セレコーポレーション Research Memo(9):人的資本強化と働き方改革で組織価値を向上
また、人的資本経営の一環として、業務プロセスや統制を自動化・外注化し、高度な専門性を持つ人財の比重がより高い配置構成とすることで、高付加価値創造体制への構築強化を図る。
2025年2月期においては、主要分野で着実な進捗が見られた。営業利益に関しては、40億円の達成を目標に据えており、その進捗は現在までのところおおむね順調に推移していると評価できる。2024年3月からは、社員一人ひとりの役割と責任を明確にするジョブ型人事制度を導入し、個々の能力発揮を促進する体制を整えた。企業方針と組織運営、そして社員の職務(ジョブ)を統合し、組織のベクトルを一致させることで、組織全体のパフォーマンス向上を目指す。ジョブ型人事制度は導入から1年半が経過しているが、全社的にジョブディスクリプション(職務記述書)の意識が徐々に浸透してきている段階である。ただし、現時点では制度の実行段階にまでは至っておらず、各人の実際の職務内容との整合性を図るさらなる制度化が今後の課題である。制度の形骸化を防ぐためにも、今後はジョブディスクリプションの内容と実務をより精緻にすり合わせる必要があると考えられる。この制度は導入して終わりではなく、運用段階においても継続的にモニタリングを実施し、柔軟に改善を図る姿勢が示されており、制度運用の実効性を高める取り組みと言える。
人的資本経営の観点では、「働き方改革」と「well-being(幸福の追求)」の両立を中核に据え、従業員アンケートの実施(2024年10月)や、体系的な教育機関としての「セレアカデミー」の開校など、教育・研修体制の強化が進んでいる。中途採用においても2024年3月から2025年8月までに31名が入社している。また、前述のジョブ型制度が導入されており、人事制度が刷新されている点も人的資本の強化方針と一致している。労働環境の魅力を高める観点からは、週休3日制の実現に向けた年間休日の段階的な拡大がなされており、2024年2月期には120日、2025年2月期には126日(有休取得率は85%を維持)、2026年2月期には132日へとさらなる増加が計画されている。加えて、利益計画が達成されれば、これをさらに拡大する方針である。
人財の活性化のうち健康経営の観点では、全社員を対象とした医療保障保険の導入や人間ドックの受診推進、さらにインフルエンザ予防接種などが継続的に行われている。労働時間の適正化にも注力しており、20時にはパソコンを強制的にシャットダウンする措置を導入することで、2025年2月期の平均残業時間は月8時間15分に抑制されている。これに加えて、時差勤務制度を導入するなど、仕事とプライベートの境界を明確にする試みもなされており、社員のワークライフバランスの向上に資する取り組みと言える。こうした取り組みが高く評価され、同社は2025年3月期、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人」に8年連続で認定された。また、「健康優良企業(金の認定)」についても、健康企業宣言東京推進協議会より7年連続(2024年)の認定を受けており、健康経営の領域で極めて高い水準の取り組みを維持していることが裏付けられている。
「企業価値の極大化と物心両面の『しあわせ』の実現」という「ありたい姿」への具体的な取り組みとして、女性の活躍に向けて女性役員と女性社員の懇談会が開催され、キャリアプランや育児との両立、働き方、リスキリングといった多岐にわたるテーマについて率直な意見交換が行われた。これにより、現場の声を施策に反映し、ダイバーシティ経営の深化が期待される。内部統制体制の強化についても、2025年3月より順次、現業部門において専門性の高い人財を「内部統制専担者」として配置している。これにより、業務プロセスの可視化とルールの徹底が図られ、コンプライアンスの強化とともに業務効率の向上にも資する運用を開始している。さらに、アパート専門メーカーとしての競争力を高めるため、技術開発室を新設し、構造、構法、遮音、耐震、省エネといったハード面からの商品開発を強化している。ソフトとハードを分業体制とすることで、より専門的かつ迅速な課題解決を目指しており、同社の中核事業における差別化戦略の実効性を高める布石と言える。
同社の「ビジョン2030」は単なる定量目標にとどまらず、人財投資や健康経営、ガバナンス強化、商品開発といった多面的な施策を通じて、着実にその実現へ向けた歩みを進めていると分析できる。弊社としては、人的資本に対する積極的な投資姿勢と、その運用におけるPDCAサイクルの構築が極めて評価に値すると考える。また、労働環境改善やダイバーシティ推進、内部統制の強化といった非財務的指標の充実が、今後の財務的成果に寄与する可能性が高いと見ており、ビジョン実現に向けた推進体制は中長期的な企業価値向上において有効であると判断する。
■株主還元策
配当性向30%を基準に安定的な配当を維持。好調な業績を背景として2期連続の増配
同社は、株主価値の最大化を重要な経営課題として掲げ、利益やキャッシュ・フローの状況、将来の事業展開などを総合的に勘案したうえで、中長期的な成長に向けた投資と1株当たり利益の増大による株主価値の向上を図っている。株主還元については、配当性向30%を基準とした安定的かつ業績連動型の方針を採っており、その姿勢は直近の配当実績にも表れている。2024年2月期には、当初予想の80.0円から105.0円へと増配を実施し、さらに2025年2月期においても、当初予想の105.0円から135.0円へと30.0円の増配となり、2期連続の大幅な増配を実現している。2026年2月期においても、135.0円の配当を予想している。このように、着実な業績拡大を背景とした積極的な利益還元が行われており、株主重視の姿勢が明確に示されていると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木 稜司)
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