危ういバランサー−韓国の立ち位置−【実業之日本フォーラム】
2021年9月21日、文在寅大統領は国連総会の一般討論演説において、休戦状態にある朝鮮戦争の終戦宣言を行うよう提案を行った。その後、韓国外交当局は関係国に積極的な働きかけを行っている。アメリカは、10月26日にサリバン安全保障担当補佐官が、正確な手順やタイミングについて見方が違う、と述べて以降公式には沈黙を保っている。これに対し、鄭義溶韓国外相は、11月11日の韓国国会外交統一委員会で、終戦宣言の形式、内容についてアメリカと緊密に調整を進めているとした上で、合意の最終段階にあると述べている。正確な手順やタイミングとは、終戦宣言を非核化交渉の入り口と考える韓国に対し、あくまでも非核化を優先し、終戦宣言を出口とする米国との主張が異なっていることを意味すると考えられる。アメリカの沈黙は、必ずしも韓国提案に賛成ではないが、あえて否定することにより両国間で波風を立てるのを避けようという意図があると思われる。
11月16日付中国解放軍報は、「朝鮮戦争の終戦宣言を単なるシンボルとしてはならない」との中国科学院主任研究官の署名記事を掲載している。解放軍報が掲載する記事は、政府の考え方を反映すると見られており、この内容は政府の意思と推定できる。記事では、朝鮮戦争で甚大な犠牲を払った中国抜きの終戦宣言はあり得ないとした上で、中国、北朝鮮、アメリカ及び韓国の4か国が終戦宣言に署名すべきと主張している。そして、終戦宣言は単なるシンボルとしてはならず、非核化交渉と一体化すべきと主張している。
終戦宣言に対する米中のスタンスは、朝鮮半島の非核化交渉と一体化でなければならないという点では一致していると考えられる。これは、とりあえず終戦宣言を出して南北融和という成果を上げたい文在寅大統領の思惑とは乖離している。そもそも終戦宣言の対象である北朝鮮も、金正恩総書記の妹で朝鮮労働党の幹部である金与正が、良い提案としつつも、敵対政策の終了が大前提だとしており、条件なしの終戦宣言には否定的である。北朝鮮が主張する敵対政策には、在韓米軍の存在や米韓連合訓練があると推定され、北朝鮮が交渉のテーブルに着くには大きなハードルがある。
このような状況の中、米国と韓国は12月2日ソウルで両国国防大臣が参加する第53回米韓定例安保協議(SCM)を開催した。米国防省が公表した両国防大臣の共同記者会見では、両国が朝鮮半島の非核化、恒久的な平和の確立に向けて協力するとし、2022年に戦時統制権(韓国軍に対する作戦統制権は戦時と平時に区分され、戦時には在韓米軍司令官を兼ねる連合軍司令官が行使)移行に係る評価を実施すること、新たな作戦計画を策定すること等の合意事項が明らかにされている。オースティン米国防長官が、米韓同盟を朝鮮半島だけではなくインド太平洋の平和と安定に重要視した点、北朝鮮に対しては外交を主体としつつも、備えを強化する必要があるとした点が注目される。また、同時に公表された共同コミュニケには、バイデン大統領と文大統領の共同声明で触れられた「台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性を認めた」ことが明記されている。一方で、終戦宣言に関する言及は一切なされていない。
韓国は同日、徐薫国家安全保障室長を中国に派遣、天津で中国外交トップの楊ケツチ共産党政治局員と会談を行っている。報道によれば、韓国大統領府は楊氏が終戦宣言を支持したと伝えているが、中国外務省ホームページでは、徐氏が北京冬季五輪成功に向けて支持を表明したと伝えており、終戦宣言には言及していない。実際どうであったかは不明であるが、それぞれの発表を批判していないことから、中韓は互いに都合の良い点のみを公表したと考えられる。韓国としては、米韓定例安保協議の内容を中国に伝達することで一定の理解を得ることも視野にあったと見られる。
韓国のこのような外交は、廬武鉉大統領の「バランサー論」を彷彿するが、激化する米中対立の中でこのような姿勢が効果を生むことはないであろう。特に、戦時統制権移行に係る評価作業には、2019年以降実施されていない大規模な米韓連合実働訓練が不可欠であり、これは北朝鮮が主張する敵対政策そのものである。文在寅大統領が進める米韓連合軍戦時作戦統制権移行と朝鮮戦争終戦宣言は、バランスできるようなものではなく、韓国に二者択一を迫るものである。
米中高官と韓国高官が会談した際、韓国政府は「終戦宣言に理解を示した」と述べているが、これはあくまでも道義的観点に立った発言と解すべきであろう。終戦宣言そのものは、いかなる国であれ反対できない。しかしながら、その方法、内容及び時期等についてはそれぞれの思惑が交錯する。韓国の終戦宣言を巡る外交は、韓国にとって極めて危険な火遊びと言える。
岸田政権は10月に行われた日米韓高官協議の場で、終戦宣言に対し「時期尚早」として難色を示したと伝えられている。北朝鮮の核・ミサイルの脅威、日本人拉致問題解決の道筋が全く見えない段階での終戦宣言に反対するのは当然であろう。アメリカが安易に韓国の提案に乗らないように二国間で十分な調整が必要である。
一方、終戦宣言を巡る韓国の外交は、今後激化する米中対立の中で、日本外交に大きな示唆を与えるものである。中国の東シナ海や台湾周辺における強引な軍事活動に対する懸念に対し、中国との経済的結びつきを考慮すべし、と述べる評論家は多い。これは、現在終戦宣言を巡り米中間で繰り広げている韓国外交と同じである。安全保障はアメリカと、経済は中国と、といった「いいとこどり」は、双方から不信感を持たれるだけである。経済的結びつきを日本の弱みとするのではなく、逆に梃として、中国に妥協を迫っていくしたたかな安全保障戦略が必要であろう。反面教師であるにせよ、韓国外交から学ぶ点は多い。
サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。
写真:代表撮影/ロイター/アフロ
■実業之日本フォーラムの3大特色
実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。
1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム
・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する
・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う
2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア
・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く
・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える
3)「ほめる」メディア
・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
<FA>
自民都連会長「非常に厳しい結果」 まばらな拍手で笑顔なし 都議選
【G大阪】一森純が脅威のPKストップで相手に流れ与えず「理屈抜きに止めないといけなかった」
国民民主、都議会で初議席を獲得へ 「手取りを増やす」に支持広がる
【都議選】石丸伸二氏、再生の道「目標は候補者を擁立すること、やるべきことは…」NHK会見
「イランは絶対に報復する、権力誇示のために人殺しをして何が楽しいのか?」池田清彦教授が私見
有村昆(44)の不倫未遂の相手とされるセクシー女優、ネットで「唯井まひろ」と噂されるも、本人は…
国分太一降板の日テレ「鉄腕!DASH!!」ACジャパンCM5本流れる「いつぞやのフジテレビ並」
<1分で解説>東京都議選の出口調査から見えた有権者の動きは
横須賀市長選、現職・上地克明氏が3選果たす 小泉進次郎氏の地盤
【阪神】矢野燿大氏、引退試合は「逆に出られなくて良かった。いい思い出」トークショー
ガーシー、錦織圭の元モデル妻の暴露にネット騒然「なんで結婚したんだろ?」
TOKIO国分太一が重大なコンプライアンス違反か 芸能活動休止へ
国分太一が無期限活動休止、「株式会社TOKIO解雇」一部の報道は関係者が否定
元フジ渡邊渚、ビキニに“スケスケ”白Tシャツ姿で初写真集告知「楽しんでまーす」タイで撮影
TOKIO国分太一、「ザ!鉄腕!DASH!!」降板 過去に複数コンプライアンス上の問題行為
国分太一降板で日テレ社長「関係者のプライバシー」強調 弁護士が解説「不倫的なことよりも…」
乳児院でわいせつの元保育士に懲役8年 「悪影響計り知れない」
元フジ渡邊渚、ビキニ姿の大胆露出で表紙ジャック!「完成した誌面を見て毎度のことながら…」
脳幹梗塞で亡くなった38歳芸人、死去3日前の11日に「水ダウ」出演 相方について語っていた
田原俊彦「爆笑問題の日曜サンデー」での言動にTBS再発防止申し入れ 田原側からはおわび
ガーシー、錦織圭の元モデル妻の暴露にネット騒然「なんで結婚したんだろ?」
ヒカル、浮気相手とのLINE流出にドン引きの声「キモすぎる」「吐きそう」
二階堂ふみが結婚!?お相手が衝撃的過ぎてネット民「マジか・・・」
有村昆(44)の不倫未遂の相手とされるセクシー女優、ネットで「唯井まひろ」と噂されるも、本人は…
小澤征悦と再婚した桑子真帆アナ(34)黒い過去が流出、衝撃の過去にネット騒然
TOKIO国分太一が重大なコンプライアンス違反か 芸能活動休止へ
小倉優子、不自然な“二重ライン”にネット騒然「やっぱり整形?」
「変わりすぎ…」33歳女優が衝撃“顔面整形”ビフォーアフター写真を公開
さんま「あれは中居が悪い」と断言 フジ“あの事件”に言及「中居が…俺は“やめとけ”って」
堀江貴文氏「国民民主」山尾志桜里氏の公認取り消しに“ひと言ツッコミ”に賛同多数

自民都連会長「非常に厳しい結果」 まばらな拍手で笑顔なし 都議選
【G大阪】一森純が脅威のPKストップで相手に流れ与えず「理屈抜きに止めないといけなかった」
国民民主、都議会で初議席を獲得へ 「手取りを増やす」に支持広がる
【都議選】石丸伸二氏、再生の道「目標は候補者を擁立すること、やるべきことは…」NHK会見
「イランは絶対に報復する、権力誇示のために人殺しをして何が楽しいのか?」池田清彦教授が私見
有村昆(44)の不倫未遂の相手とされるセクシー女優、ネットで「唯井まひろ」と噂されるも、本人は…
国分太一降板の日テレ「鉄腕!DASH!!」ACジャパンCM5本流れる「いつぞやのフジテレビ並」
<1分で解説>東京都議選の出口調査から見えた有権者の動きは
横須賀市長選、現職・上地克明氏が3選果たす 小泉進次郎氏の地盤
【阪神】矢野燿大氏、引退試合は「逆に出られなくて良かった。いい思い出」トークショー