クリアル Research Memo(10):第2の成長ステージに向けた事業スキームを整備
クリアル<2998>は、不動産特定共同事業法に基づく第3号及び第4号事業者としての許可取得を金融庁及び国土交通省へ申請している。これらの許可の取得により、SPCを利用したクラウドファンディングでの案件組成が可能となる。SPCにてクラウドファンディングを活用することで、原則的に物件のオフバランス、アップフロント・フィー等の各種手数料の即時売上計上が可能となり、貸借対照表の軽量化、倒産隔離なども実現できる。これにより投資対象としての適格性が向上するため、個人投資家に加えて金融機関や機関投資家の参画が促進され、投資主体の幅と投資額が大きく拡大することが見込まれる。また、借入金によるレバレッジ効果によって「CREAL」の投資家の利回りが向上し、同社の収益向上も期待できる。
前述のとおり、現状では、GMVは調達時点(ファンド成約時点)の数値で集計・公表される一方で、「CREAL」の売上高及び売上総利益への計上は取引決済時点(物件売却時点)で行われることから、GMVの成約から売上総利益の計上までに多くのファンドでおおむね1年前後のタイムラグが生じている。しかし、不動産特定共同事業法に基づく第3号及び第4号事業者としての許可を取得し、SPCの活用が可能となれば、「CREAL」の売上総利益のTake Rateを構成する確定フィー(案件組成手数料、ファンド運用手数料、償還手数料)と変動フィー(ファンドの外部売却時のキャピタルゲインのプロフィット・シェア)のうち、確定フィー部分についてタイムラグがなくなる。
上記を勘案すれば、許可取得の決算期の業績は、既存スキームで組成され約1年のタイムラグを経て売却とともに計上される確定フィーと、同期中に新スキームにて組成されてタイムラグなく計上される確定フィーが合算された金額が売上総利益に反映されることとなり、非常に大幅な増益となることが予想される。その次の期はタイムラグにより確定フィーが反落することで減益が懸念されるが、SPC活用の本格化による顧客投資家数の増加と、金融機関や機関投資家の参画等による投資金額の拡大をGMVの増加につなげることで、高成長を持続できると弊社では見ている。
このように、不動産特定共同事業法に基づく第3号及び第4号事業者の許可取得は、同社のビジネスモデルを根本から変革し、これまで以上の高成長と高収益を創出する大きな原動力となることが期待される。同社ではSPCを活用した新たな事業スキームの構築を想定した「CREAL」の高成長を今後の経営戦略の中核に位置付け、2026年3月期に年間GMV600億円、累計投資家数14万人の達成を計画している。
一方で、期待される顧客増加に対応するためには、投資対象となるファンドの安定供給も重要だ。現状では人気のあるファンドの場合、募集開始から数分で終了してしまう状況であるため、今後顧客が増加すればするほど応募できなくなる可能性が高まることが予想される。その場合、顧客の不満は拡大するであろう。同社としてもその点はよく認識しており、ファンド組成に必要な物件を安定調達する施策を展開している。1つ目は投資対象アセットの拡充である。従来からの主力物件であるレジデンスについては、その裾野の広さやリスクとリターンのマイルドさもあって、クラウドファンディング向けの好素材と認識しており、引き続き注力していく。また物流施設については従来から取り扱っているが、いわゆる「2024年問題」もあって今後の需要増が見込まれており、ファンド対象物件としての魅力が増してくることから対象案件を増やしていく考えである。その他、ヘルスケア(老人ホームやサービス付き高齢者住宅等)関連や再生可能エネルギー施設、さらには前述のシンガポールを拠点とした海外案件の発掘にも注力することによって、ファンドのラインナップを拡充していく方針だ。2つ目は人材への投資である。良質なファンド組成のためには、物件のソーシング・運営・エグジットの3分野において高いスキルを持つ、不動産ファンドへの取り組みに長けた優秀な人材が必要とされる。そのような人材は企業間で奪い合いの状況が続いていることから、不動産業界経験者でスキルの期待できる人材を積極的に採用し、不足するスキルを養成することでファンド組成メンバーとして育成していく考えである。
また、同社では会員基盤の拡大、物件の発掘とオペレーション力の強化に加えて、海外での事業展開もにらみ、M&Aについても積極的に検討する方針である。
「CREAL」のこうした取り組みに加えて、前述した「CREAL PB」のDXプラットフォームの継続的進化による成長加速、「CREAL」と「CREAL PRO」のシナジー強化による経営基盤の拡大を推進する。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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