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天昇電 Research Memo(1):2023年3月期は、減価償却費増を吸収して167.8%の営業増益


*13:41JST 天昇電 Research Memo(1):2023年3月期は、減価償却費増を吸収して167.8%の営業増益 ■要約

天昇電気工業<6776>は、1936年(昭和11年)に創業した歴史のある合成樹脂(プラスチック)成形品メーカーである。長い歴史のなかで培われた技術力は高く、顧客との信頼関係も厚い。製品の向け先は幅広い業種に及んでいるが、近年は自動車向けの比率が約55%と高い。今後は、内需向けの製品を拡充する一方で、北米での事業を拡大する方針である。同社は長い間、業績低迷に苦しんでいたが2017年3月期に9年ぶりに復配(年間3円)するまで業績が向上し、現在も継続して配当を実施している。2021年3月期は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で大幅減益となったが、その後回復に向かい、2023年3月期は減価償却費の増加を吸収して営業利益は前期比で大幅増となった。業績の回復に伴い、財務体質も改善しつつある。

1. 2023年3月期の業績:減価償却費の増加を吸収して営業利益は前期比167.8%増
2023年3月期の連結業績は、売上高23,899百万円(前期比22.9%増)、営業利益604百万円(同167.8%増)、経常利益752百万円(同111.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益612百万円(同148.7%増)となった。国内では、主たる向け先である自動車メーカーの生産・販売が回復したことに加え、新規連結となった竜舞プラスチック(株)が通年で寄与した。米国では、設備増設の効果もあり非自動車製品の需要が増加した。中国においてもICトレーなどが堅調に推移して増収となり、これらから連結売上高は大幅増収となった。米国子会社での設備投資に加えて、金型を中心に設備投資を積極的に行ったことから減価償却費が増加したが、これを吸収して営業利益は前期比で大幅増益となり、償却前営業利益は前期比22.3%増となった。この結果、キャッシュ・フローも改善され財務体質は強化されている。

2. 2024年3月期の見通し:償却負担は続くが増益を目指す
2024年3月期の連結業績は、売上高28,000百万円(前期比17.2%増)、営業利益800百万円(同32.2%増)、経常利益750百万円(同0.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益500百万円(同18.3%減)と予想している。自動車生産がさらに回復すると見ていること、米国での増設の効果が期を通して寄与することなどから、17.2%の増収を見込んでいる。営業利益については、減価償却費も増加すると推測されるものの、これを吸収して32.2%の増益を見込んでいる。経常利益以下については、特殊要因が剥落することから減益を予想している。国内の自動車生産の動向が業績を左右する可能性があるが、弊社ではかなり控え目な予想であると見ている。業績の回復だけでなく財務基盤も着実に改善している点は大いに注目する必要があるだろう。

3. 中長期の成長戦略:内需型製品及び海外事業の拡大により成長を加速する
現在は売上高の約55%が自動車向けとなっているが、今後は雨水貯留浸透資材などの内需型製品の売上高を伸ばすなどして自動車向け比率を35%程度とすることで成長を図る。米国での事業をさらに拡大することも目指している。すでに米国での大型設備投資を実行し、2024年3月期からはこの投資の回収期に入る。自動車向け比率を下げることは容易な道のりではないが、これが達成できれば、同社の体質は大きく変わるだろう。ここ数年で財務体質も改善されてきていることから、定量的な数値と併せて同社の事業体質がどう変わっていくのか、今後に注目したい。

■Key Points
・プラスチック製品の老舗メーカー。技術力が高く顧客からの信頼は厚い
・2023年3月期は大幅営業増益。2024年3月期も32.2%の営業増益を目指す
・今後は内需型製品及び海外事業の拡大で収益基盤の安定化を図る

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

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