(C) yang02
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/394548/LL_img_394548_1.jpg
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やんツーはこれまで、(ポスト)資本主義、エネルギー問題、脱成長、先端技術の政治的・社会的影響などに焦点を当ててきました。その作品は、進歩主義的な視点で考えられがちな未来を、より広い視野で多様に考察する新しいアプローチを提示してきました。
本展は、渡米する前の国内での最後の展示となり、コロナ禍以降に発表された作品群をアップデートし、一つのテーマに集約して展開します。2018年に発表した作品《現代の鑑賞者》で、鑑賞者のように振る舞っていた自走型セグウェイが、今回は電動車椅子に置き換えられ、バリアフリーでない空間をツアーガイドします。また、グラフィティに傾倒していたというやんツーのバックグラウンドが色濃く反映された作品《「落書き」のための装置》は、アニエスベーが発信した「I HATE FAST FASHION」という言葉をタイトルに採用し、廃品の服を支持体に使用して描かれるなど、6つの作品群で会場が構成されます。
この展示でやんツーは、テクノロジーに対する新たな理解を模索し、日常から見落とされがちなオルタナティブな価値や可能性にユーモアを交えて光を当てます。
【アーティストステートメント】
ヤフオクで購入した初めてのマイカーが1年もたずに故障し、そのまま廃車になった。すぐに安い中古車を、懲りずにヤフオクで探す。ガソリン車より不便なのは容易に想像できたけど、エネルギー問題への関心と、なにより未知の物への好奇心が勝り、EV(Electric Vehicle=電気自動車)の軽バンを落札。車を受け取りに愛知へ赴き、その足で神奈川までの帰路につく。電費を良くするべく下道をゆっくり走り、充電は一回30分~1時間を計11回繰り返した。結果、帰宅まで20時間を費やす、予想以上に過酷な帰り道になった。一方で姿形、操作方法も確かに車なのに、圧倒的に合理性を欠いた別の何かに乗ってたのでは?と錯覚するような、妙な体験でもあった。自分だけが資本主義とは別の原理で駆動している世界に存在しているような感覚。
他方、個人的な経験から目を外に向けてみると、今世界の車事情は脱炭素、EVシフトで揺れている。TeslaにBYD、トヨタと業界の覇権争いが国家間の政治問題にまで発展する。
マルティン・ハイデガーは「現代のテクノロジーは対象の本質、真理(アレーテイア)を明らかにするものではなく、むしろそれを隠蔽してしまう」と述べている。近代合理主義由来のテクノロジーに対する無意識は、発展や進歩という言葉によって、あるいはロマン主義的態度によって生成され、植民地主義や戦争のような暴力や搾取、排除、抑圧を正当化し推し進めてしまう。そのことは現在の社会が証明している。ユク・ホイは「近代性とは無意識によって支えられており、近代はいまだに乗り越えるべきものであり続けている」という。私が経験したことは、日常の無意識の裂け目から、テクノロジーの合理性によって隠蔽され、見過ごしてきたオルタナティブな可能性に出会うような出来事だったのだろう。
車や電気など、身近なインフラとしてのテクノロジーの中には多くの無意識が存在し、経済価値や合理性の名のもとに淘汰されるものには未だ見ぬ価値や、忘却された知が数知れず存在するはず。
ここで私が試みるのは、いくつかの電動車や既製品、不用品、リサイクル品を用いた、誤用/転用/組み合わせによるポイエーシスであり、テクノロジーに対する意識を再起動させるためのテクネーについての思索/試作である。
【アーティストプロフィール】
1984年、神奈川県生まれ。美術家。セグウェイが作品鑑賞する空間や、機械学習システムを用いたドローイングマシンなど、今日的なテクノロジーを導入した既成の動的製品、あるいは既存の情報システムに介入し、転用/誤用する形で組み合わせ構築したインスタレーション作品を制作する。先端テクノロジーが持ちうる公共性を考察し、それらがどのような政治性を持ち、社会にどう作用するのか、又は人間そのものとどのような関係にあるか、作品をもって批評する。菅野創との共同作品が文化庁メディア芸術祭アート部門にて第15回で新人賞(2012)、同じく第21回で優秀賞(2018)を受賞。2013年、新進芸術家海外研修制度でバルセロナとベルリンに滞在。
近年の主な展覧会に、「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」(森美術館、東京、2022)、「遠い誰か、ことのありか」(SCARTS、札幌、2021)、「DOMANI・明日展」(国立新美術館、東京、2018)、「Vanishing Mesh」(山口情報芸術センター[YCAM]、2017)、あいちトリエンナーレ2016(愛知県美術館)などがある。また、contact Gonzoとのパフォーマンス作品や、和田ながら演出による演劇作品「擬娩」での舞台美術など、異分野とのコラボレーションも多数。
http://yang02.com/
アニエスベー ギャラリー ブティック公式Instagram
https://www.instagram.com/agnesb_galerie_boutique/
【yang02/Unknown Technics】
会場 :アニエスベー ギャラリー ブティック
東京都港区南青山5-7-25 ラ・フルール南青山2F
会期 :2024年5月18日(土)~6月16日(日)(月曜休廊)
時間 :12:00~19:00
協力 :rin art association/BRING
会場設営:糟谷健三
広報協力:YN Associates