体外診断用消耗品（In Vitro Diagnostics：IVD）とは、一般的に検査室などの環境で行われる各種の体外診断に使用される構成部品や材料を指す。具体的には、試薬、検査キット、サンプル容器、診断用コンポーネントなどが含まれ、正確な診断結果を導き出す上で極めて重要な役割を担っている。
これらの消耗品は、単に検体（ヒト由来のサンプル）を採取・処理するためのものではなく、特定成分やバイオマーカーの検出・分析にも直接関わる。用途は幅広く、血液検査、尿検査、組織検査など多岐にわたり、疾患の予防・診断・治療、さらには健康管理に至るまで、医療現場のさまざまな場面で欠かせない存在である。体外診断プロセスの根幹を支えるこれらの消耗品は、まさに「縁の下の力持ち「として、日々進化と拡張を続けている。
医療の最前線を支える「名もなき主役」たち
体外診断用消耗品（IVDコンシューマブル）は、血液、尿、唾液、組織などの生体サンプルを対象とした診断プロセスにおいて欠かせない存在である。試薬、検査キット、サンプル容器、チューブ、マイクロプレート、ろ紙など多岐にわたる製品群が含まれ、医師が正確な診断を下すための基盤となる。特に近年、迅速かつ非侵襲的な検査ニーズが高まるなかで、消耗品の「質」がそのまま診断結果の信頼性とスピードに直結する状況となっている。つまり、消耗品は単なる補助材料ではなく、医療精度を左右する重要な構成要素として再評価されているのである。
多様化する医療ニーズが市場に新たな波を生む
パーソナライズド医療の進展、高齢化社会の加速、感染症対策の常態化といった社会的背景が、IVD消耗品市場にかつてない活力をもたらしている。検査の対象となる疾患や症状が多様化する中で、より柔軟かつ高機能な消耗品の開発が求められている。とりわけポイント・オブ・ケア（POCT）における即時診断や、分子診断、免疫測定といった高感度領域では、極小サンプルでの安定処理、クロスコンタミ防止設計、マルチプレックス対応など、消耗品に対する技術的期待が急速に高まっている。こうしたニーズは今後さらに複雑化・細分化していくと考えられ、それに応える製品設計と供給体制が、企業の競争力を左右するカギとなる。
「消耗」では終わらない――持続可能性と品質管理が新たなテーマに
IVD消耗品は、その名の通り「使い捨て」が前提であるが、近年では品質・安全性の確保に加え、環境負荷の軽減やトレーサビリティの強化といった新たな視点からの評価も始まっている。特にサプライチェーンのグローバル化が進む中で、原材料の由来、製造過程の透明性、ロットごとの品質安定性が、医療現場や規制当局から厳しく問われるようになってきた。単に機能を満たすだけでなく、「安全」「持続可能」「説明可能」であることが製品に求められる時代において、消耗品であっても企業に高度なマネジメント力が求められている。従来の「見えない部材」という位置づけから、明確な品質価値を持つ「医療インフラ」としての役割へと進化している。
LP Information調査チームの最新レポートである「グローバル体外診断用消耗品市場の成長2025-2031」によると、2025年から2031年の予測期間中のCAGRが4.2%で、2031年までにグローバル体外診断用消耗品市場規模は963.4億米ドルに達すると予測されている。
図. 体外診断用消耗品世界総市場規模
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図. 世界の体外診断用消耗品市場におけるトップ21企業のランキングと市場シェア（2024年の調査データに基づく；最新のデータは、当社の最新調査データに基づいている）
LP Informationのトップ企業研究センターによると、体外診断用消耗品の世界的な主要製造業者には、Roche、Danaher、Abbott、Siemens Healthineers、BioMerieux、Thermo Fisher Scientific、Sysmex、Becton Dickinson、QuidelOrtho、Hologicなどが含まれている。2024年、世界のトップ10企業は売上の観点から約65.0%の市場シェアを持っていた。
イノベーションと柔軟性が未来を切り開く
変化の激しい診断市場において、IVD消耗品メーカーに求められるのは、既存製品の信頼性を維持しつつ、常に新たなニーズに応える柔軟性とスピードである。たとえば、新型ウイルスの出現に対応した検査キットの即時開発、ゲノム検査の拡大に伴う高精度なサンプル処理ツールの開発など、現場ニーズに即応するR&D体制が不可欠である。さらに、素材開発から成形技術、充填・滅菌・包装まで一貫した製造工程を有することは、コストと品質を両立させる上でも競争力の源となる。柔軟でイノベーティブな開発力は、今後の市場変化において企業が持続的に成長するための「生命線」といえる。
グローバル市場に挑む企業は「信頼」を供給する
世界中の診断現場で使われるIVD消耗品にとって、「信頼性」は何よりも重要な価値である。特に欧米やアジアの主要医療市場では、規格適合・認証取得（ISO、FDA、CEなど）だけでなく、安定供給体制や緊急時対応力までもが評価基準となっている。品質保証体制の強化に加え、複数拠点での生産・在庫管理、多言語対応のテクニカルサポートなど、サービス面での信頼性構築も企業評価の大きな要素となっている。また、代理店網や現地法人との連携を強化し、地域ごとのニーズに合わせた製品展開を行うことで、単なる「部品供給者」から「価値提供者」への飛躍が期待される。
次世代医療とともに拡張する「消耗品「の可能性
IVD消耗品市場は、今や「検査のための消耗材」から、「診断精度と効率を左右する戦略的構成要素」へと位置づけを変えつつある。今後の展望としては、AIによる検査結果の自動解析や、クラウドを活用した遠隔診断の普及が進む中で、より一層のスピード・正確性・自動化対応が求められるようになるだろう。こうした文脈では、使い勝手と精度を両立した「スマート消耗品」の開発が注目される。たとえばバーコード・RFID付きの識別機能、デジタル連携を前提とした設計、自動ローディング対応など、デジタル化を前提にした高度な製品仕様が新たな競争領域となっている。医療現場のDXと歩調を合わせることで、IVD消耗品の価値はさらに飛躍していく。
レポート概要
タイプ別セグメント：
Molecular Diagnostics
Immuno Diagnostics
Chemistry Diagnostics
POCT
Microbiological Diagnostic
Others
用途別セグメント：
Hospital
Laboratory
Household
Others
会社概要
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