アーバネット Research Memo(2):人口流入が続く都心エリアでの投資用ワンルームマンションに特化
1. 事業概要
アーバネットコーポレーション<3242>は、東京23区内を基盤とした投資用ワンルームマンションの開発・1棟販売(卸売:BtoB)を基軸事業としている。用地取得からマンション販売会社への卸売までを手掛けており、設計・開発に特化しているところに特徴がある。設計事務所からスタートしたデベロッパーとして、機能性やデザイン性に優れた「ものづくり」や、東京23区内で駅から徒歩10分以内という好立地へのこだわりが入居者からの高い支持を受けるとともに、従来の不動産投資家に加え、老後の生活に不安を抱える新たな若年層の個人投資家や海外投資家の参入、相続税の実質増税に対応する富裕層など、いくつもの追い風により業績は好調に推移している。
事業セグメントは、「不動産事業」の単一となるが、サブセグメントとして「不動産開発販売」「不動産仕入販売」「その他」の3つに分類される。「不動産開発販売」は、投資用ワンルームマンション「アジールコート」を中心として、分譲用ファミリーマンション「グランアジール」や分譲用コンパクトマンション「アジールコフレ」も手掛ける。なお、分譲用マンションは、現在までのところ3年に2棟の開発にとどめており、販売は自社で行っている。「不動産仕入販売」は、中古物件の戸別販売や不動産仕入販売等を行っている。「その他」は、不動産仲介及び不動産賃貸業等である。なお、安定収益源の確保を目的として、ストックビジネスの強化にも取り組んでいるが、自社保有の賃貸収益物件は2018年6月末時点で6棟※となっている。また、2017年7月にはホテル事業へも参入した。2018年6月期の実績では、「不動産開発販売」が売上高の96.0%を占めている。
※ほかにも室単位で保有しているものが複数あるようだ。
投資用ワンルームマンションの販売は、提携する販売会社への1棟販売が基本であるが、信頼性が高い販売会社を厳選した上で緊密な関係を築いている。また、販売手法の多様化を図る目的から、引き合いが強くなってきた海外投資家などに対する1棟一括直接販売についても試行的に行っている。
また、2015年3月には、戸別分譲事業及び賃貸事業、マンション管理事業に関わる子会社(株)アーバネットリビングを設立した。基軸事業でのBtoBを親会社に残し、BtoCの分野を子会社にて取り込むことにより、将来に向けたグループでの事業拡大が目的とみられる。
設計事務所をルーツとするマンションデベロッパー
2. 会社沿革
同社は、一級建築士である現代表取締役社長の服部信治(はっとりしんじ)氏によって1997年7月に設立された。マンション専門の設計事務所に共同経営者として勤務していた服部氏は、自らのデザインによるマンションの企画・開発を行うことを目的として独立した。
設立当初は、企画や設計、コンサルティングを中心に実績を積み上げ、設立3年後の2000年12月に、当初の計画どおり、マンション開発販売事業を投資用ワンルームマンションでスタートさせた。
投資用ワンルームマンションを主力としたのは、その頃からJリートや不動産ファンドなど、賃貸収益物件への投資事業が拡大し始めたことや、自社開発物件を販売専門会社へ任せられる製販分離型の業界構造となっていることが、少数精鋭の経営を目指していた同社にとって参入しやすかったことによる。同社の得意とする設計・開発に特化したことで、入居者ニーズを実現した人気の高い物件を開発できたことに加えて、都内のワンルームマンションに対する需給ギャップ(需要が供給を上回る状況)や個人投資家からのニーズの拡大など、外部環境も同社の成長を後押しして、2007年3月にはJASDAQ市場へ上場を果たした。2008年のリーマンショックによる金融引き締め時には開発物件の凍結を余儀なくされたが、損失を1期に集中させることと、金融機関やゼネコンとの良好な関係を続けることを前提とした徹底的な資産縮小の経営計画のもと、それまで保有していなかった販売部門を販売員の新規採用により新設し、他社物件の買取再販事業に全社を挙げて参入したことにより、厳しい環境を乗り切ることができた。その時期に培われた販売ノウハウなどは、現在の買取再販事業や分譲用マンションの販売等に生かされている。
また、安定収益源の確保を目的としたストックビジネスの強化にも取り組んでおり、賃貸収益物件の自社保有に加えて、2017年7月にはホテル事業へも参入した(2018年6月に自社開発ホテルプロジェクト第1号を発表)。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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