紀文食品 Research Memo(4):コスト上昇や海外の低迷により減益
1. 2026年3月期第3四半期業績の概要
2026年3月期第3四半期の業績は、売上高が84,713百万円(前年同期比2.4%増)、営業利益が2,656百万円(同30.6%減)、経常利益が2,244百万円(同38.2%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益が901百万円(同63.5%減)となった。主力商品のスリミ製品・惣菜が冬季におでん・鍋物などに向けての需要が高まること、12月におせち料理関連商品の売上が集中することから、同社の収益は第3四半期に偏重する傾向があるが、その第3四半期もやや弱かったため、第2四半期までの厳しい業績をカバーできなかった。
日本経済は、雇用や所得環境の改善により景気は緩やかな回復が見られた一方、米国の通商政策の影響や物価上昇による消費者マインドの下振れなどが懸念され、先行きに対する不透明感が続いた。このような環境下、同社は中期経営計画の目標である「持続的に成長できる強固な企業体質の構築」の達成に向け、引き続き既存事業領域における確実な成長と事業領域の拡大により成長を図る「成長戦略の推進と新たな価値創造」に取り組んだ。また、成長を促進させる収益構造に向けた「資本効率の改善」と、今後の成長を支える「経営基盤の整備」にも注力した。
この結果、売上面では、堅調に推移した国内食品事業とチルド物流が引き続き好調だった食品関連事業が、インフレや競争激化で苦戦した海外食品事業を補うことができた。利益面では、増収(価格改定効果を除く)、国内食品事業小売部門と食品関連事業での価格改定、工場の原価改善・合理化といったプラス効果に対し、主要原材料すり身から野菜・鶏卵など副原料、資材まで原価全体に及ぶ価格高騰、海外食品事業の減収によるタイ工場の稼働率低下、タイ・バーツ高(交易条件の悪化)、相対的に利益率の低い国内食品事業商事部門の売上高構成比上昇と高採算の海外食品事業の売上高構成比の下落によるミックス変化といったマイナス影響が上回り、売上総利益率が低下した。販管費は配送など販売変動費、昇給など人件費、プロモーション促進による広告宣伝費と販売促進費が増加したが、全般的に抑制を進めたことで販管費率は若干改善した。この結果、売上総利益率の低下を反映して営業利益が減益となり、後述するように通期の利益見通しを下方修正することになったが、これにより税効果費用が増加し、親会社株主に帰属する四半期純利益の減益幅が広がった。
国内外食品事業が苦戦、物流事業は好調
2. セグメント別の業績動向
セグメント別の業績は、国内食品事業が売上高60,502百万円(前年同期比2.2%増)、セグメント利益1,007百万円(同55.8%減)、海外食品事業が売上高7,966百万円(同4.8%減)、セグメント利益319百万円(同51.8%減)、食品関連事業が売上高16,245百万円(同7.1%増)、セグメント利益1,261百万円(同29.7%増)となった。利益面で食品関連事業は好調だったが、主力の国内食品事業と海外食品事業の苦戦をカバーできなかった。
国内食品事業は、小売部門、商事部門いずれも売上高が前年同期比で伸長した。小売部門では様々なコスト増に対応するため、2025年3月に玉子加工品や中華まんじゅうの一部で価格改定、同年9月には6割程度の製品について5%~15%の価格改定と規格変更を実施、正月商品も価格改定を行った。この結果、カニカマや竹輪、はんぺん、玉子加工品といったブランド力のあるカテゴリーは販売数量の増加を伴って売上高を伸ばした。しかし、価格感応度の高いさつま揚げなどその他のスリミ製品や中華惣菜は、競争環境が厳しく節約志向が顕著となるなか、販売数量を減少させ売上高も落とした。このため、下期の秋冬商戦に入って売上高に減速感が生じることとなった。一方、正月商戦でウェブサイトと店頭を連携した需要促進策やSNSでの情報発信のほか、年末に増える子連れ客をターゲットに、正月文化の次世代への継承も意図したPOPや子育て雑誌と店頭の連動などプロモーション活動を積極的に展開したことで、蒲鉾や伊達巻などの正月商品が数量増を伴って売上高を増やした。
プロモーション活動については、正月商戦以外でも国連WFPのレッドカップキャンペーンへの協賛など積極化、バータイプ魚肉練り製品「SURIMI BAR」ではワンハンドでプロテインを摂取できる特徴を訴求してヒットにつなげた。商事部門では、食品メーカーや外食産業に向けた、米糠油や大豆、胡麻などニッチだが高いシェアの農水産品が好調に推移、特にインバウンド需要の拡大に伴って高まる外食産業での高品質ニーズを捉えた。利益面では、主原料の冷凍すり身に加えてタマネギなどの副原料や資材の価格も上昇したためコスト負担が増加、販売数量の減少もあって価格改定で補うことができなかった。
海外食品事業では、依然価格競争が厳しい米国で、関税政策がいったん決着したため関税分を一部価格に転嫁して受注を促進したが、同社の品質を評価する顧客が動いたことで増収に転じ、回復の兆しを見せた。中国では、市場環境の変化に対応して地方の卸など新規取引先の開拓を進めたことで、大幅増収となった。アジアや欧州では、現地小売店に対しておでんセットや日本食材の提案を強化した。しかし、一連の通商政策に伴う混乱、インフレなどによる食料品消費の不振、海外カニカマメーカーとの価格競争激化、タイ・バーツ高による輸出競争力低下などにより、カニカマなど主力のスリミ製品の販売減少が続き、海外事業全体で減収となった。利益面では、原材料費の上昇に加え、急速なタイ・バーツ高による輸出競争力の低下、高採算の自社製品の販売減少、販売減少に伴うタイ工場の稼働率低下により減益となった。
食品関連事業では、主力の物流事業が、チルド物流の強みを生かした新規顧客の獲得や既存顧客の物量増、配送エリアの拡大推進、加えて料金改定のスムーズな進行もあって2ケタ増収となった。特に新規顧客では大手メーカーの製品物流が増え、既存顧客ではコンビニやインバウンド需要で好調な外食産業向けの物量が増加した。情報事業でも、工場内安全や品質衛生検査など蓄積してきたノウハウをソリューションとしてチルド物流とセットで提供し、増収となった。なお、同社チルド物流への評価は引き続き高く、グループ外売上高が年々増加、2026年3月期第3四半期の食品関連事業に占める構成比が77.6%(前年同期は76.8%)となった。利益面では、協力会社を含めて人件費が増加したが、物量増や料金改定の着実な浸透、共同配送の積載率向上、配送コースの見直し、構内作業の自働化推進などにより増益となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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