MDNT Research Memo(3):「細胞加工業」「再生医療等製品事業」の両利きの経営を行う
株式会社メディネットは、細胞加工業と再生医療製品事業の「両利きの経営」を展開している。細胞加工業は特定細胞加工物製造業を中心に、CDMO事業やバリューチェーン事業で構成され、主に企業や医療機関からの特定細胞加工物の製造を受託している。再生医療製品事業はまだ収益化には至っていないが、研究開発や共同研究を通じて再生医療製品の製造・販売承認を目指している。がん免疫細胞治療は、現段階で自費診療であり、保険適用のためのエビデンスデータの不足が課題だが、細胞レベルでの再発・転移の抑制効果が期待される。メディネットは様々な細胞加工の可能性を探求しつつ、効率化を図っている。
2. 事業概要
(1) 事業ポートフォリオ
同社は「細胞加工業」をコア事業として、「再生医療等製品事業」を戦略事業として展開している。細胞加工業は特定細胞加工物製造業(2024年9月期の売上構成比79.3%)、CDMO事業(同13.0%)、バリューチェーン事業(同7.7%)から構成される。主に企業・大学・医療機関・研究機関からの特定細胞加工物製造の受託、再生医療等・治験製品の製造、細胞培養加工施設の運営管理、細胞加工技術者の派遣・教育システムなどの提供を行っている。
再生医療等の製品事業は同社の研究開発のほか大学病院との共同研究を通じて、再生医療等製品の製造・販売承認取得を目指して研究開発を行っている。また、国内外で行われている再生医療等製品の開発動向にも注目し、有望な技術・物資などを持つ企業などとのアライアンスによるパイプラインの拡充を視野に入れた活動を行っている。同事業においては再生医療等製品の開発段階にあるため、事業収益はまだ発生していない。
経営における一般論として、“深化”は企業の事業収益の屋台骨を支えるものだが、“深化”だけを追求するとやがて成長の限界を迎えてしまう。そこに“探索”が加われば、自社が限界を迎える前に持続的成長を推進する選択肢を得やすくなる。企業総体としては、“深化”“探索”の両方(両利きの経営)があるとなお良いとされる。同社においては“深化”は細胞加工業、“探索”は再生医療等製品事業と言える。同社の“両利きの経営”は緒に就いたばかりである。
(2) 細胞加工業
細胞加工業のうち特定細胞加工物製造業は、医療機関からの依頼に基づき、再生・細胞医療で用いる治療用の細胞(特定細胞加工物)を製造している。CDMO事業は、主に製薬会社からの依頼に基づき、再生医療等製品及び治験製品を製造している。バリューチェーン事業はフロー型バリューチェーンビジネスとして、再生・細胞医療のコンサルティング、細胞培養加工施設の運営管理、細胞加工技術者の派遣・教育システムの提供といった、特定細胞加工物を取り扱ううえで必要な一連の知見やノウハウを提供している。
2014年に施行された「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、2015年5月に品川細胞培養加工施設は「特定細胞加工物製造許可」を取得した。免疫細胞治療に係る細胞加工に加え、体細胞・幹細胞・iPS細胞などの多様な細胞加工の製造開発を受託することを視野に入れた特定細胞加工物の製造受託や、再生医療等製品の開発から商業生産まで対応が可能となった。これに伴い、同社は医療法人社団滉志会に対して3つの細胞培養加工施設(新横浜・大阪・福岡)を提供し「免疫細胞療法総合支援サービス」を行っていたが、従来の契約を終了し、2017年9月に「特定細胞加工物製造委受託」契約に切り替えた。医師向けの細胞加工から再生医療等製品の製造まで実施することとなり、細胞加工業における製造体制の効率化を図るため、2019年4月までに各細胞培養加工施設を品川細胞培養加工施設に統合した。
(3) がん免疫細胞治療における課題
がん免疫細胞治療は現段階で自費診療である。まだ保険適用に向けたエビデンスデータが不足し、未整備の状態である。
抗がん剤は保険適用であるため、患者の費用負担を軽減できるメリットがある。一方で、治療に用いればがんは小さくできるが、治療を継続するとがんに耐性ができることがある。耐性ができると治療の効果が徐々に薄くなり、がんは完全消滅せずにまた大きくなる。すると2nd、3rdラインの抗がん剤投与が行われるが、最後には使用できる抗がん剤がなくなる恐れがある。標準治療ではがんが細胞レベルで完全に消失することはないと言われるが、がん免疫細胞治療は体内に残存するがん細胞を細胞レベルで攻撃し、再発・転移を抑制するため、標準治療と併用すれば相乗効果を得ることができる。
前述のとおり、がんの治療法は医師が選択する。一般的に自費診療の肯定派・否定派は半々のようだが、否定派の医師は「保険で認められていない治療は用いるべきではない」という見解であり、このため患者自身ががん免疫細胞治療を希望した場合でも、保険適用外である治療は行わない医師は多い。がん免疫細胞治療が保険適用の承認を得るためには有償で臨床試験を行い、エビデンスデータを出していく必要がある。しかしながらエビデンスデータの収集・蓄積には数年に及ぶ時間を要する。最新の治療を保険診療として誰もが受けられるものとするためには、越えなければならない壁と言える。
(4) 再生医療等製品事業
同社は、2003年の東証マザーズ株式上場のころから再生・細胞医療の研究開発に着手した。免疫細胞療法総合支援サービスだけでは事業拡大は困難と考えたためだ。2017年には「再生医療等製品の製造販売承認」の取得や、自家細胞培養軟骨(米国製品名「NeoCart(R)」(以下、「NeoCart」)開発番号MDNT-01)の日本国内での製造と販売のライセンス契約締結の事業化を目指し、再生医療等製品事業の原型ができあがった。現在は自家細胞培養軟骨を筆頭に、複数の開発パイプラインを進めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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