ひかり拓本の技術イメージ
実際のひかり拓本作成の様子(撮影協力:津市石造物調査会) 真福院(津市美杉町三多気) 種子碑を撮影
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所(以下、奈文研)は、石碑に刻まれた文字や文様に光を当ててその影から拓本をとる技術「ひかり拓本(奈文研特許取得済)」のスマートフォン用アプリ「ひかり拓本」(iOS/Android版)を2023年6月26日に正式リリースしました。このアプリは、昨年、奈文研が独立行政法人国立文化財機構文化財活用センター(以下、文化財活用センター)とともに開発資金等についてクラウドファンディングを実施し、全国からのご支援を得て実現したものです。
ひかり拓本は、石碑に書かれた文字や発掘された遺物を観察するため、奈文研の研究員が開発した技術です。開発者とその研究チーム内でのみ使ってきた技術を、誰でもお手元のスマートフォンで利用いただけるようになりました。先人たちが石碑に込めたメッセージを一緒に読み解いてみませんか。
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1.ひかり拓本ついて
国内には石碑や石灯籠、鳥居、水鉢、狛犬など無数の石造物があります。その多くには文字(碑文)が刻まれていて、それらは石造物が立つ場所や地域についてのさまざまなことを教えてくれる先人たちからのメッセージです。しかし、いざ読もうとすると風化で表面が削れているなどの理由で簡単に読めないものも多数。
そのような場合、一般的には拓本という技術を使ってそのメッセージを読み解くことを試みます。拓本とは、紙を石造物に貼り、その上から墨を乗せて文字や文様を写し取る伝統的な手法のことです。この手法は広く利用されているものの、対象物を汚したり破損してしまう可能性があり、技術の熟練が必要になります。
これに対し、ひかり拓本は、石に刻まれた文字や文様に対し、様々な角度で光を照射・撮影してできた影から画像を合成するという画期的な拓本技術です。この技術により、石碑を汚すことなく効率的に碑文を読み取ることができます。
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ひかり拓本の技術イメージ
ひかり拓本は開発者である奈文研の上椙英之研究員とその研究チームが調査を行う際に使用してきた技術でしたが、子どもたちが自分の住む地域に残る石碑を自らの手で拓本化し、先人たちがどのような思いでそれらを残していったのか感じてほしい、との想いで、専門家だけでなく、誰でも簡単に利用できるスマートフォン用「ひかり拓本」アプリの開発に乗り出し、クラウドファンディングによるご支援を得て、リリースしました。
2.アプリ化を実現させたクラウドファンディング
「ひかり拓本」アプリの開発は、クラウドファンディングサービス『READYFOR』を通じ、359人の方々から目標金額を大きく上回る653万円のご支援をいただいたことで実現しました。
同クラウドファンディングは奈文研と文化財活用センターが連携し、2022年10月5日から12月2日までの59日間実施。開始から2週間で当初の目標金額380万円を達成しました。ひかり拓本を使って子どもたちが地域の歴史を学んでいく活動に役立てられるよう、さらにご支援を募り、最終的には653万円のご支援をいただくことができました。夢の実現に共感し、ご支援いただいた方々に改めて御礼申し上げます。
(参考)READYFOR プロジェクトページ 「風化する先祖からのメッセージ、みんなで解き明かすアプリをお手元に
風化する先祖からのメッセージ、みんなで解き明かすアプリをお手元に - クラウドファンディング READYFOR : https://readyfor.jp/projects/hikaritakuhon01
3.ひかり拓本作成手順について
①スマートフォン(iPhone/Android)に「ひかり拓本」アプリをダウンロード
②懐中電灯、スマートフォンを固定する三脚(ホルダーも可)を用意。 ※専門的な道具・知識は不要
③石碑に懐中電灯で様々な角度から光を当て、何枚か撮影
④アプリが自動でひかり拓本を作成 ※撮影~拓本画像の生成まで約5分。その場で結果を確認可能
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実際のひかり拓本作成の様子(撮影協力:津市石造物調査会) 真福院(津市美杉町三多気) 種子碑を撮影
画像 : https://newscast.jp/attachments/QDzbu4hIa8cVOIN4QrPr.jpg
4.「ひかり拓本」の基本機能・特徴について
① 撮影してひかり拓本を作成 ~撮影の各種モード~
撮影機能では、Bluetoothリモコンによる撮影、画面タップによる撮影のほか、インターバル撮影機能を実装しています。インターバル撮影機能を使うと、事前に設定した間隔でリモコン操作などをせずにシャッターを切ることができ、一人での撮影も容易です。
② 既存の画像を使ってひかり拓本を作成
過去に撮影した画像、他のカメラアプリの画像、一眼レフカメラなどの外部カメラで撮影した既存の画像からもひかり拓本を作成することができます。
③ 拓本したい対象だけ抽出して拓本を作成
拓本したい部分のみを拓本対象とする「部分追加・削除機能」を搭載。必要な部分だけ拓本画像に追加したり、写りこんでしまった昆虫や人の影など不必要な部分を拓本画像から削除することが可能です。
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④ 撮影履歴データの管理 ~石碑マップ機能~
アプリで作成したひかり拓本の履歴がアプリ内でリスト化され、撮影日時、場所などの詳細を確認できます。また、ソート機能、検索機能に加え、スマートフォンのGPS機能を利用し、石碑マップの表示機能を実現。これにより、ひかり拓本の履歴を視覚的にもわかりやすく管理できます。
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アプリケーション概要
動作環境:iOS版(14以上)Android版(9以上)
配信形式:スマートフォン(iOS、Android端末)向けアプリ ※タブレット未対応
〇動作確認済機種
<iOS>
Apple iPhone11ProMax、iPhone12、iPhone13pro、iPhone14pro、iPhone SE(第3世代)
<Android>
Sony Xperia 1 IV
SHARP AQUOS sense 5G
SAMSUNG Galaxy S22
〇不具合発生機種
<Android>
OPPO A73
※Androidは機種依存が大きいため、全ての機種での動作保証はいたしかねます。
あらかじめご了承の上、アプリのダウンロードをお願いします。
対応言語:日本語
サービス地域:日本国内
価格:800円(税込)
iOS版
ひかり拓本 : https://apps.apple.com/jp/app/id6447665795
Android版
ひかり拓本 - Apps on Google Play : https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.go.nich.takuhon
ひかり拓本プロジェクト公式ページ(操作マニュアル、利用規約等)
奈良文化財研究所ホームページ : https://www.nabunken.go.jp/research/hikataku.html
本件のお問い合わせ先
独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所
▼クラウドファンディングに関するお問い合わせ
研究支援推進部 連携推進課
TEL:0742-36-7140 メール: hikaritakuhon_cf_nabunken★nich.go.jp
WEB: https://www.nabunken.go.jp/
▼ひかり拓本技術・アプリの内容に関するお問い合わせ
奈良文化財研究所 埋蔵文化財センター遺跡・調査技術研究室 上椙英之
TEL: 0742-30-6865 メール: hikaritakuhon_cf_nabunken★nich.go.jp
※メール送信時は★を@に変えてください。
独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所
古都・奈良を本拠として文化財を総合的に研究するための機関。平城宮跡の保存問題を契機に、平城地区と飛鳥・藤原地区で宮跡等の発掘調査と研究を進めている。また、全国各地や世界の貴重な遺跡や遺物を守り、それを活用するための基礎となる文化財の保存・修復・整備に関する研究・手法の普及にも力を入れている。
独立行政法人国立文化財機構 文化財活用センター
2018 年に設置された、文化財活用のためのナショナルセンター。「文化財を 1000 年先、2000 年先の未来に伝えるために、すべての人びとが、考え、参加する社会をつくる」というビジョンを掲げ、「ひとりでも多くの人が文化財に親しむ機会をつくる」ことをミッションとして、さまざまな活動をしている。
商標について
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記者発表資料はこちら : https://repository.nabunken.go.jp/dspace/handle/11177/10126