メタリアル Research Memo(3):AI開発技術力を背景に、業界特化戦略を展開
1. 事業内容
同社グループの事業構成はAI事業、HT事業、メタバース事業、及びAI/MV Marketing事業の4セグメント体制である。AI/MV Marketing事業は、2024年12月のSTUDIO55の子会社化を契機に、2026年2月期より新設した。売上構成比はAI事業が63.6%、HT事業が16.2%、メタバース事業が2.8%、AI/MV Marketing事業が17.4%となっている(2026年2月期第3四半期)。
(1) AI事業
AI事業は主にロゼッタが運営しており、「業種分野特化」「垂直統合型エージェントAI」「日本企業のグローバル対応」を軸としたAIサービスを提供している。また、本事業は「人類を単純作業の苦役的労働から解放する」というミッションを掲げ、日本企業の国際競争力向上を支援する役割を担っている。
AIサービスは、「専門文書AI」と「事業創出AI」の2領域で展開している。「専門文書AI」は、国内最大級のAI翻訳事業で培った6,000社以上の顧客基盤と技術力を背景に、製薬、製造、法務・特許、金融などの高度な専門性が求められる分野における文書作成・活用を支援する事業である。業界特化型翻訳AI「T-4OO(ティーフォーオーオー)」、製薬業界の文書作成AI「ラクヤクAI」、プレスリリースの自動生成・評価を行う「広報AI」などを提供している。「事業創出AI」は、生成AIを含む複数のAIサービスを統合し、企業の業務変革や新規事業創出を支援する事業である。(株)東洋経済新報社と共同開発した投資分析支援AI「四季報AI」や、(株)デジタルハーツと共同開発したゲーム特化型AI翻訳エンジン「ella」などを展開している。
(2) HT事業
HT事業は、グローヴァを中心に、翻訳、通訳、語学教育など人手による業務受託サービスを展開している。グループ内では、安定的な収益を創出するキャッシュカウ事業として位置付けられている。翻訳受託を通じて蓄積した専門ノウハウや顧客基盤は、AI事業における学習データの蓄積や製品開発へのフィードバックにも活用されている。今後も業績動向を注視しつつ、効率性を重視した運営を継続する方針である。
(3) メタバース事業
メタバース事業は(株)MATRIX及びSTUDIO55によって運営されており、AI、AR、VR、高速大容量通信、超高精細映像、映像配信ソリューション、ウェアラブルデバイス、ロボット、Human Augmentation(人間拡張)などの先端技術を統合したサービスを提供している。場所や時間に制約されないコミュニケーションや活動を可能とし、世界中の人々が「いつでも、どこでも、誰とでも」交流し、生活や仕事を行えるデジタル空間の実現を目指している。現在は建築デザイン市場向けのソリューション提供に注力しており、スマートフォンで撮影した動画からデジタルツインを自動生成するGaussian Splatting技術※を中核とし、設計・可視化プロセスの高度化を支援している。
※ 画像・動画から高精度な3D空間を再構成する技術。
(4) AI/MV Marketing事業
AI/MV Marketing事業は、専門的な技能や顧客基盤を持つ企業をM&Aにより取得し、同社グループのAI及びメタバース技術と融合させることで成長加速を図る事業である。現在は、STUDIO55の既存顧客基盤を活用し、買収企業の現場を実証・検証の場として活用して業種特化型の垂直統合エージェントAIを創出・高度化する役割を担っている。本セグメントの追加により、特定業種に深く根ざした高付加価値なAIソリューションの提供体制を構築している。
2. 特長と強み
(1) 蓄積された知見に基づくAI開発力とハイブリッド技術
同社の強みは、20年以上にわたり蓄積してきた翻訳データ資産や業務知見を基盤に、生成AIと従来型プログラムを組み合わせた独自のハイブリッド技術を構築している点にある。生成AIは高い創造性を持つ一方で正確性やルール遵守に課題を残すが、同社は翻訳資産(用語集、翻訳メモリ、ガイドライン)と従来型プログラムによる制御を組み合わせる技術力により、品質を補完している。
これまでも2006年に統計翻訳※を導入し、2017年には翻訳精度95%を実現した「T-4OO」を商用化するなど、不可能とされてきた技術課題に継続的に挑戦し、成果を上げてきた。こうした先進的な技術開発の積み重ねが、「人手修正が不要な翻訳AI」という現在のビジョンを支える技術的優位性の中核となっている。
※ インターネットデータを活用した翻訳のことで、当時はルールベース翻訳が全盛期であったなか、画期的な手法であった。
(2) 高度な専門性を前提とした業界特化戦略
同社は、高度な専門性が求められる業界・業務に特化することで差別化を図っている。「人手の修正が不要な翻訳AI」「製薬特化型エージェントAI」「建築特化型エージェントAI」「事業創出全自動AI」の4つを重点領域として定め、経営資源を集中させている。法規制への対応や専門用語の正確性が求められる分野では汎用AIによる対応は困難であり、競合は限定される。同社はロイヤル顧客の業務課題に深く入り込む形でソリューションを提供することで、他社による代替が困難なポジションを確立しており、6,000社以上の導入実績に裏付けられた強固な顧客基盤を構築している。
(3) スピードと実行力に裏付けられた経営力
同社は、巨大な生成AI市場及びメタバース市場に対し、先行投資を厭わない「Zero to One」の発想と、仮説検証を高速で繰り返す「Fail Fast」を経営の中核に据えてきた。創業者のリーダーシップの下、迅速な意思決定が可能な経営体制を再構築し、高い実行力を伴う改革を進めた結果、業績は回復基調に転じている。こうした経営体制の刷新により、人手や組織規模に依存しない成長モデルへの転換を進め、指数関数的な事業成長を目指す基盤を整えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)
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