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各国の思惑は?OPECプラス日量970万バレルの協調減産で合意


2020年4月9日、石油輸出機構(OPEC)とOPEC非加盟主要産油国で構成する「OPECプラス」は、記録的な減産で暫定合意した(Bloomberg4月10日)。その合意内容は、5月と6月に日量1,000万バレルを減産するというものである。メキシコの未承認により合意に至っていなかったOPECプラスは、4月13日再び緊急テレビを開き、協調規模を日量970万バレル減産で最終合意した(ロイター4月13日)。

サウジアラビアとロシアはそれぞれ減産量を日量250万バレルとし、その他のOPECプラス参加国は、23%の生産削減を行う。7月からはOPECプラスとして日量800万バレルまで減産量を緩和し、21年1月から22年4月まではさらに日量600万バレルまでの減産量を減らすという合意であった。

OPECプラスの減産合意量は、金融危機時の2008年に決定した減産量の4倍の規模となる。日量970万バレルは、世界の供給の約10%に相当するが、新型コロナウイルス感染拡大で失われた石油需要の落ち込みは、日量3,000万バレルに上るともみられており、今回の協調減産で、即座に原油相場の上昇は限定的なものになると想定されている。

メキシコは、現在の日量約175万バレルの生産の23%である日量40万バレルの減産割当に強く反発し、合意を未承認のまま会合を退席してしまい、この暫定合意が未成立の状況となってしまった。メキシコの減産量の一部を米国が肩代わりするというトランプ大統領の申し出に応じるということで最終的に協調減産合意に至っている。
世界最大の産油国である米国、2位、3位のサウジアラビア、ロシアの思惑は、以下のように整理できるだろう。

トランプ大統領にとって、4月1日に米国の中堅シェール企業「ホワイティング・ペトロリアム」が経営破綻に追い込まれ、これ以上の経営破綻や失業の増加は、経済政策上大きな打撃となるに違いない。トランプ大統領は、2017年6月にパリ協定からの離脱を宣言し、化石燃料の開発推進と規制緩和によりエネルギー関連企業からの大きな支持を得ており、これを失いたくはないであろう。さらにテネシー州、オハイオ州、ペンシルベニア州は、シェールガスの有力な生産拠点であり、大統領選挙の激戦区でもある。ここで成果を収めこれらの州での地盤を固め、大統領選の再選戦略を確固たるものにしておきたいところであろう。

サウジアラビアは、これまで、OPECを率いて石油市場の「需給統制役」としての地位を自負してきた。サウジアラビアが3月に増産を決意したのは、一時的に苦しい財政状況となるが、将来的には「OPECプラスに米国やカナダを加えたその他の産油国を取り込み、サウジアラビアを軸とした石油市場の新秩序の構築」を模索しているのではなかろうか。現に4月9日のOPECプラス会合にはOPECプラス枠組み以外の産油国にも参加を要請し、カナダ、ノルウェーが参加している。サウジアラビアは、今回、各国から協調減産合意を取り付けたことにより、アラブの盟主として、また石油市場の「需給統制役」として役割が高く評価されるであろう。

世界3位の産油国のロシアは、自身の日量250万バレルの減産同意と引き換えにアメリカ、カナダなど「OPECプラス」以外の産油国から日量500万バレルの減産を要請すべきだと主張している。ロシアにとっても現在の北海ブレント原油価格1バレル=32USD(Ice Future Europe3月31日)は許容しがたい状況であり、シェア拡大よりも原油価格の上昇を選んだものと思われ、サウジアラビア及び米国と緊密な連携を図ったものと思われる。



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