ジーデップアドバンス Research Memo(5):中期経営計画最終年度に営業利益10億円を目指す
ジーデップアドバンスは2025年から2027年を対象にした中期経営計画を推進しており、最終年度には売上高8,415百万円、営業利益10億円を目指しています。成長戦略としては、高度AIソリューションの提供、AIに適したエコシステムの構築、AIリソースのハイブリッド化を促進しています。具体的には、NVIDIAと連携した次世代GPU「NVIDIA DGX B200」や新しいAIプラットフォームの導入、Ridge-iとの協働による「ローカルRAGスターターBOX」の開発を進めています。株主還元策では、増配と株式分割を実施し、配当性向の引き上げを図っています。
1. 中期経営計画 数値目標
ジーデップ・アドバンス<5885>は2025年5月期を初年度として2027年5月期を最終年度とする中期経営計画を推進している。最終年度の売上高は8,415百万円、営業利益は1,055百万円を目標に設定した。3年間の年平均成長率は、売上高で23.9%、営業利益で16.8%、3年後に売上高を1.9倍、営業利益を1.6倍にする計画である。最初の2期は、ヒト・設備への投資期間と位置付け、トップラインの伸びは加速するものの、営業利益の伸びは抑制される。最終年度においては、その成果により営業利益が大きく伸び、10億円を突破する計画だ。なお、最終年度の営業利益率(目標)は12.5%であり直近実績の15.0%(2024年5月期)から低下するが、これは案件規模の拡大により粗利率が緩やかに低下することが要因である。
2. 中期経営計画 成長戦略
成長戦略として、3つの重点施策を推進する。
1) 上位レイヤーソリューションへの移行と環境整備
生成AIやマルチモーダルAI(映像や音声など異なる種類の情報をまとめて扱うAI)の研究用途としての案件規模は拡大している。同社では、デスクサイドのAIワークステーションから大規模なGPUクラウドまで、商品・サービスのポートフォリオを上位レイヤーへ拡充し、大規模AIのユーザーニーズにタイムリーに対応し確実なアップセルを促進する。また、国内データセンターと提携し、高負荷な最新のGPUシステムを安定稼働させるためのファシリティを提供するとともに、AIを効率良く学習するためのソフトウェアツールも用意し、効率の良いAI学習を総合的に支援する取り組みを強化する。
2) 大規模AI時代に合わせたエコシステムの増強
国内では、SIerとの協業を開始し、大規模案件での水平分業・垂直分業を行える体制を確立する。加えてクラウドベンダーやデータセンターと提携しオンプレミスとクラウドのハイブリッド利用を促進する。また、モビリティ向けのPoC(Proof of Concept:新しいアイデアや技術・手法の実現可能性を検証)センターであるGATをさらに増強し、良質の案件開拓を図る。グローバルでは、従来のグローバルパートナーに加えて、NVIDIAと関係が深いOEMベンダー、ストレージベンダー、ソフトウェアベンダーとのパートナーネットワークをさらに強化し、製品調達力とオリジナリティのある大規模システムの構築を可能にする。
3) AIリソースの総合ベンダーとしてハイブリッド化を促進
手元の既存リソースはPoC用途に使用し、最新機器はデータセンターでプライベートクラウドとして利用し、大規模計算時にはパブリックの大規模システムへバーストするという顧客の3ステージに寄り添う体制を整備する。すべての環境をシームレスに移行し、AI開発のスピードアップを支援するAIリソースの総合ベンダーを目指す。
3. 今後期待される新製品:「NVIDIA DGX B200」が2025年初頭から順次出荷予定
「NVIDIA DGX B200」は、NVIDIA最大の開発者向けカンファレンス「NVIDIA GTC 2024」(2024年3月開催)において発表された新しいGPUアーキテクチャ「Blackwell」を搭載した統合AIプラットフォームである。前世代と比較してトレーニング性能は3倍、推論性能は15倍の最先端の性能を実現しており、LLM、レコメンダーシステム、チャットボットなどの多様なワークロードを処理することができる。既にグローバルでは出荷が開始されており、同社でも先行受注を開始し、出荷が開始される計画である。
4. Ridge-iと共同開発「ローカルRAGスターターBOX」の受注を開始
同社は、他社との協業によりエコシステムを拡充している。同社とAI・ディープラーニング技術のコンサルティングと開発を行うRidge-i<5572>(本社:東京都千代田区)は、オンプレミス環境でのLLMの活用を、より手軽・迅速・安全に実現する「ローカルRAGスターターBOX」を共同開発し、2025年1月に受注を開始した。この製品は、LLMで対応が必要となるハルシネーション(事実に基づかない情報が生成されてしまう事象)を抑制するRAG(Retrieval-Augmented Generation)技術を実装し、セキュアなローカル環境で利用できる。また、多様なAIシステム開発環境に対応すべく複数のモデルがプリインストールされており、最短時間で基本機能が稼働し、迅速な業務への導入が可能である。
■株主還元策
利益成長と配当性向の上昇により、高い増配ペースが期待できる。2025年5月期の配当金は17.50円、配当性向21.1%予想。株式分割を実施
同社は成長に応じた株主への安定的な利益還元を経営上の最重要課題の1つと位置付けており、業績の見通しや必要な設備投資などを総合的に勘案したうえで、毎期配当性向を引き上げていく方針としている。過去3年間においては毎年増配するとともに、配当性向20%前後を維持してきた。また同社は株式の流動性の向上と投資家層の拡大を目的に、2024年12月1日を基準日として、普通株式1株につき4株の割合で株式分割を実施した。2024年5月期末の配当金は年67.00円(株式分割後換算16.75円)、配当性向は20.4%だった。2025年5月期は、配当金で年17.50円、配当性向21.1%を予想する。弊社では、継続的な利益成長とともに、将来的には配当性向の上昇により、高い増配ペースが期待できると考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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