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日経平均は小幅反落、需給懸念と根強い「ブル」の綱引き


 日経平均は小幅反落。41.94円安の22246.20円(出来高概算5億2000万株)で前場の取引を終えている。

 6月30日の米株式市場でNYダウは続伸し、217ドル高となった。6月のシカゴ購買部協会景気指数が予想を下回り、朝方は売りが先行。しかし、6月のCB(コンファレンス・ボード)消費者信頼感指数が急回復し、投資家心理を上向かせた。パウエル連邦準備理事会(FRB)議長とムニューシン財務長官の議会証言を受け、新型コロナウイルスを巡る追加支援策への期待も高まった。為替相場は一時1ドル=108円台まで円安方向に振れ、本日の日経平均はこうした流れを好感して50円高からスタート。朝方には22360.31円(72.17円高)まで上昇する場面もあったが、NYダウ先物の時間外取引での下落などが重しとなり、前日終値を挟みもみ合う展開となった。

 個別では、トヨタ自<7203>、ファーストリテ<9983>、三菱UFJ<8306>などがさえない。新型コロナの影響でLINE<3938>との経営統合が遅れると発表したZHD<4689>は2%超の下落。東京海上<8766>も3%近い下落でやや軟調ぶりが目立つ。また、事業再生ADR(私的整理)制度の利用を発表したサンデンHD<6444>が急落し、東証1部下落率トップとなった。一方、米半導体株高の流れを引き継いで東エレク<8035>、レーザーテック<6920>、アドバンテス<6857>などの関連銘柄が大きく上昇。総務省による通話回線のレンタル料引き下げ裁定を受け、格安料金プランの提供を発表した日本通信<9424>も買いを集めている。また、パイプドHD<3919>などが東証1部上昇率上位に顔を出した。

 セクターでは、空運業、パルプ・紙、不動産業などが下落率上位。半面、精密機器、電気機器、証券などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の63%、対して値上がり銘柄は32%となっている。

 前日の米国株は続伸したものの、その後時間外取引で米株価指数先物が下落していることもあり、本日の日経平均は伸び悩む展開となっている。日足チャートを見ると2
2430円近辺に位置する25日移動平均線水準に届かず、前日あたりから日中値幅も乏しくなってきた。ここまでの東証1部売買代金は8700億円程度と前日から一段と減り、売りも買いも積極的には出にくい状況と言える。

 売買代金上位を見ると、自動車株や金融株といった時価総額上位銘柄を中心に軟調。一方で半導体関連を中心とした値がさ株の一角が買われている。このため、前引けでの下落率は日経平均の0.19%に対し、東証株価指数(TOPIX)は0.45%とやや大きい。業種別騰落率はやや方向感に乏しいが、日銀が朝方発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)で景況感の悪化が鮮明だったセクターを中心に軟調か。東京都の新型コロナ新規感染者数が6月28日60人、29日58人、30日54人と比較的高い水準で推移しており、影響長期化を警戒する向きもあるとみられる。

 前日に急落する場面があったマザーズ指数だが、本日は5日ぶりに小幅反発。前日の当欄で指摘した「個人投資家の買い余力低下」という見立てと整合的に上値の重さが拭えないものの、1010pt台に位置する25日移動平均線水準をキープしようとする動きで、新興株に対する押し目買い意欲の根強さも窺わせる。アンジェス<4563>が売られる一方、メルカリ<4385>やBASE<4477>といったEC(電子商取引)関連銘柄が上昇。上場2日目のグッドパッチ<7351>は公開価格の約4倍となる初値を付けており、IPO
(新規株式公開)銘柄の初値高も継続だ。

 アジア市場は香港が休場で、中国・上海総合指数などはしっかり。6月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は2カ月連続で節目の50を上回った。ただ、米国では引き続き今晩の6月ADP雇用統計や6月サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数、2日の6月雇用統計といった重要な経済指標の発表を控える。積極的に上値は追いにくく、米株価指数先物の下落も重なって、後場の日経平均は軟調もみ合いとなりそうだ。前引けのTOPIX下落率からは日銀の上場投資信託(ETF)買い入れが実施されるかは見通しづらい。直近では0.3%以上の下落で実施される日とされない日が散見される。

 さて、米経済指標の内容を見極めたいとの思惑や新型コロナ再拡大への警戒感とともに、前日の当欄で触れた上場投資信託(ETF)の分配金捻出に絡んだ売り観測も話題となっており、相場の重しとなっているようだ。一部証券会社は合計で約7000億円の売りが発生するとの試算を示しており、短期的なインパクトは大きいだろう。

 反面、米投資家を中心に「強気(ブル)派」が多いとの情報もある。その根拠としては(1)新型コロナが再拡大しても財政による支援への期待が高まる、(2)株価変動率(ボラティリティ)低下とともにシステム系投資家の買い戻しを誘う、(3)経済の再封鎖(ロックダウン)は政治的なハードルが高い、といったものだ。前日の当欄で景気敏感株の物色動向から「投資家はさほど弱気に傾いていない」との見方を示したが、これと整合的だろう。

 需給要因で株価が下に振らされる場面があっても、ブル派が根強く残るうちは短期的なものにとどまるだろう。さしずめ現在の状況は「需給懸念と根強いブルの綱引き」といったところか。
(小林大純)


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