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ケネディクス Research Memo(5):コロナ禍に伴う一過性要因により、不動産売却益の獲得に大幅な遅れ(2)


■ケネディクス<4321>の業績動向

4. 2020年12月期上期における投資実績
不動産投資事業における自己勘定(エクイティ)投資については、コロナ禍に伴う活動制限や不動産取引の一時的な停滞により、新規投資は約97億円(前年同期は約126億円)にとどまった。住宅を対象としたブリッジファンド(コア)を中心に積み上げたほか、オフィスなどを対象としたオポチュニスティックにも注力した。一方、投資元本の回収についても、ブリッジファンドやオポチュニスティックを中心に約130億円(前年同期は約141億円)にとどまったが、2020年12月期上期においては回収超過の状況となっている。その結果、2020年6月末の投資金額総額(投資エクスポージャー)は689億円(前期末722億円)と若干減少したものの、引き続き分散されたバランスの良いポートフォリオを維持している。なお、2020年12月期下期については、本格的な活動再開とともに、積極的に新規投資へ資金を振り向ける計画のようだ。

5. その他の活動実績
(1) メインスポンサーREITの取り組み
同社の成長を支える柱の1つである「ベースAUM」は、前述のとおり、前期末比1,122億円増の1兆8,893億円と順調に伸びている。そのうちKDO※1は、同社との協働により、希少性の高い都心・築浅物件を取得する一方、築年数が相応に経過した物件の売却等により資産入替を実施した。KDR※2については、中心となる賃貸住宅の稼働率は安定的に推移、賃料も増加基調が継続しており、コロナ禍においても安定稼働している。また、KRR※3についても、重点投資分野である「生活密着型商業施設」は底堅く推移しており、コロナ禍においても安定的な需要が見込まれるラストマイル型配送センター※4や食品スーパーなどへ厳選投資を実施している。私募REITのKPI※5については、コロナ禍がホテルの稼働率に影響を及ぼしているものの、長期リース契約とブランド力の向上(ホテルのテナント及びオペレーターの変更等)により収益安定化を図っている。

※1 ケネディクス・オフィス投資法人の略。東京経済圏を中心とする中規模オフィスビルの最大級REITである。2020年6月末のAUMは4,448億円(前期末比192億円増)。
※2 ケネディクス・レジデンシャル・ネクスト投資法人の略。「人が居住・滞在する空間」への幅広い投資を行う住居系REITである。2020年6月末のAUMは2,489億円(前期末比138億円増)。2022年までに資産規模3,000億円を目指す方針である。
※3 ケネディクス商業リート投資法人の略。物流施設への投資で新たなステージを迎える生活密着型商業REITである。2020年6月末のAUMは2,277億円(前期末比27億円増)。
※4 最終消費者に商品等を届けるための物流施設。
※5 ケネディクス・プライベート投資法人の略。大規模オフィスビルを中心にホテル・商業施設等へ投資する私募REITである。2020年6月末のAUMは1,224億円(前期末比横ばい)。


(2) 私募ファンド(コア)の動向
同社成長のもう1つの柱である私募ファンドのAUMについても、国内外の大手機関投資家の強い投資ニーズに支えられ、コアファンドを中心に高成長を実現。コロナ禍においてオポファンドの受託も増えている。2020年6月末のAUMは前期末比764億円増の8,453億円と順調に拡大した。

(3) 不動産クラウドファンディング事業の進捗
野村総合研究所との協業により、新たなプラットフォームとして2019年12月期に立ち上げた「不動産クラウドファンディング事業」についても、個人投資家を中心とした底堅い投資ニーズにより着々と実績を積み上げている※1。特に、緊急事態宣言解除後初となる「KURAMAE214」※2については、募集開始後3分で満額申し込みを、約6分で募集上限額となる1.8億円の申し込みを達成した。本事業については、個人投資家に対してクラウドファンディングによる様々な投資機会を提供することにより、手数料ビジネスの強化を図っていくところに狙いがある。ファンド組成における様々なサポートや質の高いアセットマネジメントの提供により他社との差別化を図る戦略であり、早期に登録会員数1万人を目指す。

※1 これまでの実績として、ホテル・賃貸住宅・保育施設など複数のアセットクラスを対象に9ファンド(総額約18億円)を組成し、募集を完了している。
※2 東京都台東区蔵前所在の単身者向け新築マンションの不動産担保ローンを投資対象としたファンド。想定利回り3.2%(年換算)。予定運用期間は4ヶ月。


(4) デジタル・セキュリタイゼーションに向けた動き
不動産投資市場の未来像を展望し、ブロックチェーンなどのフィンテックを利用した新たなビジネスを立ち上げるため、2019年12月期には専門部署である「デジタル・セキュリタイゼーション推進室」を設立。不動産投資市場に流動性や簡便性を付与し、個人投資家層の拡大を図るため、セキュリティ・トークン※を活用した不動産プラットフォームビジネスの確立に向けて準備を進めている。

※ブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳技術を利用して、不動産等の取引可能な資産の所有権を電子的に記録したデジタル証券である。2020年5月の金融商品取引法の改正により法的な位置付けが明確化され、不動産証券化への応用が期待されている。特に、セキュリティ・トークンにより、1)異なる特性を有する不動産証券化投資商品の提供、2)セカンダリーでの売買を通じて、不動産売買の流動性に関する課題を解決、3)オンライン情報開示を通じたタイムリーかつ柔軟なデータ提供などが可能となる。


2020年7月には、「不動産セキュリティ・トークン」の商品開発に向けた新たな取り組みの1つとして、ブロックチェーン基盤を運営する(株)BOOSTRY及び三井住友信託銀行との協業により、不動産証券化ストラクチャーにブロックチェーンを活用した「デジタル証券」を発行した。スマートフォン上のアプリケーションを経由して投資家への販売が行われるほか、投資家間の売買(セカンダリー取引)も簡単にできる仕組みとなっている。本件により得られた知見や課題を踏まえ、「不動産セキュリティ・トークン」を活用した不動産プラットフォームの早期確立を目指していく方針である。

(5) アフターコロナを見据えた新しい働き方
アフターコロナを見据えた新しい働き方にも取り組んでいる。本社スペースについては、より流動的な利用の促進とコミュニケーションが取りやすい環境を整備するとともに、公共交通のハブエリアへのサテライトオフィスの新設や在宅勤務の活用により一人ひとりに適した多様な働き方の選択肢を提供。また、ワーケーション※の活用に向け、リトリート施設「PerkUP軽井沢」の運用も開始した。

※「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語。リゾート地や地方など、普段の職場とは異なる場所で働きながら休暇を過ごす仕組みのことである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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