平和RE Research Memo(3):2024年11月期の分配金を大幅に増加し、過去最高を更新
平和不動産リート投資法人は2024年11月期における業績で営業収益9,045百万円を記録し、予想を上回った実績を示しました。この結果、不動産譲渡益の増加が影響し、分配金は3,640円と過去最高を更新しました。内部成長として、バリューアップによる賃料の増加や高い稼働率が続いています。また、外部成長では公募増資を活用し、資産入替を進めたことで、財務健全性を維持しました。2025年も分配金の増配を計画しており、内部留保の活用や物件取得によりさらなる成長を目指しています。
1. 2024年11月期の業績概要
平和不動産リート投資法人<8966>の2024年11月期(第46期)は、営業収益9,045百万円(前期比3.5%増)、営業利益4,694百万円(同4.7%増)、経常利益4,099百万円(同4.1%増)、当期純利益4,098百万円(同4.1%増)であった。その結果、営業収益及び各段階利益は、2024年7月17日公表の修正予想を上回って着地している。営業収益に含まれる不動産譲渡益が修正予想を277百万円上回った結果、各段階利益も予想を上回った。なお、REITでは、税引前利益の90%超を分配金として支払う場合には法人税が免除されることから、当期純利益は経常利益とほぼ同水準となっている。
内部成長としては、第1にバリューアップを通じた既存物件の内部成長が進展し、オフィス、レジデンスともに賃料改定額は2020年以降の最高値を更新した。前期と本決算期における賃料改定により、ポートフォリオ全体の賃料収入は年率1.3%成長している。第2にポートフォリオ稼働率は高稼働が継続した。期中平均稼働率はオフィスで前期を上回ったが、レジデンスでバリューアップ実施に伴うダウンタイムの影響から前期比低下し、全体では97.5%(同0.3ポイント減)となったが引き続き高水準であった。外部成長としては、公募増資による外部成長と、15期連続となる資産入替に伴う含み益顕在化のサイクルを継続した。財務運営でも、調達期間、固定金利比率の水準を維持し、公募増資により保守的なLTVコントロールを継続するなど、健全な財務基盤を維持した。
以上から、1口当たり当期純利益(EPU)は、3,430円(前期比6円増)であった。また、賃貸EPUは、オフィスとレジデンスの内部成長及び外部成長の寄与が金融費用を上回り、2,685円(同9円増)であった。賃貸EPUとは、バリューアップ工事に伴う費用(営業費用に含まれる)がPLに与える影響が拡大したことで、賃料上昇の流れを分かり易くするための指標であり、具体的には譲渡益及び内部留保充当額を除いた1口当たり分配金に、バリューアップ関連費用を足し戻して計算する。さらに投資主還元の強化方針として、資産入替に伴う含み益の顕在化による譲渡益計上に加えて、一時差異等調整積立金の定期取崩し額を前期の40円/口から200円/口へ拡大したことで、1口当たり分配金は3,640円(同260円増)と18期連続で過去最高水準を更新した。こうした分配金の大幅増加は、従来を上回る投資主還元の強化に経営の軸足を移した結果であった。着実な成長に加え、潤沢な内部留保と含み益を有することで、継続的な物件取得、財務基盤の安定化、安定的な分配金支払いなどを可能にしていると評価できる。
2. 財政状態
2024年11月期末(第46期末)の財政状態は、総資産249,190百万円(前期末比6,027百万円増)、純資産124,894百万円(同5,941百万円増)、有利子負債114,037百万円(同増減なし)であった。平均調達金利は0.936%(同0.085ポイント上昇)となったが、主要金融機関との良好な関係の下、今後は比較的金利水準が高い過去の借入金が満期を迎えることで、引き続き低水準の調達コストが続くと見込まれる。平均調達期間は7.3年、長期有利子負債比率は100.0%、固定金利比率は70.2%で、将来の金利上昇リスクに十分備えている。金利上昇に対しては、内部留保や含み益を活用したバリューアップ工事による賃料増額によってカバーする計画である。また、大手都銀からのコミットメントライン(必要な時に借りられる、銀行からの融資枠)80億円を有し、不測の事態にも対応できるようにしている。
一方、鑑定LTV(期末の鑑定評価額(帳簿価額+含み損益)に対する有利子負債の割合)は39.1%と良好な低水準を維持している。同REITでは、同比率40~50%を標準水準として維持し、上限を65%に設定しているが、鑑定評価額の増加に伴って長期的に同比率は低下し、近年は横ばいながら良好な低水準で推移しており、安全性が高いと評価できる。
■今後の見通し
2024年11月期からは、投資主還元強化の方針の下、内部留保の活用により従来ペースを上回る分配金の増配を計画
● 2025年5月期と2025年11月期の業績見通し
2025年5月期(第47期)は、営業収益8,108百万円(前期比10.4%減)、営業利益3,746百万円(同20.2%減)、経常利益3,104百万円(同24.3%減)、当期純利益3,104百万円(同24.3%減)を、また2025年11月期(第48期)は、営業収益8,177百万円(同0.8%増)、営業利益3,700百万円(同1.2%減)、経常利益3,043百万円(同2.0%減)、当期純利益3,043百万円(同2.0%減)を見込む。その結果、1口当たり当期純利益(EPU)は、2025年5月期2,597円(同833円減)、2025年11月期2,546円(同51円減)を予想する。また、賃貸EPUは、2025年5月期2,682円(同3円減)、2025年11月期2,682円(同増減なし)を見込む。しかし、1口当たり分配金は投資主還元強化の方針に基づく内部留保取崩によって、2025年5月期3,750円(同110円増)、2025年11月期3,850円(同100円増)と、従来のペースを上回る大幅増加を続け、過去最高水準の更新を予想する。
これらの予想は既に確定している外部成長(物件譲渡や物件取得)や内部成長の実現を織り込むものの、毎期継続している含み益の顕在化を伴う資産入替による物件取得や物件譲渡益は織り込んでいないが、引き続き物件譲渡益の計上により内部留保の充当をカバーすることで、分配金の増加を実現する方針である。また慎重な稼働率やNOI利回り(実質利回りとも言う、実績賃貸業利益(年換算)/((期初帳簿価額+期末帳簿価額)÷2)×100で計算)を前提にするなど、保守的な前提条件に基づいている。さらに今後の金利上昇の懸念に対しては、内部留保や含み益を活用したバリューアップ工事により賃料増額を強力に進めることから、業績予想は十分に達成可能な水準であると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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