タムロン Research Memo(2):カメラ用交換レンズを主力事業とする総合光学メーカー
タムロンは、カメラ用交換レンズを主力とする総合光学メーカーであり、創業からの技術とノウハウを駆使して産業用や車載用といった新市場を開拓しています。事業は写真関連、監視&FA、モビリティ&ヘルスケアの3つのセグメントに分かれ、写真関連事業が売上と利益の主要部分を占めています。技術革新が得意なタムロンは、世界初の交換式マウント"T"マウントや高倍率ズームレンズの開発などで顧客支持を得てきました。交換用レンズ市場は、スマートフォンのカメラ機能向上で縮小傾向にありましたが、近年は安定。タムロンは、交換レンズ市場で大手メーカーのシグマと並び立っており、特にサードパーティ市場で高いシェアを持っています。カメラ本体は薄利で販売、交換レンズで利益を得る市場構造が安定をもたらしています。
1. 事業概要
タムロン<7740>は1950年に写真機・双眼鏡レンズの研磨加工からスタートし、1958年に初の自社ブランドによる写真用交換レンズを発売、その後も一眼レフカメラ用交換レンズメーカーの大手として成長を遂げるとともに、同事業で培った技術やノウハウを生かして産業用や車載用など新たな市場の開拓を進めている総合光学メーカーである。
事業セグメントは、レンズ交換式カメラ(一眼レフ・ミラーレス)用の交換レンズ等で占められる写真関連事業、監視カメラやFA、TV会議用レンズやレンズと制御基板を一体化したカメラモジュール等で構成される監視&FA関連事業、車載カメラや医療用レンズ、ドローンやビデオカメラなどその他のカメラ用レンズや精密光学デバイスで構成されるモビリティ&ヘルスケア、その他事業の3つのセグメントに区分されている。2024年12月期の売上構成比は写真関連事業が73%、監視&FA関連事業が14%、モビリティ&ヘルスケア、その他事業が13%となっており、営業利益(共通費用控除前)についても写真関連事業が82%を占めるなど同社の主力事業となっている。
グループ体制は、同社及び連結子会社9社で構成され、中国とベトナムに生産子会社、香港に物流・販売子会社、欧米アジアに販売子会社を6社展開している。海外生産比率が約90%(うち中国約65%、ベトナム約25%)、海外売上比率が約82%を占める(2024年12月期実績)。
2. 特徴と強み
同社は、創業以来培ってきた革新性のある製品を生み出す企画力や技術開発力、並びに高品質を維持しながら量産化を可能とする生産力を強みとしている。革新性という点においては、1957年に世界初の一眼レフカメラ用マウント交換式“T”マウントを開発し世に送り出したほか、2008年には世界最大となる15倍ズーム倍率の一眼レフ用ズームレンズ、2017年には18-400mmをカバーする超望遠高倍率ズームレンズを開発するなど、魅力あるレンズを多く開発・商品化し、顧客支持を集めてきた。
また、技術開発の面では非球面レンズ作りに使われるガラスモールド非球面の製法や、ナノ構造のレンズコーティング技術、広帯域反射防止膜(eBANDコーティング処理)※など独自の技術を確立しているほか、小型・軽量化を実現するための設計・機構技術や精密金型技術なども強みとなっている。
※ 従来の多層膜コーティングと比較して、可視領域から短波赤外領域に至る超広帯域において反射防止性能に優れ、大幅な透過率を実現している。同技術を用いたレンズを使うことで、計測・検査機器の測定精度が向上するほか、屋外の監視カメラでは外乱光によるゴーストフレアを抑えることができ高画質を実現する。
生産力においては、「マザー工場」としての役割を担う青森工場において多数の熟練工を擁し、高度な生産技術のノウハウや高精密加工技術を保持しており、難易度の高いレンズや原器を量産している。同工場で技術者研修を実施し、身につけたスキルを中国やベトナム工場に移植することで、国内生産と同等レベルの高い品質を維持した大量生産を実現している。なお、海外工場ではレンズ加工から組立・検査工程までを行っている。
3. カメラ用交換レンズの市場動向と同社のポジション
(一社)カメラ映像機器工業会の統計資料によれば、レンズ交換式カメラの交換用レンズの2024年出荷数量は前期比7.0%増の1,031万台と2年ぶりに増加に転じ、出荷額では同10.7%増の5,173億円と4年連続の増加となり、11年ぶりに過去最高を更新した。統計非参加企業もあるため、世界の市場規模はもう少し大きくなるが、日系企業だけで9割を超えるシェアとなるため大差はないと考えられる。
数量ベースではスマートフォンのカメラ機能の高性能化とともに、2012年の3,037万台をピークに2020年まで縮小傾向が続いたが、その後は年間1,000万台前後で安定して推移している。交換式カメラも高機能化や高精細化、描写力の向上などが進み、綺麗な写真を撮影したいというニーズが従来の写真愛好家だけでなく、SNSを利用する若者世代でも増加し、一定の需要を獲得していることが背景にある。一方、出荷額についても2013年の5,042億円をピークに2020年は2,523億円と約半分の水準まで縮小したが、その後は拡大基調に転じている。これはカメラの高機能化とともに、交換レンズも高性能化や小型軽量化が進み、平均単価が上昇し続けていることが要因だ。平均出荷単価の推移を見ると2012年は1.6万円だったが、2024年は5.0万円と約3倍に上昇している。弊社では今後も交換用レンズ市場は、数量は1,000万台前後で安定し、技術進化による平均単価の上昇によって金額ベースでは1ケタ台の成長が続くと見ている。
交換用レンズは、カメラメーカーが自社で開発、製造する純正品と、同社のようなレンズメーカーがサードパーティとして製品化するものがある。市場全体に占める純正品の比率は8割弱で残り2割強がサードパーティ品と見られる。サードパーティメーカーの大手は、同社と(株)シグマの2社となる。同社は自社ブランド品以外にも、ソニーグループ<6758>など大手カメラメーカーのOEM品も一部手掛けており、全体のシェアで見ると約14%、サードパーティメーカーだけで見ると約60%(OEM品含む)とトップシェアを握っていると言える。
レンズ交換式カメラの世界市場は日系企業が95%程度のシェアを握る独壇場であり、交換レンズもほぼ同等のシェアになっている。2000年以降、デジタルカメラが急速に普及し始めた際に、アジアの光学メーカーも低価格品で参入したが、低価格品については市場そのものが縮小したこと、また高性能が求められる領域においては技術面でのハードルが高く、現在はわずかな企業が残っている程度で同社にとって脅威になっていない。カメラ市場は成熟しているものの、価格競争がほとんどないため、現在は営業利益率で30%近くとなる高収益事業となっている。
カメラメーカーとサードパーティメーカーでレンズに関する技術力にほとんど差はないものの、同等のスペックであればサードパーティ品の販売価格は純正品よりも4割程度低い水準である。カメラメーカーは本体を薄利で販売し交換レンズで稼ぐビジネスモデルのため、レンズ価格をむやみに引き下げることはしない。レンズメーカーによって描写性能などの特徴があるため、スペックが同じであっても写真画像は異なった印象となる。レンズごとの特徴や価格面なども総合的に考慮してユーザーは交換レンズを購入する。競合メーカーが少ないこともあるが、カメラ業界特有の構造が安定した価格状況を創り出しているとも言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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