キャスター Research Memo(4):サービス拡大等による稼働社数とARPUの増加で業績向上
1. 成長モデル
キャスター<9331>の売上高(BPaaS事業)は、単純化すれば稼働社数とARPU(顧客平均単価)の掛け算に分解されるため、それぞれを増やすことが売上成長につながる。ここ数年の推移を見ても、1) 稼働社数と2) ARPUの増加により同社は成長してきた※。では、それぞれを増やすためのポイントは何か。1) 稼働社数の増加には、新規獲得と解約率の改善が必要となる。新規獲得に向けては効果的な広告投資による認知度向上に加え、顧客ニーズに合わせたサービスの拡大によって顧客基盤を積みあげてきた。また、解約率は4%前後の水準で安定しているが、契約期間が長い顧客ほど通常業務運営に同社サービスを組み込んでいることから、今後さらに改善する余地がある。一方、2) ARPUの増加は、単価の高いサービスへのシフト(アップセル)や複数サービスの利用(クロスセル)が最大の要因となっている。同社では、顧客ニーズに合わせて既存事業からより専門性の高い(単価の高い)サービスを生み出すことで、稼働社数とARPUの両方の増加につなげてきた。
※ 2021年8月末と2025年8月末の比較では、稼働社数は826社→1,316社に増加し、ARPUについても248千円→280千円と、足元でやや軟調も趨勢としては増加傾向をたどっている。
2. 収益構造
売上総利益率は、独自システムによるフロント業務の効率化などにより、概ね35%~40%の高い水準で推移してきた。創業来営業損失が続いてきたのは、成長基盤の強化に向けた先行費用を積極投入してきたためである。特に、顧客獲得のための広告投資やサービスの拡大に係る費用(システム開発や人的投資など)が利益を圧迫してきた。もっとも、売上高の伸びとともに販管費率は低下傾向にあり、2023年8月期には黒字化を実現した。今後も成長加速に向けた広告投資やAI技術の活用、専門人材の確保など一定の先行費用が想定されるが、そもそも販管費における固定費部分が大きい収益構造であることから、損益分岐点を超えれば売上高の伸びとともに利益成長(利益率改善)が加速する可能性が高い。
なお、広告投資についてはCAC※1やユニットエコノミクス※2といった指標により効果を測定している。直近のCACは30万円前後である一方、ユニットエコノミクスは500%~700%(適正水準)以上であることから、高いパフォーマンスを生み出していることが確認できる。
※1 顧客1社当たりの獲得にかかった費用。
※2 LTV(顧客生涯価値)をCACで除した指標。顧客を獲得する費用に対して、顧客が将来にわたってもたらす収益を測ったもの。
3. 業界ポジション
人材サービスを展開する企業は、人材紹介や派遣、BPO、マッチング型クラウドソーシングなど様々な業態が存在するが、同社は、依頼される業務の規模や質、サービス提供の仕組みなどの面で、どこにも属さない特異なポジションを確立しており、その点を理解することが同社の優位性や成長性を判断するうえで大きなポイントとなる。すなわち、一定のスキルや経験を持つ人的リソースを、タスク単位(小ロット)・月額(定価)で活用できるプラットフォームは、人手不足に悩む中小企業に対してこれまでになかった価値(選択肢)を提供しており、それが稼働社数の拡大やロイヤリティの高さ(契約期間の長い顧客比率の増加傾向)につながっている。今後は、AIを戦略の軸に据え、ヒトとAIの融合による新たな市場を切り開き、さらに最前線のポジションへと進化する戦略である。
4. 差別化のポイント
同社の差別化のポイントは、1) 採用力、2) ソーシングエリア、3) 独自のインフラ・運用の構築の3つであるが、それぞれがフルリモートワークならではの強みをもっている。
1) 採用力の高さ
社会全体では採用難と言われているが、フルリモートワークは就業者にとって魅力があり、高い採用力に結び付いている。リモートワークの採用においては業界でも注目される存在となっている。コロナ禍をきっかけとしてリモートワークが一気に普及し、コロナ禍の収束後もリモートワークを継続する傾向にある。配偶者の転勤(地方や海外)や子育て、介護などの事情があっても、場所や時間の制約を受けずに自らのキャリアを継続できる点が大きなメリットと認識されている。採用力の高さは、人材の確保が最大のボトルネックである人材サービス業界において、大きな差別化要因と言える。
2) ソーシングエリアの広さ
地理的な制約を受けずに、全国47都道府県の人材を活用できるところも大きなポイントである。さらに言えば、エンジニアのように、日本国内では獲得しづらい人材でも、グローバル視点でのソーシングは需給ミスマッチの解消にもつながる。
3) 独自インフラ・運用の構築
同社は、2014年の創業以来、自らの企業経営をフルリモートワークで実践するとともに、事業としての各サービスもフルリモートで提供しており、それらを実現するための独自インフラと運用方法を構築してきた。1,000名近い人がリモートワーク環境で仕事をするのは、世界的にも例がない。採用メディアの運営やセキュリティ管理フロー、ディレクションシステム、ワーカー管理システム、業務マッチングプラットフォームなどがあるが、それらが一体となってフルリモートワークの事業運営を実現しており、他社が簡単には真似できない価値提供を可能としている。また、今後はAI活用により、運用面での圧倒的な効率化や生産性の高さを実現していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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