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カイオム Research Memo(4):開発パイプラインはいずれも非臨床試験段階


■開発パイプラインの今後のスケジュール

現在、カイオム・バイオサイエンス<4583>の開発パイプラインとしては、「LIV-1205」「LIV-2008/LIV-2008b」「抗セマフォリン3A抗体」などがあり、いずれも非臨床試験段階にある。また、基礎・探索研究段階の新規開発プロジェクトについても複数開発を進めている。このうち、「LIV-1205」「LIV-2008b」については、ADCTとADC開発用途でのオプションライセンス契約を締結しているが、その他のパイプラインについては導出活動に取り組んでいくと同時に、自社で初期臨床段階までの開発を行い、パイプラインの価値を高めることで導出につなげていく戦略を打ち出している。資金的な制約もあるため、まずは「LIV-1205」の初期臨床開発から進めていく予定となっている。各パイプラインの開発状況は以下のとおり。

(1) LIV-1205

「LIV-1205」は、肝臓がん等の難治性がんを標的としたファースト・イン・クラス※の治療用抗体候補で、がん細胞に発現するDLK-1と呼ばれる細胞膜タンパク質と結合することで、がん細胞の増殖活性を阻害する薬効が動物実験にて確認されている。DLK-1は正常な細胞では殆ど発現しないため副作用も少ないことが期待される。また、DLK-1は、幹細胞や前駆細胞のような未熟な細胞の増殖・分化を制御すると考えられている。

※新しい薬効として初めて承認される「画期的新薬」のことを指す。

同社では肝臓がんを対象疾患とした開発を進めていく予定としている。肝臓がん患者のうち、DLK-1が発現する患者は全体の約2割と見られている。このため、DLK-1を発現する患者の属性を分析するため、バイオマーカーの探索を同時並行で進めている。属性が判明した上でコンパニオン診断を行って初期臨床試験を進め、成功確率を上げると同時に治験の効率化を図っていく考えだ。今後、KOL(Key opinion leader)※1と相談しながらCRO(治験業務受託企業)の選定作業を進め、2018年半ばまでにCMC開発※2を終えて、2019年内の臨床第1相試験開始を目指している。

※1製薬企業の販売促進に影響力を持つ医師などの専門家。
※2 Chemistry(化学)、Manufacture(製造)、and Control(管理)の略で、医療の原薬、製剤の研究、開発、製造、品質管理等の開発のことを指す。

また、ADCTでも現在ADC開発用途での抗体の評価を進めている段階にあり、2017年前半にも今後の開発方針が決まるものと思われる。本契約に移行すれば、同様に2018年頃から臨床試験が開始される可能性がある。同様に、米国国立がん研究所向けの小児がんを対象とした開発の取組みも進めていく。

(2) LIV-2008/LIV-2008b

「LIV-2008」は多くの固形がんを標的としたベスト・イン・クラス※1の治療用抗体候補となる。乳がんや肺がん等の固形がんに多く発現するTROP-2と呼ばれる細胞膜タンパク質と結合することで、がん細胞の増殖活性を阻害する働きを示す。異なるエピトープ※2を認識する2つの開発候補品(LIV-2008、LIV-2008b)がある。

※1同一薬効、同一メカニズムの中で2番手以降であっても、最も優れている新薬のこと(薬効が強い、毒性が低い、安定性が高い等)を指す。
※2抗体は抗原の特定の構造を認識して結合するが、その構造の一部分のこと。

TROP-2は、様々な固形がんで発現が増強することが確認されており、がん治療のターゲットとして注目されている分子で、「LIV-2008」は動物モデルにおいて、単独でも複数のがん種に対し、顕著な腫瘍増殖阻害効果を示すことが確認されている。また、「LIV-2008b」は、標的抗原であるTROP-2に結合した後でがん細胞内に取り込まれるインターナリゼーション活性を有しているため、ADC(抗体薬物複合体)抗体としての開発も期待されており、現在、オプションライセンス契約を締結したADCTで抗体の評価を行っている。2018年前半頃までに評価を終え、開発方針を決定するものと想定している。また、「LIV-2008」については同社でnaked抗体での導出活動を行っているほか、今後は初期臨床に向けた準備も進めていく予定となっている。

(3)抗セマフォリン3A抗体

抗セマフォリン3A抗体については、適応領域として目指していた「敗血症等により誘導される播種性血管内凝固症候群(DIC)モデル」等での薬効試験において期待していた追加データの取得が困難となったため、新たな適応領域での導出活動を進めている。共同研究先である横浜市立大学大学院の中村史雄(なかむらふみお)准教授、五嶋良郎(ごしまよしお)教授らの研究グループが、英国科学雑誌「Nature Communications」(2014年10月31日オンライン版)に掲載した論文によると、アルツハイマー病や中枢神経系の再生領域において、新たな治療法の開発につながるセマフォリン3Aの作用メカニズムを解明したとしており、今後こうした領域での治療薬の開発が期待される。また、 セマフォリン3Aは中枢神経系以外にも多岐にわたる疾患への適応の可能性が示唆されている。アンメットニーズの観点から開発の可能性が高い疾患での導出にフォーカスしていくと思われる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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