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ラクオリア創薬 Research Memo(6):tegoprazanが同社初のヒト領域の新薬として2019年販売開始


■導出済みプログラムの進捗状況

1. 導出済みプログラムの概況
同社グループは、ラクオリア創薬<4579>本体がヒト領域で8プログラム、動物領域で2プログラムの合計10プログラムを導出しているほか、子会社のテムリック(株)がヒト領域で1プログラムを導出しており、グループ全体で11の導出済みプログラムを有している。2018年央の時点では導出済みプログラムの総数は上記よりも2多い、13プログラムだった(同社本体で12プログラムを導出)。しかしながらその後、ZTE Biotech(中国)との合弁プロジェクトが白紙となったことで、5-HT2B拮抗薬(RQ-941)と5-HT4部分作動薬(RQ-10)は同社に戻り、改めて導出先を探すという状況になっている。

導出済みプログラムの中で、最も進んでいるのは動物領域の2プログラムだ。既に米国おいて販売され、同社にロイヤルティ収入をもたらしている。「GALLIPRANT®」については欧州での販売が2019年前半に計画されており、現在その準備が進められている。一方「ENTYCE®」についてはイヌ用に加えて、ネコ用に向けた試験がスタートしている。

同社にとってヒト領域の医薬品第1号になると期待されるtegoprazanは、導出先のCJヘルスケア(韓国)が2018年7月に製造販売の承認を獲得し、その後、薬価や商品名(「K-CAB®」)も決まって、2019年3月に販売を開始した。CJヘルスケア(韓国)はtegoprazanのサブライセンスにも精力的に取り組んでおり、これまでの中国に加え2018年12月にはベトナム、2019年1月にはメキシコの現地企業へサブライセンスが行われた。

これら以外の各プログラムも、ジプラシドンを筆頭に着実に研究開発が進捗している状況にある。


中南米やアジアの製薬企業へのサブライセンスの動きも活発化
2. tegoprazan(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー/P-CAB/RQ-4)の進捗状況
(1) プログラムの概要とこれまでの状況
P-CABとはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(Potassium-Competitive Acid Blocker)の略だ。同社のP-CABの一般名はtegoprazanと言う。

P-CABは胃食道逆流症を主たる適応症としており、この市場では現在、PPIが主流となっている。PPIの代表的な薬剤としては、第一三共<4568>の「ネキシウム®」、武田薬品の「タケプロン®」などがある。P-CABはPPIの置き換えを狙う次世代新薬として期待されている。P-CABでは武田薬品がトップランナーで、「タケキャブ®」(一般名はvonoprazan)を2015年2月に発売済みだ。同社のtegoprazanはそれに次ぐ2番目のポジションにある。

P-CABへの期待が高い理由はその市場規模にある。PPIやP-CABなどの胃酸分泌抑制剤の世界市場規模は2兆円と言われており、日米欧の主要先進国を始めとして世界中に市場が広がっている。前述のように、この市場ではPPIが主流となっているがP-CABはそれを代替できる潜在力(薬効、特性など)があるとされている。

同社はtegoprazanを医薬品メーカーに対してライセンスアウトすることで収益化を実現することになるが、これについて同社は、まずアジア地域(韓国・台湾・中国及び東南アジア)ついてCJヘルスケア(韓国)にライセンスアウトした(2010年9月及び2014年11月)。さらに2017年12月にはCJヘルスケア(韓国)の対象地域をROW(rest of the worldの略、具体的には中東、中南米及び東欧)へと拡大した。一方、日米欧の3大市場については導出先を追求している状況にあり、導出候補プログラムという位置付けとなっている(導出候補としてのtegoprazanについては後述)。

(2) 韓国の状況
CJヘルスケア(韓国)は2017年8月に韓国で承認申請を行い、2018年7月に韓国当局より製造販売が承認された。その後同社は新薬発売に向けた準備を進め、商品名については「K-CAB®」と決定した。当初は2018年中の発売も期待されたが、薬価をめぐる交渉に時間がかかったこともあり、2019年に持ち越されて3月に発売となった。

薬価については、韓国保健福祉部(日本の厚生労働省に相当)より、「K-CAB® 50 mg錠」1錠あたり1,300ウォンで薬価収載されたことが発表された。韓国でのPPIの薬価は1錠あたり約900ウォンであることから、K-CAB®は画期的な新薬としてかなりの高水準で薬価算定されたと見ている。CJヘルスケア(韓国)の7ヶ月におよぶ薬価交渉の成果が実った形だ。

また、K-CAB®の適応症は非びらん性胃食道逆流症(NERD)とびらん性胃食道逆流症(EE)の2つとなっている。日本で発売されている「タケキャブ®」は非びらん性への適応がなく、この点はtegoprazanの大きな特長と言え、導出が済んでいない日米欧での展開を考える上では重要なポイントになる可能性がある。

さらに、CJヘルスケア(韓国)は、K-CAB®の韓国での販売に関して、2019年1月にChong Kun Dang Pharmaceutical Corp.(鐘根堂、CKD Pharma:韓国)とのコ・プロモーションを発表した。鐘根堂(韓国)は韓国国内有数の製薬企業であり、CJヘルスケア(韓国)より規模が大きい。鐘根堂(韓国)は消化器系疾患の分野に強みを持っていることから、鍾根堂(韓国)の営業力と消化器系疾患のプレゼンスが加わることで、K-CAB®の更なる販売拡大も期待できる状況となっている。

同社への収益貢献としては、販売開始時のマイルストン収入と販売額の一定割合のロイヤルティ収入が入ることになる。マイルストンは2018年12月期からの期ズレで2019年12月期に計上されることになる。ロイヤルティ収入については、期中の発売となるため、初年度の2019年12月期は3月~12月の10ヶ月間の売り上げが対象となる。

韓国におけるPPI/P-CABの市場規模は約5,000億ウォン(約500億円)と同社では推定しており、初年度は100億~200億ウォン規模の売り上げが目標となると見られる。


(3) 中国の状況
CJヘルスケア(韓国)はtegoprazanについて中国のShandong Luoxin Pharmaceutical Group(中国:以下、「Luoxin」)にサブライセンスしていたが、そのLuoxin(中国)は2018年10月からフェーズ3試験をスタートした。当初はフェーズ2実施を要求される可能性もあったが、そこをスキップできたことで臨床開発にかかる期間を大幅に短縮することに成功した。それでもフェーズ3試験には3年ほどかかり、現状では2021年に終了予定とみられる。

同社は契約に基づき、Luoxin(中国)での進捗に応じてマイルストンを受け取ることになる。今回のフェーズ3の開始によって同社は2018年12月期第4四半期にマイルストンを受領した。中国におけるPPI/P-CABの市場規模は約26億ドル(約2,600億円)と同社では推定しており、日米欧に引けを取らない大きな医薬品市場でのtegoprazanの展開に期待がかかる。

(4) ベトナムの状況
CJへルスケア(韓国)は、ベトナムのVimedimex Medi-Pharma JSC(ベトナム:以下、「Vimedimex」)との間で、tegoprazanのサブライセンス契約を締結した(2018年12月20日)。これによって同社は、契約に基づいて一時金を受領した。

Vimedimex(ベトナム)はベトナム医薬品流通のトップ企業で、PPI市場でトップシェアを有している。ベトナムではtegoprazanの臨床試験は実施しない形で、これまでの臨床試験データを基に承認申請を行う見込みで、CJヘルスケア(韓国)はVimedimex(ベトナム) と協業してtegoprazanの新薬発売に向けて準備を進める方針だ。同社にはその進捗に応じてマイルストンが入るほか、販売開始後は一定割合がロイヤルティ収入として入ることが見込まれている。CJヘルスケア(韓国)によれば、ベトナムでのtegoprazanの販売開始時期は2021年と予想されている。

(5) 中南米の状況
CJヘルスケア(韓国)は2019年2月、tegoprazanについてLaboratorios Carnot(メキシコ:以下、「Carnot」)との間でサブライセンス契約を締結した。同社はこれに関して契約一時金を受領した。

Carnot(メキシコ)との契約内容は、中南米17ヶ国を対象にtegoprazanのサブライセンスを行うもので、CJヘルスケア(韓国)はCarnot(メキシコ)にtegoprazanを10年間供給する。その契約規模は総額8,400万ドルと推定されている。契約に基づき同社は一時金並びにロイヤルティを得ることになる。

今回サブライセンス対象となった中南米の多くの国では、ベトナムと同様これまでの臨床試験データを用いて承認申請を行うものと見られるが、メキシコでは新薬の承認申請の前に少人数でのデータを取得する試験が必要とされる可能性があり、そのため新薬発売にはベトナムよりも若干時間がかかり、2022年の販売開始が予想されている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)



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