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エラン Research Memo(5):さらなる成長に向けて「困った」を解決する新サービス・新事業の展開を加速


■事業概要

7. 新サービス・新事業の展開
エラン<6099>はCSセットを入院中の「困った」を解決するビジネスと位置付けており、さらなる成長に向けて、住まい・医療・介護・在宅支援・予防未病・終活など入院前・退院後の「困った」も解決するビジネスの創出を目指し、より付加価値の高い新サービス・新事業への展開を加速している。

2018年9月にサービス開始した「CSセットR」はイントラスト<7191>と業務提携して共同開発した。CSセットと(株)イントラストの連帯保証人代行サービスを組み合わせた入院費用保証サービス付入院セットである。病院に入院する際には入院費用に関する連帯保証人を求められるのが通常で、独身世帯の増加などで連帯保証人の用意に苦労する患者も多いが、「CSセットR」を利用すればイントラストが連帯保証人を代行するため、入院患者の入院準備にかかる手間と心理的負担を軽減することが可能になる。病院においても、事務職員の入院手続時の労力軽減や入院費の未回収リスクの低減が図れるメリットがある。さらに入院保証会社にとっても、医療費用保証サービスの認知度向上・普及、利用者拡大というメリットが生まれ、新しいWIN-WINのサービスであると言える。

2019年4月にサービス開始した「CSセットLC入院保証」は(株)日本総険と業務提携して共同開発した。CSセット利用患者に起因する損害事故(備品破損、職員・入院患者への怪我など)を補償するサービスが自動付与された入院セットとなっている。

「CSセットR」と「CSセットLC入院保証」については、標準サービスとして新規顧客開拓時の提案初期段階に組み入れ、2021年12月期第2四半期頃から営業展開を開始して本格普及期に入っている。なお外国人旅行者向けCSセット(前払決済)については、コロナ禍の影響で外国人の入国が制限されているためサービス開始を延期している。

また、2020年3月に医療従事者向け白衣等を企画・製造・販売するクラシコ(株)と資本業務提携し、CSセットの付加価値向上に向けてオリジナル商品の共同開発も推進している。2021年11月にはオリジナル患者衣「lifte(リフテ)」の導入を開始した。肌触りとデザインを工夫し、柔らかい着心地と工業洗濯耐性を両立させた患者衣である。

2020年7月には入退院・入退所の困りごとに対する無料相談サービス「キクミミ」を開始した。相談件数は100件程度にとどまっているが、相談ニーズに応じてサービス領域を拡大中である。2021年12月期には退院直後の「困った」の解消をねらいとして「退院セット」を開発した。退院直後~4週間程度は療養環境が大きく変化し、患者本人や家族にとって心身ともに大きな負担となるため、自宅での生活に慣れるまでの期間に発生する「困った」を総合的にサポートする。退院直後のサービスから開始し、その後のステージでもサービスを拡大する方針だ。

さらに2022年12月期には、電子カルテ事業や沖縄新事業(子会社の琉球エラン、事業内容はリリースまで未公表)などの立ち上げ準備を進める方針だ。電子カルテ事業は、今後の電子カルテ普及も睨み、共同開発した電子カルテ「ELAN Quartet(カルテット)」を活用して、CSセット申込の簡素化(電子カルテから必要な情報を自動転記など)によるコスト抑制、プラスαによる付加価値向上に加えて、CSセットの新規契約や契約延長につながるシナジーなども目指す方針となっている。


グループ力強化も推進
8. グループ力強化
同社は、グループ力の強化も推進している。2019年4月には、個人請求・カスタマーサポート部門を分社化し、エランサービスが業務開始した。さらなる顧客満足度向上、生産性向上、付加価値向上を推進するとともに、自立に向けて他社の入院セット請求業務の請負も行って事業拡大を目指している。エランサービスにおける他社からの請求業務請負は2021年12月期末で入院セット運営会社4社・22施設に拡大している。

物流業務については、従来は営業の生産性向上に向けて外注化を推進してきたが、人件費上昇に伴い外注費が上昇していることに加えて、外注先への依存度が高まるリスクも考慮して、一部を自社運営する方針に切り替えた。2020年に神奈川県横浜市に自社物流センターを開設し、横浜近隣23施設への消耗品・紙オムツ等の配送・在庫管理業務を開始し、2021年12月期末には自社物流による配送が73施設まで拡大した。2023年12月期中に250施設への同社物流配送体制構築を目指している。自社物流配送数を増やすことによりきめ細かな対応が可能となり、商品を自社で備蓄することによって災害時配送や非常時欠品など有事の際のリスク分散にもつながる。

海外展開については、インドのリネンサプライ市場への進出等を視野に入れて、2018年11月にインドの医療関連商品卸会社BIHSに出資、2021年2月にインドの病院向け洗濯会社QSWに出資(さらに追加投資で出資比率が25%程度に上昇する予定)している。当面はコロナ禍で活動が制限されるが、BIHS及びQSWへの投資を通じて、インドの医療市場流通構造やリネンサプライ市場の成長可能性などの調査を継続し、新たなビジネス創出を目指してインドにおけるCSセットの実行可能性やヘルスケアビジネスへの参入などを探索する。

9. リスク要因
収益に与えるリスク要因としては競合リスクがある。入院セットサービスの認知度向上に伴って参入業者が増加している。ただし大手企業の参入はなく、参入の多くは地場のリネンサプライ業者等であり、競合リスクは小さいと言えるだろう。

入院セットビジネスは参入障壁が低いように見られがちだが、採算ラインの見極め、行政指導に適合したサービス運営、看護・介護現場への説明・運用及び請求・回収業務などの面において、ノウハウの蓄積は容易ではなく、実は想定以上に参入障壁が高いビジネスである。同社のように独自ノウハウを蓄積してビジネスモデルを構築し、全国展開している競合先は少ない。きめ細かい営業努力、充実した商品ラインナップ、より付加価値の高い新サービス・新事業への展開などで同社の競争優位性は揺るがないだろう。さらに子会社エランサービスにおける他社からの請求業務請負が拡大することによって、実質的な市場シェアがさらに上昇する可能性もあるだろうと弊社では評価している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)


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