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77年ぶりの大麻取締法改正──医療・産業・刑事政策に与える影響を分析-日本臨床カンナビノイド学会らによる制度改正の包括的レビュー論文が国際学術誌に掲載


一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会の研究チームは、2023年に成立し2024年に施行される日本の大麻取締法改正について、制度的枠組みと社会的影響を分析した総説論文を発表しました。論文は、医療分野での大麻由来医薬品の合法化、産業用途での規制緩和、刑事分野での使用罪の導入、大麻栽培分野での免許制度の刷新を検討しています。2023年の改正は日本の薬物政策の大転換とされ、法改正の行方を見据えた研究です。この研究は、関係者にとって今後の政策設計や法運用に対する基礎資料となることを目指しています。

一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会に所属する正高佑志(一般社団法人Green Zone Japan)、赤星栄志(日本大学生物資源科学部)、太組一朗(聖マリアンナ医科大学脳神経外科)松本俊彦(国立精神・神経医療研究センター)らを中心とした研究チームは、2023年に成立・2024年に施行された日本の大麻取締法改正について、その制度的な枠組みと社会的影響を包括的に分析した総説論文を執筆し、国際学術誌『Cannabis and Cannabinoid Research』に2025年6月9日付けで掲載されました。

研究背景:

1948年に制定された大麻取締法は、医療・産業・刑事の各領域にわたる制度的硬直性を抱えたまま長年維持されてきました。2023年の改正は、医療用大麻製剤の合法化、産業用途への規制緩和、使用罪の導入といった多岐にわたる制度変更を含むものであり、日本の薬物政策における大転換点と言えます。

研究内容と主な結果:

本論文では、以下の4つの観点から改正法の全体像とその社会的影響を検討しました。

医療分野:大麻由来医薬品が「麻薬」として法的に位置づけられ、医師の管理下で処方可能となった意義とその制度的課題

カンナビノイド産業分野:規制対象を従来の「植物部位」から「成分(THC)」へと転換し、カンナビノイド製品の活用可能性を広げた一方で厳格なTHC基準が設けられたこと

刑事分野:麻薬への以降に伴い大麻にも使用罪が適用されたことの倫理的・実務的影響

大麻栽培分野:従来の免許制度が刷新され、三種類の免許制度が設けられたこと

本研究の意義:

本研究は、日本におけるカンナビノイド関連制度の現状と課題を俯瞰するための基礎資料として、今後の政策設計や法運用に関与する立法・行政・医療・産業関係者にとって有用な知見を提供するものです。

※本研究は、厚生労働省行政推進調査事業「カンナビノイド医薬品とカンナビノイド製品の薬事監視」(研究代表:太組一朗)の一環として実施されました。

【掲載論文についての詳細】

タイトル:How has Japan's Cannabis Control Act been amended?
著者: 正高佑志、赤星栄志、片山宗紀、梅村二葉、三木直子、中澤亮太、柴田耕佑、吉田智賀子、三上礼子、松本俊彦、秋野公造、太組一朗
DOI:https://doi.org/10.1089/can.2025.0006
掲載誌:Cannabis and Cannabinoid Research
発行:Mary Ann Liebert, Inc.

日本語仮訳版はこちらからダウンロードできます。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=161702




【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000322609&id=bodyimage1

図 国際学術誌「Cannabis and Cannabinoid Research」表紙

<用語集>

Δ9-THC:
デルタ9-テトラヒドロカンナビノール。THCとも表記される。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。痛みの緩和、吐き気の抑制、けいれん抑制、食欲増進、アルツハイマー病への薬効があることが知られている。

CBD:
カンナビジオール。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告された。

内因性カンナビノイド系:
内因性カンナビノイド系(ECS)は、内因性リガンド(アナンダミド、2-AG等)、それらのカンナビノイド受容体(CB1,CB2等)、および内因性カンナビノイドの形成と分解を触媒する酵素(FAAH、MAGL等)を含む脂質の複雑なネットワークである。内因性カンナビノイド系は、学習と記憶、感情処理、睡眠、体温制御、痛みの制御、炎症と免疫応答、食欲など、私たちの最も重要な身体機能の調節および制御を担っている。

2018年米国農業法による「ヘンプ」の定義:
「ヘンプ」という用語は、「大麻(学名Cannabis sativa L.)」の植物および、その植物のいずれかの部位(種子と全ての派生物、抽出物、カンナビノイド、異性体、酸、塩、異性体の塩を含む)であり、成長しているか否かにかかわらず、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(delta-9 tetrahydrocannabinol)の濃度が乾燥重量ベースで0.3%以下であるもの」を指す。

(一社)日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会;International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。E-ラーニングによる専門家育成(登録医/登録師)、研究支援等を行い、世界的に権威のある"Cannabis and Cannabinoid Research"(大麻&カンナビノイド研究)を公式ジャーナルとしている。2023年10月段階で、正会員(医療従事者、研究者)113名、賛助法人会員13名、 賛助個人会員11名、合計137名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/

日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2020年の時点で、全国作付面積7ha、大麻栽培者30名、大麻研究者450名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままであった。
国内外の情勢の変化を受け、厚生労働省による21年大麻等の薬物対策のあり方検討会(全8回)、22年大麻規制検討小委員会(全4回)を経て、23年1月12日の厚生科学審議会 (医薬品医療機器制度部会)にて法改正の方向性が示された。その後、第212回臨時国会にて大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律(2023年12月6日制定、法律第84号)が成立した。新法によって大麻由来医薬品の利用の道が開かれた。



配信元企業:一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会
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