一正蒲 Research Memo(2):水産練製品・惣菜事業ときのこ事業を展開する食品メーカー
1. 会社概要
一正蒲鉾<2904>は、主力商品のカニかまを中心とした水産練製品を製造・販売する水産練製品・惣菜事業と、まいたけを生産・販売するきのこ事業を展開する食品メーカーである。同社グループは、運送・倉庫事業を担う100%子会社の(株)イチマサ冷蔵と、インドネシアで水産練製品を製造・販売する75%子会社の合弁会社PT. KML ICHIMASA FOODS(以下、KIF)の2社で構成されている。
2025年6月期の売上構成比は、主力の水産練製品・惣菜事業が88.1%を占める。同事業は水産練製品業界で第2位のシェアを占めており、特にカニかま商品では国内第1位のメーカーシェア※を確保しており、スーパーマーケットやドラッグストアなどの量販店向けを中心に製造・販売している。このほか、きのこ事業(まいたけ生産量では国内第3位)は売上高の10.9%、運送・倉庫事業は1.0%を占める。
※ 日経POS情報(2024年4月〜2025年3月カニ風味かまぼこカテゴリー)による。
創業以来「人生はやまびこである」という創業者の言葉を社是とし、「すべてはお客さまのために」を社訓とする。「自分の周りの方々すべてを“お客さま”」として、「誠実」「謙虚」「感謝」の心で顧客の期待や信頼に応える姿勢が取引先との信頼関係の構築につながっており、同社の競争力の源泉となっている。また、冷凍すり身の採用、大量生産型設備への移行に伴う新技術の導入、レトルト製法の導入、まいたけ市場への参入など、従来のかまぼこ製造にとどまらない新しい技術や事業にも積極的に挑戦している。販売網は本社のある新潟県から全国へ、生産拠点も新潟県から北海道や関西へ展開し、現在は全国に販売拠点11ヶ所、生産拠点8ヶ所となっている。これらの「攻めの一正」という姿勢と、取引先のスーパーなど量販店の全国統一チェーンオペレーションに対応できる営業・生産体制が同社の大きな強みとなっている。
2. 沿革
1965年に野崎正平(のざき しょうへい)氏が「蒲鉾業界でも近代的な経営の導入が必要である。そのためには、職人の勘による製造から、科学的な技術に基づいた蒲鉾生産を行わなければならない」と、家業であった野崎蒲鉾(株)より独立して創業した。1966年にはリテーナ製法※による生産を開始したほか、1967年には業界に先駆けて原料に冷凍すり身を採用した。これにより品質の安定化と製造工程の合理化を実現し、全国への販売網拡大の基礎を築いた。生産拠点についても、1976年の北海道小樽工場、1979年の滋賀守山工場の新設により、全国規模の配荷体制を整備した。
※ すり身をフィルムで包んでから型枠(リテーナ)に入れて加熱する手法。品質・保存性に優れ、廉価で提供可能。
商品開発面では、1974年に初代カニかま「かに太郎」、1979年にロングセラーとなる「オホーツク」を発売し、「カニかまの一正」としての地位を確立した。1980年代には食の洋風化を捉えた魚肉ハンバーグ「バーグレデイ」や、レトルト技術を活用した「調理済みおでん」を発売した。1981年に売上高が100億円、1989年には200億円を超え、日本証券業協会店頭売買銘柄として株式を店頭公開した。
1996年には健康意識の高まりを背景に、現 新潟県阿賀野市に栽培センターを新設してきのこ事業に参入した。2005年にはバイオ研究室を開設し、まいたけの新株・新品種の開発や、まいたけのエキスを抽出した機能性サプリメントなど新領域展開の研究・開発を進めた。その後、2002年にはスナック菓子「カリッこいわし」、2008年には現在の主力商品カニかま「サラダスティック」を発売し、商品ラインナップを拡充している。
2012年に同社の売上高は300億円を超え、2014年には東京証券取引所(以下、東証)市場第二部への市場変更を経て、同年に同市場第一部に銘柄指定となった。2022年4月には東証の市場区分の見直しによりプライム市場へ移行したが、2023年4月の東証の規則改正に伴い2023年10月にスタンダード市場へ移行した。
2015年の創業50周年を機に、インドネシアに合弁会社KIFを設立し海外事業に本格参入した。2016年発売の「うなる美味しさ うな次郎」は、2020年に独自技術を用いて、うなぎエキスを使用せずに風味を再現する仕様へと変更した。これにより、希少資源に依存しない「うなぎフリー」の商品となった。2021年からは代替水産製品の総称として“ネクストシーフード”の展開を開始し、業務用商品「ネクストシーフード うに風味」を発売したほか、2024年には「ネクストシーフード 明太子風味」を発売した。2023年には「サラダスティック」の専用工場として本社第二工場を新設した。2025年1月には創業60周年を迎え、今後の海外展開を加速するために2024年12月にKIFを連結子会社化した。
3. 全国の販売・生産拠点
同社は販売網として、東京・大阪・名古屋の主要都市に支社を、そのほか地域に支店・営業所の計11拠点を設置している。各地域の市場実情に合わせ、専任営業担当が取引先とのコミュニケーションを図る体制である。生産拠点は、新潟県に5工場、北海道小樽市に1工場、滋賀県守山市に1工場、新潟県にまいたけ栽培センター1ヶ所と計8拠点体制となっている。2023年4月に本格稼働した本社第二工場は、カニかまの主力商品「サラダスティック」の専用工場として複数工場での生産を集約し、「サラダスティック」の全社生産量の20%増強を実現した。市場シェア第1位の商品に対して集中投資を行い、競争優位性をさらに強固にする戦略を推進している。
4. 経営環境
水産練製品は1975年には約100万トンを生産していたが、1977年の200海里ショック(水域制限)を契機に、以降生産量が漸減してきているのが大まかな潮流だ。2024年の生産量は408千トンと2022年比で13.4%減少しており、海洋環境の変化に伴う漁業生産量の低下、原料価格の上昇などによる経営規模の小さい練製品業界の経営体力の低下といった要因が複合的に影響している。1世帯当たり(2人以上の世帯)の年間消費支出金額も1992年をピークに、2002年に10,000円を割り漸減傾向にあったが、直近では2018年の8,233円を底に2024年には9,307円まで緩やかに増加してきている。この背景には、水産練製品の高い栄養価と手軽さの再認知も影響していると見られ、ヘルシー食品としての位置付けから、再評価の機運が見られる。なお、風味かまぼことして登場したカニかまは、業界でもロングランを続けている。業界全体としても、料理時間の短縮、手軽さを求める消費者の行動、健康・安全・安心を求める消費者の嗜好、電化製品の進化など生活様式の変化などにマッチした新しい商品開発によるさらなる需要喚起に取り組んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 若杉 孝)
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