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兵機海運 Research Memo(3):主力は内航事業、豊富なサービスにより「適時適船」を実現している


*13:03JST 兵機海運 Research Memo(3):主力は内航事業、豊富なサービスにより「適時適船」を実現している ■兵機海運<9362>の事業概要

1. セグメントの概要
セグメントは海運事業と港運・倉庫事業の2つである。海運事業は、内航事業と外航事業で構成されており、港運・倉庫事業は、港運事業と倉庫事業で構成されている。2023年3月期のセグメント別売上構成は、海運事業が53.6%、港運・倉庫事業が46.4%であり、同営業利益構成は、海運事業が75.0%、港運・倉庫事業が25.0%である。

(1) 海運事業
a) 内航事業
内航事業は、国内の港を結ぶ内航船を使った海上輸送事業である。同社における主力事業であり、鉄鋼メーカーが生産する鋼材(H鋼、厚板、コイル等)の海陸一貫輸送の取り扱いが中心である。主な顧客は、大和工業<5444>グループやJFE物流(株)グループである。

同社の自社保有船ならびに傭船が船団を組み、瀬戸内から全国の港へ向けた海上輸送ルートを運航している。重要な管理指標は、航海数と取扱輸送量である。業容拡大には、安全で安定した配船サービスの提供が重要となる。そのため、老朽船の代替建造(リプレイス)等継続的な設備投資や、高齢化する船主の廃業などに応じた船団の組み換えが必要となる。

同社は、傭船船主との良好な関係の構築と船主の経営強化を目指して新たな体制(共同管理)に着手している。同社と船主によって七洋船舶管理(株)を設立し、内航船員の高齢化・担い手不足といった問題に向き合い、船員の確保・育成を進めている。新人船員の早期育成を目的とした船員育成船への投資や女性船員の育成に特に注力し、将来の海運業界を担う人材を輩出していく考えである。

b) 外航事業
外航事業とは、外航船を利用し、国をまたいだ輸送を行う事業である。主に連結子会社K.S LINES S.A.を通じた傭船及び委託船の運航をしている。

同社は日本近海を主体に、多目的貨物船を運航している。極東ロシア航路と台湾航路が中心で、韓国や中国、東南アジア向けはスポットでの対応が多い。航空機では運べない建設機械・大型タイヤ(鉱山用等)・大型のプロジェクトカーゴといった製品を輸送している。ロシアのウクライナ侵攻といった突発的事象が起きたなかで近年は、中央アジア向け航路を拡充し一定の成果を上げている。また、複数年度に及ぶ社会インフラ整備でのプロジェクト輸送も収益基盤となっている。世界経済の発展とともに全世界で物の移動が活発になっており、業界全体の海上輸送量は拡大基調にある。なお、運賃の大半はドル建て・外貨建てで支払われるため、運賃収入は円高よりも円安のほうがプラスに働く。

外航事業においても、重要な管理指標は、航海数と取扱輸送量である。定期傭船の効率的な配船に加えて委託船のスポット配船により輸送効率のアップに注力している。なお、自社船は経過年数を考慮すると代替建造(リプレイス)等の設備投資が必要となっている。

(2) 港運・倉庫事業
a) 港運事業
港運(港湾運送)業とは、海と陸との狭間の運送を担う事業、つまり輸出入に係る港湾における物流事業である。具体的には、船舶への貨物積み込み・卸し・荷さばき・諸官庁への各種手続きを代行している。四方を海に囲まれた日本にとって、港運事業は経済活動や国民生活を維持していくうえで重要な役割を果たしている。また、輸出入貨物取扱業として、倉庫・港運・通関・外航・陸運と連携し、国際物流貨物をスムーズに輸送させるトータルサポートを担っている。顧客に目立った偏りはなくバランスがとれており、近年では巣ごもり需要等を背景に食品輸入事業者向けが堅調に推移している。

同社はAEO通関業者※に認定されており、通関業も手掛けている。通関士は、輸出入者に代わって国際物流の正しい手続きを行う専門家である。日本と外国の境界線を守る役割として、「輸出入に問題のない貨物かどうか」「関税・消費税等を徴収すべきかどうか」等の判断を行い、安全で公正な貿易活動を支えている。

※AEOはAuthorized Economic Operatorの略。貨物のセキュリティー管理とコンプライアンスの体制が整備されているとして、税関長の認定を受けた通関業者のこと。


b) 倉庫事業
倉庫事業では、神戸物流センター・兵庫埠頭物流センター・大阪物流センター・姫路倉庫で事業を展開している。いわゆる保税蔵置場・保税倉庫※を保有している。貨物を預かるだけでなく、輸出入貨物のコンテナ詰出・保管・簡易梱包・流通加工・ピッキング・検品等のサービスも手掛けている。

※税関長から許可を受けた場所で、輸出入申告を行うために貨物を搬入する場所。保税蔵置場での蔵置期間は原則3カ月、蔵入れ承認を受けると承認後2年間、関税未納のまま保管が可能である。


同社は一般貨物の取り扱いに加え、将来的に需要が見込める貨物の取り扱いを進めている。具体的には、引火性液体を含む危険品等の高付加価値貨物を新たな収益源と位置づけている。2018年9月に開設した姫路地区の危険品倉庫に次いで、2020年1月にも兵庫埠頭物流センターに危険品倉庫を2棟、さらに2022年11月に1棟(兵庫埠頭物流センターの危険品倉庫は合計3棟)増設している。昨今、企業におけるコンプライアンスの取り組みが重要視されるなか、安全に危険品貨物を取り扱うことができる倉庫の需要が高まっている。足元では単価が相対的に高い危険品貨物の取扱量は拡大しており、収益性向上に貢献している。実際、2023年3月期においては、兵庫埠頭物流センターでの危険品貨物の取り扱いが好調だったことにより、同事業の営業利益は前期比211.3%増と急伸した。現時点では全体の売上高に占める同事業の割合は9.0%と小さいものの、倉庫事業独自の営業活動にも注力しており、事業規模の拡大により同社の収益性の上昇に貢献していくものと弊社は見ている。なお、倉庫事業においても自社倉庫の建設・機能強化等のために設備投資は継続して行われる。

港運事業と倉庫事業は両輪関係にある。同社は両事業を一体で展開し、顧客にきめ細かいサービスを提供することで、さらなる優位性の発揮を目指している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)

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