Q1 抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがありますか
Q2-1 抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける
Q2-2 抗菌薬・抗生物質はかぜに効く
Q2-3 抗菌薬・抗生物質は治ったら早くやめる方がよい
AMR臨床リファレンスセンターでは、今年度も一般の方700人を対象に「抗菌薬・抗生物質に関する意識調査」を行いました。その結果、日本人の抗菌薬・抗生物質や薬剤耐性への知識が未だ不十分であることが見えてきました。また、コロナ禍の経験を通じて、体調不良時の対応の変化やどのような情報を信頼しているのかといった感染症に対する行動が見えてきました。
抗菌薬意識調査レポート 2021
http://amr.ncgm.go.jp/pdf/20211004_report.pdf
■調査 SUMMARY<サマリー>
抗菌薬・抗生物質の正しい知識を持つ人の割合は低い
「抗菌薬・抗生物質はウイルスには効かない」
正しい知識を持っている人は18.0%
薬剤耐性対策への意識は不十分
約8割の人が薬剤耐性菌に感染する、するかもしれないと思っているが
約6割の人は何も対策を取らないと回答
感染対策に対する行動変容が見られる
体調不良時に「休む」人は50.6%で、2019年より13.5ポイント増加
「休めない・休まない」人は未だに49.5%
サンプル:一般人 全国 700名
男性10代30名、20代73名、30代62名、40代70名、50代64名、60歳以上51名
女性10代20名、20代74名、30代64名、40代64名、50代64名、60歳以上64名
調査方法:インターネット調査 調査期間:2021年8月
―調査結果のポイント―
<抗菌薬・抗生物質の知識>
・「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある」との回答は84.7%であった。
・「『抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける』は間違いである」と正しく回答した人は 18.0%であった。
・「『抗菌薬・抗生物質はかぜに効く』は間違いである」と正しく回答した人は24.5%であった。
・過去の調査結果と比較すると、上記2問に正しく回答した人の割合はほぼ変わらない。
・「抗菌薬・抗生物質はかぜに効く」と正しく回答した人を年代別にみると、
40-60代では30%前後が正解しているが、10-30代では10-20%程度に低くとどまった。
・「『抗菌薬・抗生物質は治ったら早くやめる方がよい』は間違い」と正しく回答した人は29.5%であった。
・「『抗菌薬・抗生物質を飲むと下痢などの副作用がしばしばおきる』 」と正しく回答した人は
38.8%であった。
・前の2問に比べるとこれら2問には正しく回答した割合が高い。
処方の際に医師や薬剤師から注意事項として聞き、知識が身についてきている可能性がある。
<抗菌薬の飲み方>
・「家にとってある抗菌薬・抗生物質がある」との回答は17.9%、「とっておいた抗菌薬・抗生物質を飲んだことがある」との回答は16.5%であった。
これらの抗菌薬・抗生物質の正しい知識は、若年層でやや低い傾向がある。
<薬剤耐性について>
・「薬剤耐性・薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがある」との回答は36.9%であった。
・「『薬剤耐性を避けるために必要な時でもできるだけ抗菌薬を避ける』は間違い」と正しく
回答した人は40.5%、不正解と「わからない」と回答した人を合わせると59.5%であった。
・薬剤耐性の感染症について「怖い」と回答した人は94.2%であった。
また、約8割が自分や身近な人が近い将来「感染する、するかもしれない」と回答した。
・薬剤耐性に対して「特に何もしない」と回答した人は60.5%であった。
<感染症に対する行動>
・「発熱等の症状で学校や職場を休む」と回答した人は50.6%であった。2019年8月(コロナ禍前)の同様の調査に比べ13.5ポイント増加した。「休めない・休まない」人は49.5%であった。
・感染症について最も信頼できるツールは41.0%の人が「TV」と回答した。10-30代は「TV」、「Webニュース」についで「SNS」が3番目であった。10代は「新聞」と回答した人がいなかった。
・最も信頼できる情報発信元は「医師・医療関係者」と回答した人が最多で38.6%であった。
・「今後もパンデミックが起こると思う」と回答した人は71.9%であった。
―調査目的―
感染症治療に必要な抗菌薬・抗生物質が効かない薬剤耐性(AMR)の問題が世界中で深刻化しています。日本でも2016年に「薬剤耐性(AMR)アクションプラン」が発表され、薬剤耐性についての取り組みが始まっています。
薬剤耐性の問題は抗菌薬・抗生物質の不適切な使用が一因とされています。
今回の調査は、抗菌薬・抗生物質、および薬剤耐性とは何かについて、現在一般の方がどのように認識されているのかを把握し、問題点と今後の取り組みの方向性を提示することを目的としています。
―調査概要―
・集計期間:2021年8月
・調査方法:インターネット
・調査対象:10代~60歳以上の男女
・調査人数:全国700名
<男性>
10代30名、20代73名、30代62名、40代70名、50代64名、60歳以上51名
<女性>
10代20名、20代74名、30代64名、40代64名、50代64名、60歳以上64名
■Q1 抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがありますか
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/278714/LL_img_278714_1.png
Q1 抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがありますか
「聞いたことがある」と答えた人は84.7%であった。「聞いたことがない」と答えた15.3%であり、世代別割合でみると「聞いたことがない」と回答した最多の世代は20代であり、20代の25.2%が「聞いたことがない」と回答している。
■Q2 抗菌薬・抗生物質についてあなたが当てはまると思うものをお選びください
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/278714/LL_img_278714_2.png
Q2-1 抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける
〈Q2-1 抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける〉
「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある」と回答した人のうち、 「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」に対して「あてはまらない」と正しく回答した人は18.0%、「あてはまる」と回答した不正解の人は59.4%であった。
〈Q2-2 抗菌薬・抗生物質はかぜに効く〉
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/278714/LL_img_278714_3.png
Q2-2 抗菌薬・抗生物質はかぜに効く
「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある」と回答した人のうち、「抗菌薬・抗生物質はかぜに効く」に対して「あてはまらない」と正しく回答した人は24.5%、「あてはまる」と回答した不正解の人は46.4%であった。40-60代では30%前後が正解しているが、10-30代では10-20%程度にとどまった。
〈Q2-3 抗菌薬・抗生物質は治ったら早くやめる方がよい〉
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/278714/LL_img_278714_4.png
Q2-3 抗菌薬・抗生物質は治ったら早くやめる方がよい
「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある」と回答した人のうち、「抗菌薬・抗生物質は治ったら早くやめる方がよい」に対して「あてはまらない」と正しく回答した人は29.5%、「あてはまる」と回答した不正解の人は42.5%であった。「抗菌薬・抗生物質は治ったら早くやめる方がよい」に対して年代別にみると、40代が39.4%の正解であった。10代は17.5%と低かった。
〈Q2-4 抗菌薬・抗生物質を飲むと下痢などの副作用がしばしばおきる〉
画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/278714/LL_img_278714_5.png
Q2-4 抗菌薬・抗生物質を飲むと下痢などの副作用がしばしばおきる
「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある」と回答した人のうち、「抗菌薬・抗生物質を飲むと下痢などの副作用がしばしばおきる」に対して「あてはまる」と正しく回答した人は38.8%、「あてはまらない」と回答した不正解の人は14.5%であった。
〈Q2-5 家にとってある抗菌薬・抗生物質がある〉
画像6: https://www.atpress.ne.jp/releases/278714/LL_img_278714_6.png
Q2-5 家にとってある抗菌薬・抗生物質がある
「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある」と回答した人のうち、「家にとってある抗菌薬・抗生物質がある」に対して「ある」と回答した人は17.9%、「ない」と回答した人は82.1%であった。年代別にみると、「とっておいた抗菌薬がある」のは40代以上は約10-15%であるのに対し、10代-30代では約23-25%となっている。
〈Q2-6 とっておいた抗菌薬・抗生物質を自分で飲んだことがある〉
画像7: https://www.atpress.ne.jp/releases/278714/LL_img_278714_7.png
Q2-6 とっておいた抗菌薬・抗生物質を自分で飲んだことがある
「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある」と回答した人のうち、「とっておいた抗菌薬・抗生物質を自分で飲んだことがある」に対して「ない」と回答した人は83.5%、「ある」と回答した人は16.5%であった。年代別にみると、「とっておいた抗菌薬を飲んだことがある」のは10代が27.5%と最も多かった。
■Q3 薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがありますか?
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Q3 薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがありますか?
「聞いたことがある」と答えた人は36.9%、「聞いたことがない」と答えた人は63.1%であった。
■Q4 薬剤耐性を避けるために、必要な時でもできるだけ抗菌薬・抗生物質は避ける方がよいと思いますか
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Q4 薬剤耐性を避けるために、必要な時でもできるだけ抗菌薬・抗生物質は避ける方がよいと思いますか
「抗菌薬・抗生物質、および薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがある」と回答した人のうち、「薬剤耐性を避けるために、必要な時でもできるだけ抗菌薬・抗生物質を避ける方がよいと思いますか」に対して、「あてはまらない」と正しく回答した人は40.5%、「あてはまる」と回答した不正解の人は32.5%であった。
■Q5 薬剤耐性の感染症についてどう思いますか
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Q5 薬剤耐性の感染症についてどう思いますか
「薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがある」と回答した人のうち、「薬剤耐性の感染症についてどう思いますか」に対して、「怖い」と回答した人が最多の42.2%だった。「とても怖い」、「怖い」、「少し怖い」をあわせると94.2%を占めた。
■Q6 あなた自身は近い将来(数年内に)薬剤耐性菌の感染症(肺炎、尿路感染症など)にかかると思いますか
画像11: https://www.atpress.ne.jp/releases/278714/LL_img_278714_11.png
Q6 あなた自身は近い将来(数年内に)薬剤耐性菌の感染症(肺炎、尿路感染症など)にかかると思いますか
「薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがある」と回答した人のうち、「あなた自身は近い将来薬剤耐性の感染症にかかると思いますか」に対して、「かかるかもしれないと思う」と回答した人が65.5%で最も高く、「かかると思う」、「かかるかもしれないと思う」とあわせると76.4%だった。
■Q7 あなた自身の身近な人が近い将来(数年内に)薬剤耐性菌の感染症(肺炎、尿路感染症など)にかかると思いますか
画像12: https://www.atpress.ne.jp/releases/278714/LL_img_278714_12.png
Q7 あなた自身の身近な人が近い将来(数年内に)薬剤耐性菌の感染症(肺炎、尿路感染症など)にかかると思いますか
「薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがある」と回答した人のうち、「あなた自身の身近な人が近い将来薬剤耐性の感染症にかかると思いますか」に対して、「かかるかもしれないと思う」と回答した人が67.8%で最も高く、「かかると思う」、「かかるかもしれないと思う」とあわせると79.0%だった。
■Q8 薬剤耐性、薬剤耐性菌についてあなたにあてはまると思うものを選んでください
画像13: https://www.atpress.ne.jp/releases/278714/LL_img_278714_13.png
Q8 薬剤耐性、薬剤耐性菌についてあなたにあてはまると思うものを選んでください
「薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがある」と回答した人のうち、「自分もかかるかもしれないと思うが、特に何もしない」と回答した人が49.6%で最も高かった。自分がかかるか否かに関わらず見てみると「既に対策をとっている人」はあわせて9.7%。「何か対策を取りたいと思っている人」は、あわせて29.8%。「特に何もしない」は、60.5%だった。
■Q9 例えば今朝起きたら、だるくて鼻水、咳、のどの痛みがあり、熱を測ったら37度でした。
あなたは学校や職場を休みますか
画像14: https://www.atpress.ne.jp/releases/278714/LL_img_278714_14.png
Q9 例えば今朝起きたら、だるくて鼻水、咳、のどの痛みがあり、熱を測ったら37度でした。あなたは学校や職場を休みますか
「休む」が50.6%で最も高かった。「休みたいが休めない」、「休まない」をあわせ49.5%が結果的に「休まない・休めない」と回答した。同様の質問をコロナ禍以前の2019年8月に実施しており、比較すると「休む」は13.5ポイント高くなり、「休みたいが休めない」は14.6ポイント低くなった。
■Q10 感染症について最も信頼できるツールとしてあなたが利用しているものはどれですか
画像15: https://www.atpress.ne.jp/releases/278714/LL_img_278714_15.png
Q10 感染症について最も信頼できるツールとしてあなたが利用しているものはどれですか
「TV」が最も高く41.0%、「Webニュース」19.4%、「新聞」11.0%、「SNS」6.9%、「日常会話」2.9%、「ラジオ」1.6%、「雑誌」0.6%、「その他」16.7%であった。実際には複数のものを利用している人が多いと想定される。10~30代まではSNSが上位3位以内に入っている。また10代は新聞との回答が見られなかった。
■Q11 感染症についての情報を調べる時、最も信頼できる情報発信元としてあなたが認識しているものはどれですか
画像16: https://www.atpress.ne.jp/releases/278714/LL_img_278714_16.png
Q11 感染症についての情報を調べる時、最も信頼できる情報発信元としてあなたが認識しているものはどれですか
「医師・医療関係者」が最も高く38.6%、次いで「大学・病院などの専門機関」で13.3%、「TV局」7.9%、「政府広報」7.7%、「Webニュース社」6.9%、「家族・友人」3.9%、「新聞社」3.0%、「ラジオ局」0.6%、「著名人」0.6%、「雑誌社」0.4%、「その他」17.3%であった。
■Q12 今後もパンデミック(世界的感染症)は起こると思いますか
画像17: https://www.atpress.ne.jp/releases/278714/LL_img_278714_17.png
Q12 今後もパンデミック(世界的感染症)は起こると思いますか
「思う」と回答した人が71.9%、「思わない」との回答は6.4%であった。
―考察―
■「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」「抗菌薬・抗生物質はかぜに効く」に「あてはまらない」と正しく回答した割合はそれぞれ18.0%、24.5%であった。昨年の調査でも、正しく回答した割合はそれぞれ18.1%、25.3%であり、正しい知識を持っている人の割合は低い状況が続いている。
■「抗菌薬は、治ったら早くやめる方がよい」を間違い、と正しく回答した人、「抗菌薬を飲むと下痢などの副作用がしばしば起きる」と正しく回答した人はそれぞれ29.5%、38.8%であり、抗菌薬についての知識はまだまだ不十分であるが、前の2問と比較すると正しく回答した割合は高い。処方の際に医師や薬剤師から具体的な指示があると、知識として定着する可能性がある。
■今回の調査では、「薬剤耐性、薬剤耐性菌」という言葉を聞いたことがある、と回答した人が36.9%であった。過去の調査では49.6%(2019年)であったことからすると、新型コロナウイルス感染症流行の影響もあり、薬剤耐性へは関心が向かなくなっている可能性がある。
■感染症について最も信頼できるツールは、10-30代はTV、WebニュースについでSNSが3番目に挙がった。今後、情報発信の一つの手段としてSNSの利用方法を検討ことは必要である。
■自分や身近な人が近い将来、薬剤耐性菌の感染症にかかるかもしれないという認識があるものの、何も対策を取らない人が約半数いた。自分がかかることはほとんどないと思うので特に何もしない人も約10%であった。薬剤耐性菌は怖いと思うものの、身近な自分事になっていない、またどのような対策を取ればよいのか分からない人が多数いるのではないかと推察される。
■発熱など体調不良の時に学校や職場を「休みたいが休めない」と回答した人の割合が前回と比較して減り、「休む」と回答した人の割合が増加し、約5割を占めた。新型コロナウイルス感染症の流行で感染対策の考え方が広まり、体調不良時には休める職場の体制が少し整ってきたのではないかと考えられる。しかし、休まない人がほぼ半数いるのも現状である。
―AMR対策の必要性―
~抗菌薬・抗生物質は不適切な使用により、本当に必要な時に効かなくなってしまう~
抗菌薬・抗生物質は細菌が増えるのを抑えたり、殺したりする薬です。しかし、細菌もさまざまな手段を使って生き延びようとします。本来ならば効くはずの抗菌薬・抗生物質が効かなくなることを、「薬剤耐性(AMR:Antimicrobial resistance)」といいます。2019年4月29日、国連は抗生物質が効きにくい薬剤耐性菌が世界的に増加し、危機的状況にあるとして各国に対策を勧告しています。また、日本では「薬剤耐性菌」によって2017年に国内で8,000人以上が死亡したとの推計が出ており、深刻な影響が懸念されています。
日本では外来での抗菌薬・抗生物質使用が9割以上を占めており、外来診療で抗菌薬・抗生物質の適正使用を推進することが不可欠といえます。
* https://news.un.org/en/story/2019/04/1037471
No Time to Wait: Securing the future from drug-resistant infections
Report to the Secretary-General of the United Nations April 2019