トランプ訪中へ(2)【中国問題グローバル研究所】
※この論考は4月28日の<Trump Travels to Beijing>(※2)の翻訳です。
中国の進む道
中国は対米関係で経済・政治の安定を求めるだろうが、中国が自給自足を目指す一方で、他国が中国のサプライチェーンに依存する状況は変わっていない。中国当局はつい先日、MetaによるAI企業Manus(マナス)の買収を阻止した。Manusは中国人が中国で設立した企業だが、スタッフと知的財産を昨年シンガポールに移転している。今年に入り、中国政府は買収審査の過程でManusのスタッフ2人の中国出国を禁じた。企業関係者に対する中国政府の出国禁止措置は以前から行われていたが、他の幹部を威嚇する目的でなければ、その意図は必ずしも明確でないことが多い。
米国企業によるシンガポール企業の買収に中国がどのような管轄権を持つのかは不明だが、中国関連企業の買収に関しては、中国企業かどうかを問わずすべてのテック企業に警告を発しているのは明らかだ。シンガポールへの移転は、中国の干渉を受けずにこうした買収を可能にするための一環でもあった。
これに関して思い出すのが、長江和記実業(CKハチソン)がパナマ運河の港湾を含む港湾管理事業を売却しようとした計画に中国政府が干渉した問題だ。この件は依然として進展が見られず、CKハチソンは今なお売却を完了していない。
Manusの場合、その技術はすでにMetaが一部のソフトウェアアプリケーションに導入しており、ザッカーバーグがトランプと親しいことを考えると、米国側は首脳会談で間違いなくこの規制について取り上げるだろう。EUや英国の規制当局が米国テック企業の事業に対して課税、規制、または制限を示唆した際、米国は自国の企業に対して何らかの措置が取られれば関税を課すと脅してきた。トランプは中国に対しても同じ手を使うかもしれないが、中国が買収を阻止したのは単に首脳会談で他の分野での譲歩を引き出すためだという皮肉な見方もできるかもしれない。現代の高度な国際政治の本質とは、そのようなものだ。
一度は延期されたものの、首脳会談は予定通り開催される可能性が高い。トップ会談は常に重要であり、通常の外交活動に欠かせない要素だ。双方の期待値が低いことを考えれば、この会談は成功するか、あるいは少なくとも失敗することはないはずだ。どちらも相手が求めるものを持っているが、5月中旬に何らかの合意に至ったとしても、数週間のうちに忘れられるか無視される可能性が高い。中国はこれまで何度も農産物の大量購入を約束しながら、実行に移さなかった。トランプ1期目の経験が教訓になる。トランプに関しては、帰りの飛行機で前言を翻すことさえ珍しくない。
中国が近い将来に経済モデルを変える兆候はない。直近の5カ年計画は概ね既存の傾向の継続を規定している。また、米国が変更を促すような動機付けや大きな取引を提示できる兆候もない。中国は、トランプが取引を極めて重視する人物であることを理解している。トランプは実際の影響を意に介さず、勝利と呼べるような、大きな数字が絡む単純な取引を求めている。しかし、大豆や炭化水素の輸出を拡大するだけでは中国に対抗できない。中国の重商主義に効果的に対抗するには、各国が協力し、総力を結集させて中国に対処する必要がある。トランプはそのモデルを崩壊させた。米国が自国の利益だけを追求して限定的な取引にしか関心を持たないのであれば、中国に対して統一戦線を張ることは今や極めて困難になっている。
トップ会談は必要であり、トランプと政権スタッフは中国側と対話すべきだ。それは多くの欧州首脳が訪中した時と変わらないが、期待しすぎてはいけない。短期的な取引はありそうだが、大きな取引は想定されていない。最大の目的は安定した関係の回復だが、それが達成されたとしても両国の関係は今後も緊張に満ちたものとなるだろう。トランプはリアリティ番組の大統領のように振舞っており、たとえ訪中が順調に進んだとしても、劇的な展開や危機とは常に隣り合わせだ。
トランプ大統領と習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/7301
<CS>
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