地政学的混乱のさなかのEUと中国(2)【中国問題グローバル研究所】
欧州の希望と中国政府の野望
欧州は今、対中関係で何を成し遂げたいと願っているのか。EUは利害が一致する分野で中国政府と歩調を合わせる一方、対立する分野では自らの利益と価値観を積極的に守ることで困難を最小限に抑えようとしているが、現在のアプローチは厳しい綱渡りといえる。
経済面で欧州が求めているのは、より公平な条件での競争である。対中貿易赤字は昨年3,000億ユーロ(※3)(3,500億ドル)に上った。EUはこの慢性的な赤字を懸念しており、欧州の産業を脅かしているEVやソーラーパネルのようなセクターを中心に、欧州企業に対する互恵的な市場アクセスの拡大、 差別的な慣習の撤廃、中国産業の過剰生産能力縮小を望んでいる。また、レアアースと重要鉱物に安定的にアクセスするための輸出制限撤廃でも、中国側から具体的な譲歩を引き出そうとしている。レアアースと重要鉱物は、欧州のグリーン移行とデジタル化に欠かせない。今回の首脳会談で大きな進展は見られないと予想されるが、EU当局者は中国側が少なくともこれらの懸念を認識し、国内需要の刺激策や貿易不均衡への対処策を講じるのではないかと期待している。中国製EVに対する過去の措置と現在行われている乳製品の調査で見られるような相互措置からは、自らの懸念に中国が対処しなければ、行動を起こすことも辞さないという欧州の意向が垣間見える。
経済面以外でも、欧州は気候変動をはじめ、各国の協力が欠かせないグローバルな課題の解決に中国を巻き込むことを目指している(※4)。緊張関係にあるとはいえ、両者はグリーンクレデンシャルを実証することを強く望んでおり、2025年7月の首脳会談で気候変動に関する共同宣言が出されるのではないかとの期待がある。だが、それが実現するかどうかは依然として不透明である。EUは、より公平で予測可能な世界貿易体制の確保を目的とした世界貿易機関(WTO)改革への中国の協力も望んでいる。
中国にとって対欧州関係の主たる目的は、米中間の緊張が高まり続けるなかで、欧州が米国に同調しすぎないようにすることである。中国政府は、欧米間で現在どの程度意見の対立があるかを把握しており、今後EU・米国間に生じる亀裂を拡大させようとするだろう。
経済面で中国が目指しているのは、中国製品をターゲットとしたEUの制裁措置と関税の撤回または先送りに加え、自国の産業の過剰生産能力と国家補助金に対する欧州の懸念への対処である。とはいえ、中国は基本的にはこうした問題を正当な経済開発の一環として扱っている。中国は一部欧州議会議員に科していた制裁措置を解除した。これは象徴的な意味合いが大きいが、関係を改善し経済協力に資する環境づくりをしたいという中国側の考えを示唆している。結局のところ中国が目指しているのは、時間稼ぎと対話を通じてEUの貿易救済措置を緩和させ、経済関係の悪化を防ぐことである。
地政学面で中国が欧州に望んでいるのは、自らが唱える多国間主義を認め、中国が影響力を強めていく新たな世界秩序というビジョンを暗に支持することである。また、中国政府は自国の人権問題や新疆、チベット、香港に対する政策への国際的な批判を、国内問題への西側の干渉だとはねつけつつも、できるだけ抑えたいと考えている。
ロシアというファクター
ウクライナでの戦闘は、EU・中国関係(※5)を含め、世界の地政学的環境を一変させた。中国は、表向きは中立的立場を維持しているものの、特に経済・外交面でロシア政府の支援を続けている。2022年以降の中国とロシアのこうした関係を、欧州各国政府は深く憂慮してきた。EU当局者も今では、ウクライナ戦争でロシアが使用する軍民両用品のうち、かなりの割合―推計で80%―が中国由来だと公然と口にする。EUは、ロシアの軍事力に不可欠な部品を中国政府が輸出し続けていることをたびたび非難してきた。
ウクライナ問題での中国の立場にEUが不満を抱いていることは間違いない。今回の首脳会談が始まるほんの数日前、EUはロシアとの貿易を手助けしているとして中国の一部の中小銀行に制裁措置を科した(※6)。この措置について、中国政府は非難するとともに、報復措置も辞さないと警告を発した。EU側も、ロシア政府との「無制限のパートナーシップ」に大きな変化があるとは見ていない。期待しているのは、軍民両用品に対する税関手続きの厳格化と金融規制の強化など控えめな対応である。ウクライナ戦争により、地政学的ショックに対する欧州の脆弱性や、安全保障と経済的利益の相関性が浮き彫りとなった。
一方で中国側は、中国が言うところの西側、特に米国の「覇権」に対抗する戦略的パートナーとしてロシアを位置づけている。報道によると、中国の王毅外相はエストニアのカヤ・カラス外相に、米国の関心が中国やアジアに集中するおそれがあるため、中国はウクライナ紛争でのロシアの敗北を望んでいないと語った(※7)という。この考え方は、たとえ西側から制裁を受けても、ロシアを破綻させないことが、中国が野望を膨らませるインド太平洋地域から欧米の関心をそらし、欧米のリソースを別の地域に向けさせる一助となるという中国の戦略的計算を示している。
ウクライナ戦争を受けて、EUは経済面だけでなく安全保障面でも依存を減らし、レジリエンスを高めるという決意を固めた。この戦争は、安全保障を外部の力に頼る危険性と、欧州の外交政策を統一し強化する必要性を浮き彫りにした。ハンガリーや、最近ではスロバキアなど、一部加盟国が引き続き中国との結びつきを深めているものの、EU全体のムードとしては、警戒を強め断固としたアプローチを取る方向に傾いている。
ウクライナ戦争では、中国の「中立姿勢」にも、自国の戦略的利益が危うくてもルールに基づく国際秩序を支持するという中国の言葉にも、無理があることが明らかになった。これを受けて欧州では、グローバルな規範を遵守するという中国の約束と、責任あるステークホルダーとしてのその役割に疑念が深まっている。経済的相互依存関係と、グローバルな問題の解決で中国の協力が必要であることを考えると、EUはつながりを完全に断ち切ることはできない(※8)。しかし、ウクライナ戦争がEUの「デリスキング」の取り組みを加速させ、中国が重要な経済的パートナーであると同時に、その行動が欧州の安全保障に直接影響を与えうる「体制上のライバル」でもあるとの認識を強くさせたことは間違いない。
現実的思考とレジリエンス
2025年7月24日のEU・中国首脳会談は転換点とはならず、逆に、ますます難しく複雑な関係に向けてまた一歩進むきっかけとなるであろう。欧州も、中国とスムーズに協働できるようになるという幻想はもう抱いていない。むしろ、経済・技術・地政学的領域にまたがる「体制上のライバル」だという現実に向き合っている。「デリスキング」戦略は、全面的な「デカップリング」とは微妙に異なる代替策ではあるが、レジリエンスと戦略的自律の強化に向け実質的に踏み出すことになるだろう。
トランプ大統領の予測不能な外交政策がこの難しい問題をより複雑にしており、欧州はリスクヘッジをし、自らの能力増強への投資強化を余儀なくされている。EUは今後も、気候変動やパンデミックへの備えなどグローバルな課題で中国との現実的な協力を模索していくことになるだろうが、それはリスクを意識し、自らの利益と価値観を守るという決意を固めての対応となるはずである。ロシアというファクターは、中国の地政学的協力関係と、欧州の安全保障に影響が及ぶ可能性を常に思い出させてくれる。
欧州は今後、綱渡りのような状況を乗り越えていくことになる。域内の結束を維持し、一貫性のある強固な対中政策を明確に発信し、志を同じくする世界各地のパートナーとの戦略的同盟関係を構築できるかどうかが、その成否を左右する。目指すべき目標は中国を孤立させることではなく、欧州の利益を促進し、国際規範を維持し、ルールに基づく国際秩序の未来を守ることができるような「関与条件」づくりである。 それには、揺るぎない決意と巧みな外交手腕、そして分断が進む世界で中国の台頭がもたらすチャンスと大きな課題の両方をしっかりと理解することが必要となる。
中国・EU首脳が会談(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/6488
(※3)https://policy.trade.ec.europa.eu/eu-trade-relationships-country-and-region/countries-and-regions/china_en
(※4)https://merics.org/en/comment/merics-forum-engaging-times-tension-views-europe-and-china
(※5)https://www.bruegel.org/podcast/how-war-ukraine-reshaping-eu-china-relations
(※6)https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3318793/european-union-sanctions-2-chinese-banks-over-aid-russia
(※7)https://kyivindependent.com/chinas-foreign-minister-tells-eu-that-beijing-cannot-afford-russian-loss-in-ukraine-media-reports-6-2025/
(※8)https://www.bruegel.org/newsletter/eu-china-and-russia-changing-geopolitical-landscape
<CS>
エクソーラとゲームエイト、ゲーム攻略ガイドを販売窓口に変えて、プレイヤーとパブリッシャーを世界市場につなぐ
ビザ・ダイレクト、ステーブルコインを活用した送金サービスを開始、試験運用から本番運用へ移行
米大統領報道官を解任 経歴詐称疑惑、トランプ政権に打撃 米報道
アウトカム・エコノミーの実践―ヴァーテージ、新たな調査結果を発表
七瀬つむぎ初の写真集『つむぎ』表紙解禁!ゴスロリや着物、ショートヘア姿など多彩な魅力を収録
【欧州リーグ】「何の成果も得られなかった」途中出場した久保建英のポジション変更に現地紙指摘
イコラブ9周年コンサートで2万人熱狂「本当に『全ては=LOVE』」来年2月名古屋公演も発表
【阪神】欠場の佐藤輝明「準備はしてましたけどね」森下翔太は代打出場で状態は「大丈夫」
岸明日香の写真集『Trajectory ~ ANOTHER EDITION ~』発売!15周年の魅力が詰まった新カット満載の一冊
【獣医師執筆】犬の膀胱炎|原因や症状から治療法まで解説
AIで写真加工できるツール10選!無料範囲と使い方も解説
おすすめPCをご紹介!注目の新製品・キャンペーン情報まとめ【2026秋】
キーワードを見つけて賞品ゲット!冬のプレゼントキャンペーン
「VIVANT」前半で衝撃事実が判明…X動揺「最悪すぎ」「完全に予想外」「ちょっと待って」
Perfumeかしゆか、トレードマークのぱっつん前髪からイメチェンに反響「おでこ!可愛い~」
【解説】日本ハムが日本Sに進出するには5勝が必要 今季から変わったルールとは
「学校の先生」24歳グラドル、ビキニ姿で前かがみ 美バスト強調ショットに「ワーオッ」歓声
「収入少なく」 我が家・杉山さん、ウインナー万引きで書類送検
モラタメにて「2024年台湾東部沖地震救援金」を受付中
女性人気ユーチューバーのXに、家族一同名義で「永眠致しました」と報告文掲載 最近心配の声も
キーワードを見つけて賞品ゲット!冬のプレゼントキャンペーン
ガーシー、錦織圭の元モデル妻の暴露にネット騒然「なんで結婚したんだろ?」
モラタメにて「2024年台湾東部沖地震救援金」を受付中
【高梨沙羅】まるで別人?白いビーチでのプライベートショットを公開
「まさか近所の方が…」 ノーベル賞に硤合さん、埼玉で喜びの声
大沢あかね「マジで芸能界から嫌われてる」芸人を実名告白「女性タレントの中では1位」
生成AIとは?仕組みや種類をはじめての人向けに解説
おすすめPCをご紹介!注目の新製品・キャンペーン情報まとめ【2026秋】
【2026年最新】パソコンの高騰はなぜ起きた?原因・今後の予測・安く買う方法を解説
大村知事「来てほしくなかった」 食事への不満投稿のタイ代表に

2025年は転換点だったのか?(2)【中国問題グローバル研究所】
貿易戦争と武力による戦争(1)【中国問題グローバル研究所】
中国が抱え続ける不安と不満(2)【中国問題グローバル研究所】
トランプ訪中へ(2)【中国問題グローバル研究所】
WTOでの中国の立ち位置に変化:途上国待遇からデュアルポジショニング戦略へ【中国問題グローバル研究所】
敗北(2)【中国問題グローバル研究所】
混乱極める英国の対中政策(2)【中国問題グローバル研究所】
トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」(2)【中国問題グローバル研究所】
中国の第15次5カ年計画の建議に見る政治経済の転換(2)【中国問題グローバル研究所】
習近平の思惑_その2 台湾への武器販売を躊躇するトランプ、相互関税違法判決で譲歩加速か【中国問題グローバル研究所】