【FISCOソーシャルレポーター】中国の暗号通貨の規制は、国家として正しく合理的
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※2017年10月22日に執筆
■ICOは規制して、マイニングは規制しない中国
9月、中国の中央銀行である中国人民銀行は、ICO(Intial Coin Offering、仮想通貨やトークンを利用したクラウドファンディングの一種)を違法な資金調達手段として規制するという発表を行いました。
確定事項として、
・これまでの、すべてのICOの実態を精査予定
・今後のICOはすべて停止(すでに終わったものも再調査する)
・ICOで集めた資金も返還命令を出す可能性がある
・すべての中国国内の取引所は中国当局と情報共有の命令
という内容が通知されています。
何故中国は、ICOは規制し、ビットコインのマイニング(採掘、ビットコインを新規発行して所有する行為)は規制しないのか。
これまでの2014年~2016年の間に、中国がマイニングのシェアの過半数を占めていることに対して「ビットコインは中国政府がマイニング施設を規制すればおしまいだ」というような論はたびたび出てきましたが、現在に至るまでマイニングの規制は行われていません。
それに対して、ICOは、ブームになったらすぐに規制を行いました。
どういった理由で、中国という国家が暗号通貨の規制を判断しているか考えれば、その合理性が理解できるので解説します。
国家にとって、マイニングは「富」を生み出すのです。
中国でビットコインが採掘される限り、ビットコインは中国の輸出品であり、資源採掘国のようなものです。中国は、ビットコインが採掘され、日本や他の諸外国はそのビットコインを日本円や米ドルで購入します。
つまり、ビットコインは、中国の輸出品です。規制する合理性はありません。だから、今に至るまで規制がされていません。
このようにマイニングは富を生み出す一方、ICOは国家から富が流出しやすくなります。
中国国内の投資家が、海外のICOプロジェクトにお金をつっこみ、国家からお金が出ていくのは不都合です。
■中国は、インターネット黎明期から、情報の本質に気付いたほぼ唯一の国
そもそも中国は、インターネットが黎明期の早い段階から、その本質に気づいてグレート・ファイア・ウォール(中国政府がネット検閲して好ましくない情報をブロックするなどの操作を行う行為)で規制して、情報と金融インフラを米企業に握らせていないほぼ唯一の国なのですから、暗号通貨に関しても非常に深くまで考えているのは容易に想定できます。もちろん、それは国家として合理的なのであって、国民の利便性とは別ですが。
現代の最大の保護貿易は、中国のインターネット規制です。
グレート・ファイア・ウォールで規制して、他国の参入を許さず、アリババとテンセントというアジア最大の規模になる会社を中国国内に生み出し、今はその2社が東南アジアのスタートアップに巨額の出資を繰り返しています。
これから5-10年スパンで成長するアジアの有望ネット企業の多くに、テンセントかアリババの資本が入っています。これが中国の合理性がよく分かる事例だと思います。
■中国の規制判断は、「国家としての合理」が基準になると考えて良い
暗号通貨の話に戻ります。
ICOに限らず中国政府の立場になったら、国民がリップル(XRP)などを買っていたら、不都合極まりないことは容易に想像できます。
他国の企業が発行する、価値が不確かなアセットのICOに国民が参加することを野放しにするのは、自国内でジャンク債を売る外国人を野放しにするのと同義です。そう遠くないうちに、他国の企業の配当系トークンや、他のXRPのような企業が発行するトークンに類するものは、中国の取引所から全て上場廃止命令する可能性は十分あるでしょう。理由は、国家としてそのほうが合理的だからです。
中国のICOは、時間がたてば、規制を整えて解放されると思います。ただし自国企業がお金を集めるためのICOです。他国の企業がICOによって中国から資金調達を行うことは許さないでしょう。同じく、国家としてそのほうが合理的だからです。
そして、ビットコインのマイニングなどは引き続き規制されないでしょう。理由は先述したように、中国国内でマイニングしていることもありますが、ビットコインは純粋なP2P(ピアツーピア、個人同士が対等に通信できるモデル)であり、非中央集権(decentralized)な仕組みなので、本質的に規制できないことは中国政府もよく理解しているはずです。
そのうえで、取引所のKYC(顧客確認)の強化など出来る限りの規制を実施されることは予想され、非常に強かだと感じます。中国政府は、日本の大多数のユーザーが思うより、遥かに懸命であり、合理的です。
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執筆者名:平野淳也
ブログ名:Think Nomad
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