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窪田製薬HD Research Memo(5):「PBOS」の販売パートナー契約締結の交渉は2021年夏以降の見通し


■窪田製薬ホールディングス<4596>の主要開発パイプラインの概要と進捗状況

2. 遠隔医療眼科用モニタリングデバイス「PBOS」
「PBOS」は、ウェット型加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫等の網膜疾患の患者が網膜の厚みを患者自身で測定し、撮影した画像をインターネット経由で担当医師に送り、治療(投薬)の必要性の有無を診断する遠隔医療眼科用モニタリングシステムとなる。機器の仕様については、操作ボタンの大型化や操作方法を音声ガイダンスでサポートする機能を実装するなど、高齢者の患者に配慮した設計となっているほか、正確な測定を行えるようにするため、支持台を設けた固定式となっているのが特徴だ。

米国で開発を進めている量産型試作機については2020年7月に初期型が完成し、また、AI技術を活用することによって網膜断面画像を3D化することに成功している。3D化することにより、浮腫が生じている場所や網膜厚の変化を判別する精度が高まることになる。2020年8月にはスイス最大規模の眼科大学病院と共同研究契約を締結し、3D画像の解像度の検証や測定精度向上に向けたデータ数の蓄積、ソフトウェアの改良などに取り組んでおり、これら研究の成果がパートナー候補先企業の目標水準に達していれば、販売パートナー契約締結に向けて大きく前進することになる。

このスイスの眼科病院との共同研究については、最終段階まで来ており、2021年7月頃には完了する見通しとなっている。このため、夏以降に販売パートナー候補先企業と同研究成果を持って契約交渉に入り、2021年内にもその結果が判明するものと弊社では見ている。販売パートナー契約が締結されれば、米国にて治験を実施していくものと予想される。

なお、パートナー候補企業としては、加齢黄斑変性等の治療薬を開発する複数の製薬企業が関心を見せているようだ。「PBOS」を患者が利用することによって、治療薬の投与タイミングがわかりやすくなり、適切な治療が行われることで治療薬の販売量も増大する効果があると見ているためだ。また、医師側から見ても検査のみの患者が増えると経営効率が悪くなるため治療が必要な患者をできるだけ増やしたいと考えており、病院の収益を考えても「PBOS」の普及メリットは大きい。すべての関係者にとって利益を享受できるソリューションとなっている点が「PBOS」の大きな特徴と言える。

米国でのビジネスモデルは、患者の初期負担が軽減されるレンタルサービスとして、毎月利用料を徴収する方式となる可能性が高い。保険適用されれば患者負担も大幅に軽減できるため普及も加速していくものと考えられる。米国医師会では、2020年7月1日付で、在宅OCTの活用を推進するため、保険適用に必要となる手続きのガイドラインを発表しており、販売承認されれば普及する条件は既に整っていると言える。加齢黄斑変性などの網膜疾患は根治療薬がないことから、一度「PBOS」を使うと失明しない限りは継続して使用される可能性が高く、ストック型ビジネスとして将来的に安定した収益源に育つ可能性がある。米国で普及が進めば、全世界へと展開していく計画だ。

潜在的な市場規模は、当面は米国におけるウェット型加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫等の患者が対象となる。同社資料※1によれば、加齢黄斑変性の患者数は全世界で1.38億人と推定され、うち米国は1,230万人程度、このうちウェット型は約10%の123万人程度となる。また、糖尿病は世界で約4.15億人の患者数に上り、その約3割が糖尿病網膜症を引き起こすと言われている。同社資料によると、日本では糖尿病網膜症患者の約2割が糖尿病黄斑浮腫を併発すると推定されており※2、世界で試算すると1.24億人×20%で約2,480万人となる。米国での患者比率が加齢黄斑変性と同じく1割弱程度と仮定すれば、米国での糖尿病黄斑浮腫の患者数は220万人程度と推計される。これらの試算に基づいた米国での潜在顧客数は340万人強となる。仮に月額利用料を千円、普及率30%とすれば年間で120億円の市場が創出されることになる。潜在顧客数は加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫だけでなくその予備軍なども含めれば全世界で1億人を超えると見られ、潜在的な成長ポテンシャルは極めて大きいと言える。

※1 出典:Market Scope, The Global Retinal Pharmaceuticals & Biologic Market, 2015.
※2 中野 早紀子,第114回(公財)日本眼科学会総会2010:135(糖尿病黄斑浮腫は糖尿病網膜症患者の20%に発生するという報告に基づく)。


なお、同社資料が示すとおり、在宅OCTに関心を持っている眼科医や患者の割合はいずれも50%以上となっており※、関心の高さがうかがえる。また、眼科医で患者が在宅OCTを受け入れると推定した割合も米国で38%、日本で30%という結果となっており、こうした調査からも「PBOS」の潜在需要は大きいと弊社では見ており、今後の開発動向が注目される。

※加齢黄斑変性治療薬を手掛けている大手製薬企業であるノバルティスが2018年に作成した在宅OCT市場に関する調査。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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