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きちりHD Research Memo(1):新規事業を立ち上げ、コロナ禍でも安定した収益基盤の構築を目指す


■要約

きちりホールディングス<3082>は、自社開発した「KICHIRI」や「いしがまやハンバーグ」等の業態を展開する飲食事業のほか、様々な分野の有力ブランド・コンテンツホルダーと協業した店舗のプロデュースや、自社グループで店舗の業務効率向上のため活用しているITプラットフォームを同業他社に提供するプラットフォームシェアリング事業(以下、PFS事業)を展開している。2020年6月末の直営店舗数は102店舗(前期末比7店舗増)となっている。2019年1月より機動性を持たせた事業運営を行うため、持株会社制に移行した。

1. 2020年6月期業績概要
2020年6月期の連結業績は、売上高で前期比18.8%減の8,048百万円、営業損失で368百万円(前期は406百万円の利益)となった。新型コロナウイルス感染症拡大とそれに伴う緊急事態宣言発出によって4月から5月下旬にかけて約9割の店舗で休業を強いられたことが要因だ。既存店舗の売上高は通期で前期比25%減少となったが、4月−5月だけで見ると、90%を超える落ち込みとなった。なお、店舗の出退店については「いしがまやハンバーグ」や「KICHIRI」など合わせて8店舗を出店し、賃貸契約満了によって1店舗を退店した。

2. 2021年6月期の業績見通しは未定
2021年6月期業績は、新型コロナウイルス感染症の動向が事業に与える影響が不透明で、合理的な業績予想の算出が困難なことから未定としている。7月の既存店売上高は前年同月比で42.5%減とマイナス幅が縮小しているものの、依然大幅な減少が続いており、今後も厳しい状況が続くとの認識で、店舗売上の落ち込みをカバーすべく新たにテイクアウトやデリバリー事業、D2C事業(EC販売)、ウイルス予防対策として総合除菌サービス事業を開始した。これら新規事業に加えて2019年6月期より子会社の(株)オープンクラウドで提供を開始したWeb面接プラットフォーム「Apply Now」の拡販を進めることで店舗事業の落ち込みをある程度カバーし、コロナ禍における逆境を乗り越えていく戦略だ。既存店舗については、家賃の見直し交渉を不動産オーナーと協議しつつ、テイクアウトサービスも始めることで収益悪化を食い止めていく。

3. 次世代型ビジネスモデルによる成長戦略
同社は、「ライフスタイルの多様化」「市場規模の縮小」「人材不足」の3つの環境変化によって、外食業界は生存競争がさらに激化していくとの認識から、2次元(立地×業態)での成長に独自のFood Tech戦略を加えた次世代型ビジネスモデルを構築することで成長を目指してきた。今回、新型コロナウイルスの影響で、飲食業界の環境が激変したことを受け、店舗事業の売上減少分をヘッジするためデリバリー事業やD2C事業へと展開し、Food Tech事業の多角化を推進していくことで、中長期的な成長を目指していく方針とした。なかでも「Apply Now」については、飲食や人材サービス業界など採用数の多い企業向けに採用が進んでおり、今後の成長事業として注目される。2020年5月には(株)マイナビと資本業務提携を発表し、マイナビにて全国拡販を開始しているほか、同年秋にはマイナビのアルバイト情報サイト「マイナビバイト」との直接連携を開始することで、導入企業の一段の拡大が期待され、中期的に同社の収益に貢献するものと予想される。

■Key Points
・業態開発力と人材採用・育成力に加えて、ITを店舗運営に積極的に生かす先進性が強み
・2021年6月期の業績見通しは未定だが、四半期ベースの業績は2020年6月期第4四半期を底に回復を目指す
・コロナ禍で伸びる新規事業を立ち上げ、ポートフォリオの多角化による「次世代型ビジネスモデル」の構築により成長を目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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