進したことが好業績につながった。期初計画に対して、売上高、各利益ともに超過達成したほか、2025年10月に発表した修正計画に対しても営業利益、経常利益は上回って着地した。営業利益率は前期の2.4%から9.0%と大きく上昇したが、これは2008年3月期に10.4%を達成して以来の高い水準であり、収益構造が利益の出る体質に転換したものと弊社では評価している。
売上高について見ると、NTTデータを中心としたNTTグループ向けが大型プロジェクトの終了等により前期比3割減の約7億円と減収基調が続いたほか、サービス業向けが同横ばいの約6億円にとどまった一方で、小売・飲食業向けが主要顧客となるスターバックスやモスフードサービス向けを中心に同1割増の約12億円と伸長したほか、不動産業などその他業界向けが新規顧客の獲得が進んだこともあって同7割増の約11億円と大幅増となったことが増収要因である。CXの向上を基軸としたCRM基盤システムの構築プロジェクトなどフルファネルマーケティング※1支援案件が好調に推移したほか、ゼロクリック検索の普及による企業Webサイトへの訪問者数減少に対処するための、AIO※2対策などのニーズが増加した。また、前期は受注見積もりの段階で顧客先の要求を満たせず、失注するケースが散見されたが、こうした失注例を分析し、付加価値を生む提案力の強化に努めたことで、コンペでの受注率も上昇した。特に、生成AIの技術進化が予想を上回るペースで進むなか、マーケティング支援領域においても下期以降は提案内容のなかに生成AI利活用を含めることがほぼ必須の状況となってきたようだ。
※1 消費者が商品やサービスを認知し、購入し、その後リピート(ロイヤリティ化)するまでの一連のプロセスを包括的にとらえる考え方で、顧客の行動を「認知」「興味・関心」「比較・検討」「行動」の4つの段階に分け、それぞれに適したマーケティング施策を実施することでLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の最大化を目指す。
※2 AI Optimization(AI最適化)の略で、生成AIが回答を作成する際に、自社Webサイトのコンテンツが引用・要約されやすくなるよう、コンテンツの内容や見せ方を最適化する施策。
売上原価率は75.8%と前期比で4.0ポイント改善した。プロジェクト管理を強化し、外注費の抑制と要員の最適配置による稼働率向上により、プロジェクト当たりの収益性が改善した。ここ数年は外注費を抑制しても労務費率が上昇するなど原価率の改善が進まなかったが、2026年3月期は増収に転じたこともあって、外注費率だけでなく労務費率も低下した。外注費と労務費を合計した人件費関連の対売上比率で見ると、前期比5.4ポイント減の67.3%となるなど4期ぶりに60%台に低下した。同社では外注費も含めた人件費率については、高付加価値案件の獲得や人員のスキルアップに取り組むことで、さらに引き下げられる余地があると見ている。金額ベースでは外注費が同横ばいの1,337百万円、労務費が同1.3%増の1,133百万円となった。なお、その他の比率が8.6%と同1.5ポイント上昇したが、主にソフト使用料や支払手数料の増加による。同社の間接部門人員の構成比が低下したことで、全社で使用するソフト使用料等の売上原価への配分比率が上昇した影響が大きい。
販管費は同45百万円減少の556百万円となった。生成AIツールの積極活用による業務効率の向上や、組織の見直しによる柔軟な人員配置が可能となったことで人件費が減少したほか、各種経費の抑制に取り組んだことも減少要因である。期末の従業員数(派遣社員含む)は間接部門のスリム化が進んだことで、前期末比20名減の188名となった。そのほか、特別損失として中長期的な企業価値向上を目的とした財務戦略検討のためのコンサルティング費用85百万円を計上したが、同費用は一時的なものである。
無借金経営で財務内容は良好、手元資金は成長投資と株主還元に充当
2. 財務状況と経営指標
2026年3月期末の財務状況は、資産合計が前期末比292百万円増加の3,428百万円となった。主な増減要因として、流動資産では現金及び預金が59百万円、売掛金が208百万円それぞれ増加した。固定資産では有形固定資産と無形固定資産がそれぞれ2百万円減少した一方で、繰延税金資産が14百万円増加したほか敷金及び保証金が4百万円増加した。
負債合計は前期末比160百万円増加の654百万円となった。未払法人税等及び未払消費税等が100百万円増加したほか未払金が34百万円、未払費用が20百万円増加した。また、純資産合計は同131百万円増加の2,773百万円となった。当期純利益173百万円の計上と配当金支出41百万円により、利益剰余金が増加した。
経営指標については、自己資本比率が80.9%と高水準を維持しており、無借金経営で現金及び預金が2,247百万円と事業規模からすると問題のない水準を確保していることから、財務内容は健全な状態にあると判断できる。手元資金については、M&A・アライアンスも含めた成長投資と株主還元に充当する方針だ。M&A・アライアンスの対象は、生成AIをコア技術とするスタートアップ企業を想定している。M&A戦略の一例として、まずは協業からスタートし、シナジーが見込めると判断した場合に出資を行い、最終的に子会社化するといったケースが想定される。協業については既に複数社と実施している。生成AIの技術進歩が急速に進む中で、M&A・アライアンス戦略の積極的な推進が今後の同社の成長性を左右すると見られるだけに、今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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