「ぷらんつプロ」のサービスイメージ
このたび、2024年3月1日(金)より、海外(アルゼンチンとインドネシア)の植物遺伝資源(※2)を提供国との複雑な手続きを経ることなくお客様(企業や公的機関など)に提供するサービス「ぷらんつプロ」を新規事業として開始いたしました。
I. 「ぷらんつプロ」の概要
○ 「ぷらんつプロ」とは、当社と契約したお客様に対し、アルゼンチンとインドネシアに所在する植物遺伝資源のサンプル(以下「サンプル」)を提供するサービスです。
○ 当社が入手した提供国のサンプルとそれに関連する知見・ノウハウを用いて、お客様の製品開発を支援するための新たなサービスです。
○ お客様は、提供国との複雑な手続きを行うことなく同サンプルを入手することができ、お客様の事業に必要な基礎研究や製品開発に利用いただけます。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/384845/LL_img_384845_1.jpg
「ぷらんつプロ」のサービスイメージ
<「ぷらんつプロ」の主な特徴>
● 当社と契約したお客様は、当社が入手済のアルゼンチンとインドネシアの植物カタログを閲覧し、研究開発に利用したいサンプルをすぐに受け取ることができます。植物カタログにないサンプルについては、リクエストをいただいた後、当社が提供国より入手しお客様に提供します。
● 当社が想定するお客様の対象領域は、機能性食品、化粧品、その他トイレタリー、香料、生活資材および医薬品の6分野(※3)で、これら分野で製品を研究、開発する企業や公的機関などを想定しています。
● また、古くから利用されている知見・ノウハウも利用可能です。ご希望の効能をリクエストしていただければ、可能性のあるサンプルを提供いたします。この場合も、植物カタログにないサンプルは、採取後にお客様に提供します。
● お客様は、「ぷらんつプロ」を通じて入手した植物遺伝資源を用いた研究の成果を合法的に権利化できます。また、提供国に対する「利益の公正かつ衡平な配分」(ABS(※4))や日本への輸入に関わる種々の煩雑な手続きは当社が行いますので、お客様は基礎研究や製品開発に専念できます。
● 当社は、植物遺伝資源研究の事業化にあたり、社外の専門家で構成される「ABS市場創成タスクフォース」や国立大学法人筑波大学から客観的評価やアドバイスを受けております。
(※1) ぷらんつは「植物」、プロは「専門家」「提供者」などを表現しています。
(※2) 植物遺伝資源とは、植物に由来する遺伝素材で、現実のまたは潜在的な価値を有するものをいいます。各国固有の資産として多様な国際法及び各国国内措置によって認識されています。
(※3) 具体的な内容については、下記【ご参考(1)】でご確認ください。
(※4) ABS(Access and Benefit-Sharing)とは、「遺伝資源の取得の機会」(Access)と「その利益の公正かつ衡平な配分」(Benefit-Sharing)のことで、生物多様性条約に基づきグローバルに遵守が必要な事項です。
II. 植物遺伝資源をめぐる世界的状況
● 一般的に、地球上にはおよそ900万の生物の種(しゅ)が存在すると言われていますが、現在認識されているのは約120万程度と言われています。
● これは、多数の生物遺伝資源が未発見のまま眠っている可能性を示唆しており、天然物由来の機能性食品、化粧品、その他トイレタリー、香料、生活資材および医薬品の開発には、非常に大きな可能性があると言えますが、20世紀末の時点では、天然物由来の代謝物質(※5)の新規の発見は、技術的および権利関係の問題があり、困難と考えられていました。
● その後、先端的な分析技術の飛躍的発展と網羅的なビッグデータ解析のアプローチが革新的に進んだことで、再び天然物由来の代謝物質への関心が高まっており、消費者のニーズに応じた多様な商品開発が進んでいます。
● 一方、生物多様性条約(CBD=1993年)が発効する以前は、天然物由来の代謝物質の権利について、遺伝資源が人類共通の資産であるとの認識のもと、遺伝資源の取引に関する明確な手続きが確立されておらず、遺伝資源を有する国の権利の保障や遺伝資源を有する地域の住民(先住民含む)に利益を還元するしくみが明確ではありませんでした。
● CBD発効後は、自国の天然資源に対する主権的権利が認められ、名古屋議定書(2014年)により提供国の法令順守と日本国制度への対応が義務付けられました。また、学術研究をも含む研究開発目的でも、資源を国内で利用するために輸入する場合、名古屋議定書に基づく資源提供国の法令遵守と日本国内制度への対応が必要となっています。さらに植物防疫法、麻薬取締法、薬機法や外来生物法など多数の法律に基づく手続きを理解し、クリアする必要があります。
● 加えて、ワシントン条約による環境保護や食料・農業植物遺伝資源条約(ITPGR=2004年)による食料-農業の安全保障の視点からも遺伝資源について国際法や各国の国内措置が厳格化されてきています。
● こうした関係法令に基づく手続きに加え、資源提供国などとの交渉や多様な作業が日本国内で海外の植物遺伝資源を活用する際の障壁になっています。
(※5) 天然物由来の代謝物質とは、生物が生命維持のために生体内で産生される化合物のことを意味します。例えば、微生物から発見した抗生物質のペニシリンはその一例です。
III. 当社が本サービスを事業化する背景
● 当社の主力事業は、自動車・半導体分野で活用いただく生産設備や産業用ロボットですが、製品化の原点は人々を過酷で困難な労働から解放したいとの社会的課題の解決にあります。
● 今回、発表した新たな事業も、植物遺伝資源の活用を通じて、これまで重視されてこなかった植物遺伝資源提供国の権利を保護しつつ、資源提供によって得られた利益を公正かつ衡平に配分することで提供国が抱える社会的課題の解決に貢献することを企図しております。これらは、事業と社会課題解決を両立させる取り組みであり、当社が有する他の事業と同根と位置付けています。
● こうした考えのもと、当社は、2015年度より、従来の研究開発テーマである「工学的研究開発」に「生命科学分野」を加え、「植物遺伝資源を利用した新たなビジネス」の確立に取り組んでまいりました。
● 2019年にはアルゼンチンの政府機関と、2020年にはインドネシアの政府機関と植物遺伝資源の共同研究開発に関する契約を締結し、両国と共同で植物遺伝資源の研究を進めております。
● 一方、自社での研究・製品化だけでなく、当社が切り拓いた両国の植物遺伝資源の活用ノウハウを他社にも提供することで、遺伝資源提供国と利用者双方の利益につなげたいと考え、本サービスを開発しました。本サービスの提供を通じて当社は「遺伝資源の提供国と利用者との橋渡し役」を目指します。
IV. 本サービスに関する売上・損益計画
現時点では非開示といたします。
【ご参考(1)】本サービスの対象領域として想定する6分野の概要
アルゼンチン、インドネシアの政府機関と当社の契約は、下記の6分野が対象となります。
(1)機能性食品
在来の植物で野生あるいは栽培化されていない植物の中には、伝統的な利用方法により価値があると認識されているものがあります。このような低利用あるいは原産地以外の多くの国で未開拓の種について、最新の科学技術にて評価することにより新規の利用価値を見出します。日本で未利用の材料の価値のバリデーション(確認、検証)を行うことは、新規の市場への革新的な商品提供につながる可能性があります。
(2)化粧品
化粧品市場において天然原料由来の製品開発は常に注目されてきています。消費者の多様なニーズに応じた製品開発は、新規の原料の開拓が不可欠です。また、持続可能性を考慮したヒトや地球環境にもやさしい製品は、今後さらなるニーズの高まりが想定されます。さらには、オーガニック化粧品など、個別の体質や興味に応じたテイラーメードのマイコスメの候補材料としても期待できます。
(3)トイレタリー
トイレタリー分野では、SDGsを考慮した環境にやさしい製品のニーズが高まっています。天然由来原料を用いた製品開発は、バイオ石鹸、シャンプー、洗濯洗剤、消臭剤などの分野で今後ますます活発化すると考えられます。
(4)香料
天然物由来のフレグランス市場が世界的に拡大しています。バラやラベンダーなどの既知の栽培植物の天然香料は、現在大きな市場シェアを占めていますが、消費者は常に新しい香りを未知の植物から求めていると考えられます。
(5)生活資材
バイオ殺虫剤、ダニ予防剤、家具や家屋の抗菌などでは早期の製品化が期待できます。また、バイオプラスチックなどのバイオマテリアルなど幅広く生活を支援する原料の発見も期待できます。
(6)医薬品
人類は、古来より植物を医薬品として利用してきました。マラリアの治療薬キニーネやアルテミシニンは植物由来の医薬品として有名ですが、アルゼンチンやインドネシアには、多様な文化や歴史に基づいた植物遺伝資源に関連する様々な知恵が息づいています。アルゼンチンでは、先住民族のグアラニ族、マプチェ族やチャルーア族等の知見に基づく薬用植物の利用実績があります。これらを、欧州等からの移住者が継承し現在でも活用されています。また、インドネシアでは、Jamu(スパイスやハーブを調合した伝統的な健康飲料あるいは医薬品)で多数の植物の利用があります。これらの中には、日本企業により特許化や商品化された例もあります。
また、この2ヵ国以外でもタキソールやビンブラスチンなどは植物由来の抗がん剤として広く利用されている実例があります。
(補足説明)
● 1997年の国連食糧農業機関(FAO)の「遺伝資源白書」によると、人類は地球全体の7,000種程度を食用として利用していると報告されています。この他に、野生の樹木の葉やハーブ等、積極的には食用として利用されていませんが、調味料や補助食材として補足的に使われてきたものもあります。
● 一方、主要な食糧として利用されているものは、このうち120種程度しかありません。さらに、そのうち30種程度の栽培種によって、人類のカロリーと栄養の大半を確保していると言われています。
● さらには、薪や炭あるいは植物油などの燃料以外で人類が利用してきた種は80,000種程度あり、食用以外では、医薬品のほか、芳香剤、繊維、化粧品、洗剤、生活資材などの原料となっています。
● 本サービスでは、このように多数現存する種の中から、現在の需要に応じた原料の探索を支援することを目指します。
・監修(技術・用語):筑波大学 生命環境系 教授 渡邉 和男 氏
・監修(ABS) :二村 聡 氏
【ご参考(2)】以下展示会にて本サービスを紹介いたします。ぜひお越しください。
「健康博覧会2024」FOOD DESIGN EXPO
○開催日 :2024年2月20日(火)~22日(木)
○場所 :東京ビッグサイト 東ホール(4・5・6ホール)
○当社ブース:機能性食品・ドリンク[原料・OEM展]「6G-02」ブース
【ご参考(3)】ぷらんつプロの紹介動画をYouTubeに公開しております。
以下のURLからご視聴いただけます。
https://youtu.be/MGzS0E4g0qo
<会社概要>
会社名 :平田機工株式会社
本社所在地:熊本県熊本市北区植木町一木111番地
代表者名 :代表取締役社長執行役員 平田 雄一郎
設立 :1951年12月29日
資本金 :2,633百万円
事業内容 :各種生産システム、産業用ロボットおよび
物流関連機器等の製造ならびに販売
上場市場 :東京証券取引所 プライム市場(証券コード 6258)
従業員 :連結 2,234名
単体 1,359名 ※2023年3月31日現在
事業所 :国内7拠点(熊本県4拠点、栃木県、滋賀県、東京都)
関係会社 国内3社(熊本県2社、東京都)
海外9社(アメリカ、メキシコ、ドイツ、
シンガポール、タイ、マレーシア、中国・台湾)
ウェブサイトURL: https://www.hirata.co.jp/