2025年は転換点だったのか?(2)【中国問題グローバル研究所】
※この論考は12月30日の< Was this the Pivotal Year?>(※2)の翻訳です。
すべてが中国の思い通りというわけではない
こうしたことから、2025年は地政学的バランスが変化する転換点だったと結論づけるのは容易だろう。トランプ政権が国内外の規範を完全に軽視していることは疑いなく、長年の同盟国が米国を経済・安全保障上のパートナーとして信頼できるか疑問視させる結果となっている。欧州(EUと英国双方)は、米国が孤立主義に走り信頼できなくなったことの影響や新たな課題を見極めようと苦慮している。しかし米国が規範を捨て、第二次大戦後の安全保障・貿易体制を台無しにすることに精を出す一方で、中国は本当に恩恵を受けているだろうか?
2025年は中国の台頭に伴い不穏な側面が顕著になった年でもあった。
英国では中国の影響力の大きさが如実に現れている。以前の本コラムでは、中国の工作員が元ヨーク公と接触していたことについて書いた。キャッシュとベリーのスパイ疑惑が不起訴に終わったことで、中国の影響力が英国政界の中枢にまで及んでいることが明らかになった。最近出版されたマーティン・ソーリーの著書『All That Glistens』では、英国の政治家やビジネスエリートが中国の統一戦線工作に操られてきた数十年にも及ぶ影響工作の実態が暴露されている。同書はさらに、中国企業が英国に約束した経済利益の多くがほとんど実現しなかったという重要な点を指摘している。要するに、中国は良い経済パートナーではないということだ。
ウクライナ戦争も約4年が経過し、トランプはウクライナと欧州同盟国を見捨ててロシア側に付くことを匂わせ、欧州指導者たちを震撼させ続けているが、一方で中国は停戦や和平計画の実現に向けた行動をほとんど起こしていない事実も忘れてはならない。中国はあらゆる経済的・外交的措置でロシアへの全面支援を続けている。中国にとってウクライナ戦争は、西側同盟を弱体化させ、自らの地政学的目標を達成する上でより自由に行動できる手段として重要なのだ。中国のゼロサムゲーム的な世界観では、ウクライナでの死や破壊など問題ではなく、米国やNATOが弱体化すれば好都合なのだ。
中国はウクライナでの和平実現に向けた外交交渉に参加していないだけでなく、他の地域でも行動を起こしていない。中国はガザを巡る外交交渉にも関与せず中東への直接関与を避けているのは確かだが、近隣の経済パートナーであるタイとカンボジア間の緊張も鎮めることができないか、その意思がないようだ。米国が「世界の警察」でありながら数々の失策を重ねていることを批判するのは簡単だが、かといって中国が主導する世界は国家間の紛争が絶えない世界になりそうだ。
中国が他国の侵略を止めようとしないのは、言うまでもなく台湾を思い通りに占領したいからだ。習近平は台湾統一を中華民族の偉大な復興実現に欠かせない条件と公言しており、武力行使も辞さない構えだ。まさに今この瞬間、中国人民解放軍は訓練を実施している。あるいは、台湾を完全に封鎖するためのリハーサルと表現した方が適切かもしれない。中国は台湾侵攻を純粋な国内問題と見なしたいが、台湾の防衛には他国が介入し、大規模な紛争に発展するだろう。それはこの地域の多くの国にとって存亡に関わる危機となることに違いない。
中国は関税問題で米国と互角に渡り合ったかもしれないが、その成果は長くは続かないかもしれない。中国が提案したレアアースの輸出規制は、中国が世界のサプライチェーンをどこまで支配しようとしているかを物語っている。中国はレアアースの販売元と数量を管理するだけでなく、用途と使用者まで承認する権限を求めている。その支配は東京やロサンゼルスだけでなく他の地域にも広がり、企業の取締役会や工場の現場にまで及ぶ。中国が1兆米ドルもの貿易黒字を誇示すれば、多くの発展途上国や先進国は自国の製造業をどう構築・維持していけばいいのか強い不安を覚えるに違いない。中国産業の成功は、実質的に他国の難渋の上に成り立つのだ。これはウィンウィンの成長でもなければ、持続可能な経済発展モデルでもない。
2025年、中国の強さは極めて明白だった。トランプは確かに中国を米国と同等の超大国として扱い、中国は貿易戦争で対抗する上で他国とは異なる立場にあった。しかし一方で、この年における重要な点として中国国家のあまり好ましくない側面も明らかになった。政財界のリーダーたちにとっては驚きではないものの、多くの人は今なおこれを直視しようとしていない。中国は攻撃的な大国であり、ロシアを全面支援し、台湾への威嚇を強めている。直接的な軍事的脅威に直面していないにもかかわらず大規模な軍備増強を進めており、中国の産業を利するためだけに世界経済システムを弱体化させようとしている。
中国の意図は明らかだ。問題は、先進国か発展途上国かを問わず、世界のリーダーたちがようやく中国の脅威に対処し始めるかどうかである。これは中国離れを意味するわけではない。それはまったく非現実的だ。しかし、中国が貿易ルールに従わず悪用することを容認するのは今後にふさわしい戦略ではない。中国には多くの経済的強みがあるが、これほどの巨額な貿易黒字は、製品を購入し経済的駆け引きに応じる他国に大きく依存しているということでもある。2025年は中国の意図がかつてないほど露呈したと言える。今こそ競争環境の再均衡を図るべきである。
トランプ大統領と習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/7035
<CS>
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