メタリアル Research Memo(7):4つの特化型AI領域に資源集中。2027年2月期に完全自動翻訳を上市予定
■メタリアル<6182>の成長戦略
2. 成長戦略
同社は構造改革を完了し、「破壊と創造」の「破壊」フェーズを終えた。今後は「創造」フェーズに本格移行し、成長可能性の高い4つの戦略領域への経営資源集中と、M&Aによるインオーガニック成長の実現を両輪に据えた成長シナリオを描いている。
4つの戦略領域とは、(1) 翻訳特化エージェンティックAI、(2) 製薬特化エージェンティックAI、(3) 建築特化エージェンティックAI、(4) 事業創出エージェンティックAIである。いずれも「特定業種・特定業務に深く入り込み、AIによって業務プロセスを垂直統合する」という共通の思想に基づいており、汎用AIとの価格競争に陥らない差別化ポジションの確立をねらう。6,000社以上の顧客基盤を持つ産業翻訳AIのノウハウと実績を基盤として、製薬・建築・事業創出の各分野に展開を広げる方針である。
(1) 翻訳特化エージェンティックAI
翻訳特化エージェンティックAI(オートノマスAI)は、ロゼッタを中心に推進し、最も短期的なインパクトが期待される。2025年12月には「人手修正不要な翻訳AIを創る」という新ビジョンを発表し、翻訳担当者の役割を「全訳文の確認・修正」から「AIが指摘した例外箇所のみの確認」へと抜本的な転換を目指している。この新ビジョン実現に向けた完全自動翻訳のリリースは、早ければ2026年5月、遅くとも2026年10月ごろとし、提案力強化や顧客当たりの利用単価の引き上げにつなげ、収益拡大を目指す方針である。LLM自体の精度向上と複数LLMを組み合わせる仕組みの改善によって、当初想定から大幅に前倒しする。
また、2026年4月リリースの超高精度(熟考)モードの実現により、業務モデルそのものの転換が始まっている。人間が担う領域を「例外対応」に絞ることで全体の生産性を高める。完全自動翻訳も同じ原理であり、顧客企業の翻訳業務の構造を変えることで、ロゼッタの提供価値を「翻訳ツール」から「業務インフラ」へと格上げする。
完全自動翻訳が実用化された際の売上成長ドライバーは複数存在する。まず、現在の顧客6,000社超への導入率向上・契約規模の拡大(ARPU改善)が期待される。次に、これまで翻訳精度の不満から導入を見送っていた新規顧客層の獲得機会が広がる。さらに、英語以外の多言語展開による市場地理的な拡大も視野に入る。同社は完全自動翻訳の実現をもって、国内産業翻訳市場における「代替不可能なポジション」の確立を目指す。
さらに、完全自動翻訳の技術は文章の整合性チェックなど、ほかの分野にも適用できる可能性がある。具体的には、IR、財務、法務、製薬、特許、製造業の技術文書や取扱説明書などでの技術応用が期待される。
(2) 製薬特化エージェンティックAI
第2の戦略領域は、製薬業界の文書作成に特化した「ラクヤクAI」である。新薬の承認申請に必要な治験関連文書の作成は、製薬企業にとって膨大な時間と人的コストを要する工程であり、ニーズが高い成長市場である。ラクヤクAIはこの非効率を解消し、「新薬上市の早期化」に貢献することをミッションに掲げる。
開発の最前線となっているのが、国立の研究開発機関との共同研究である。Phase2においてラクヤクAIの実用性97%を達成し、文書作成期間を約2ヶ月短縮することに成功した。この達成水準は、専門家の作成した文書とAIの生成物がほぼ同等の品質であることを意味しており、規制文書特有の正確性・整合性への要求水準をクリアした証左となる。
商業化の面でも前進している。2025年8月には製薬業界のグローバル大手企業(社名非開示)での採用が決定し、業務の効率化に寄与し実際のフローに組み込まれる形での採用となった。また、小野薬品工業<4528>とのマニュアル統合AIの共同開発も継続しており、実績・知見の蓄積が進んでいる。さらに2026年4月には、(株)化合物安全性研究所と協働で進めてきた生物学的同等性試験(BE試験)向けの治験総括報告書(CSR)自動作成ツール「CSR(BE)エディタ」の開発フェーズを完了し、本格的な運用フェーズへと移行した。
ラクヤクAIの長期受注額目標は2030年2月期に4,000百万円を掲げており、2027年2月期は328百万円、2028年2月期は1,000百万円と段階的な拡大を見込む。1,000百万円達成のポイントは、国立の研究開発機関との協働実証の成果をもとに、がん以外の臨床試験への適用を拡大すること、SaaS型サービスとしてのスケーラブルな展開を実現することの2点であり、これらが着実に進展している。製薬企業における文書作成業務のAI化は、規制対応と精度要求から参入障壁が高く、先行する同社の優位性は今後も維持されると考えられる。
(3) 建築特化エージェンティックAI
第3の戦略領域は、STUDIO55を中核とする建築特化エージェンティックAIである。Gaussian Splattingの活用が競争優位の源泉となり、建設現場のデジタル化コストを大幅に引き下げることが可能となる。実証事例も積み上げており、2026年3月には(株)竹中工務店と共同で関西大学キャンパスの改修工事現場においてGaussian Splattingを用いた実証実験を実施した。また、2025年大阪・関西万博の「日本館」プロジェクトの設計支援にも携わっており、大型プロジェクトへの参画実績が顧客信頼の醸成につながっている。
(4) 事業創出エージェンティックAI
第4の戦略領域は、事業の企画・開発から営業・販売・運用に至るすべての工程を自律的に実行するAIの開発を目指す「事業創出エージェンティックAI」である。同社はこれを「事業自動運転OS」と位置付け、「JellyBeans (ジェリービーンズ)AI」の開発と検証を進めている。
現時点では「シゴトオワルAI」シリーズとして160を超えるAIサービスを量産するとともに、JellyBeans AIのパイロットテストが着実に進展している段階にある。人間のキャパシティに依存しない事業成長モデルの構築を目指しており、国内での検証を経て多言語でのグローバル展開も想定している。4つの戦略領域の中では商業化に最も時間を要すると見られるが、将来的に実現した際には、人員規模に依存しない収益構造の変革という大きなインパクトが期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)
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