アマゾン・エフェクトの脅威vol.5 アマゾン進出の影響を受けない5つの要素とは【フィスコ 株・企業報】
米アマゾン・ドット・コムの急成長・急拡大による市場での混乱や変革。一大現象となっているアマゾン・エフェクト。実店舗からオンラインへと消費者購買行動が移行し、米国内の百貨店やショッピングモールが閉鎖に追い込まれるなど、既存の消費関連企業に衝撃をもたらした。同社のさらなる買収や事業拡大は他の分野にも広がっており、その影響で収益低下が見込まれる「アマゾン恐怖銘柄指数」なるものまで設定された。アマゾン・エフェクトとはいかなるもので、これから日本にもどのような影響を及ぼすことになるのか。アメリカで起こったことを検証しながら考察してみた。
■アマゾンの影響を受けないための必要な5つの要素
アマゾンの影響力が強まるなか、米モルガン・スタンレーは、アマゾンの影響を受けないための5つの要素をまとめたレポートを2017年9月に発表した。
2017年9月に発表した。このレポートでは、アマゾンの進出から安全な業界が持つ5つの特性を「BRIAN」というフレームワークで説明している。具体的には次の5つの要素だ。
●B (Bespoke Productsオーダーメイド製品)
●R (Regulatory Hurdles規制品)
●I (Industry/Business Model産業・ビジネスモデル)
●A (Attention Post-Sale販売後のケア)
●N (Nuances細かなやりとり)
BRIANの要素を一つひとつ見ていくと、アマゾンの進出を許さないための障壁(バリア)が何かが明確になってくる。
「B(オーダーメイド製品)」は、ユニークかつカスタマイズが求められるもの、コモディティ化していないものだ。具体的には、ビスポークの高級品や靴などがこれに当てはまる。
「R(規制品)」は、販売前に、厳しいレギュレーションのもと、政府の関係機関によって細かくチェックされる製品を製造する業界。たとえば、エネルギー、航空会社、自動車などの業界はこれらに当てはまるとしている。
「I(産業・ビジネスモデル)」は、粗利率や注文頻度などが低いもの、SKU(Stock KeepingUnit:最小管理単位)が多いもの、ロジスティクスが複雑なものなどがあたる。これらに当てはまる分野は、アマゾンがやろうと思えばできないことはないが、ほかにアマゾンが進出しやすい分野は多く、積極的に進出するインセンティブが働かないと考えられる。具体的には、100円ショップ、家具、アート・工芸品、DIY用自動車部品などの業界が当てはまる。
「A(販売後のケア)」は、トレーニングや取り付け作業など、人的なサービスが必要とされるものや、継続的な人間関係性の上に成り立つようなビジネスなどだ。たとえば、顧客の話を聞きながら、必要な部材を探してきてくれるようなホームセンター、カウンターで話をしながら旅行商品を提案してくれる旅行代理店などは、現状のアマゾンにはない機能を持っているといえるため、アマゾンが参入する障壁は高いと考えられる。
「N(細かなやりとり)」は、複雑なやりとりが発生する業務が伴う業界を指している。たとえば、処方や医療費の支払いが複雑なシステムのうえに成り立っている医療業界、顧客のニーズを聞きながら、複雑な商品設計になっている保険商品を顧客に合わせて、セミ・オーダーメイドで販売する保険業界などは、顧客との細かなやりとりが必要となる。アマゾンには、その性質上、こうした性質を持つ業界にはなじまないといえる。
BRIANに当てはまる業界はアマゾンの進出から比較的安全とされている。しかし、モルガン・スタンレーが「B(オーダーメイド製品)」に分類し、安全な業界としていた食料品は、ホールフーズの買収によって安全性への不確実性が大きくなっている。ホールフーズの買収によって、リアル店舗でも影響力を及ぼそうとするアマゾンを見ると、このフレームワークも早々に陳腐化してしまう可能性もある。
(つづく~「アマゾン・エフェクトの脅威vol.6 アマゾンも不安要因がないわけではない【フィスコ 株・企業報】」~)
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